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地下鉄で見かけた変なおじさんと金髪美女の摩訶不思議な光景。

※ぜったい最後まで読んでほしい

私は生まれてこの方ずっと札幌在住だ。

2013年の3月、大学生だった私は1人で地下鉄に乗っていた。どうして1人で地下鉄に乗ってたのか、どこに向かってたのか、そういう細かいことはすっかり忘れちゃった。10年近く前のことだから。

時間帯も忘れてしまったけど、早朝じゃないのはたしかだ。昼間だったはず。

とにかく私は、大学生の頃1人で地下鉄に乗っていた。で、その車内で摩訶不思議な光景を目撃した。


電車に乗ってすぐ座りたかったけれど、座れなかった。割と人が座っていたから。立っている人は私を含めてチラホラいた。ぎゅうぎゅうではない車内。電車は私を追加してビュイーンと進む。

立っていて視線をどこに向けていいのやら少し迷った。車内のアナウンスが何を言っているのかよく聞き取れない。車内の広告もよく分かんなくてつまらない。当時は今ほどスマホをいじる文化もない。


つまり暇だった。

「なーんか面白いものないかなぁ」

そう思って辺りを見回すと、老若男女色んな人種がいる中に1人で座っているおじさんが目に入った。変なおじさんだ。彫りが深い顔立ちだった。


普通、電車の中で座ってやることって、目をつぶるか、本を読むか、音楽を聴くか、今ならスマホを見るかぐらいのもんでしょう。まぁ国や地域で違うけど。でもそのおじさんは明らかに変だった。


でっかい絵を描いてる。



でかい木の板っていうんですか?ヒモがくくりつけられてるやつ。画家が使うような。変なおじさんの首まで、そのヒモがピンと伸びて、その板を下敷きに、なにやら一生懸命に絵を描いている。何を描いているのか私の位置からは見えないけど、でも一生懸命に。


「うわ、変なおじさんいるなぁ」


私はそう思って、視線を変なおじさんの隣の乗客に向けてみた。隣には無関係なご婦人が座ってて、変なおじさんの描いてる絵をチラチラ見てる。

そりゃ見るよ。

おかしいもん、電車で絵を描くのは。でもご婦人は微笑んでた。「おぉ、やさしい世界だ」と思った。


「何を描いてるんだろう?」


そう思って、私は変なおじさんを観察することにした。じっと見てるとヘンだから、チラチラと。そうしたらその変なおじさん、たまに顔を上げるじゃないか。パッと顔を上げては向かいの席に目を向けて、またえんぴつを走らせる。


「まさか?」


と思って、変なおじさんの見ている方を確認。するといるわけ。だれが? 


美女
が。

美女が座ってるわけ。

見た目はド金髪で色白、鼻がやけに高い。かといって気が強そうではなく、ほどよい大らかな雰囲気をまとった美女。変なおじさんの視線の先に美女がいた。


「マジか」

変なおじさんが、赤の他人の金髪美女をモデルに絵を描いてる。2人は絶対他人同士。ゲリラアート的な何かでは絶対ない。で、少しして金髪美女が変なおじさんに気づいた。そりゃ気づく。でもなぜか周りの人は微笑んでる。


私は「え、これ、どうなんの?」と行く末を見届けたくて、降りるはずだった駅をとっくに過ぎてた。「こんな光景はめったに見られない。これは結末を見届けたい」と思って。


「美女が気づいたぞ?さすがにキレるか?」

って思ってると、金髪美女がジェスチャーで自分自身を指差して(私のこと描いてます?)って確認するわけ。変なおじさんと周りの人はニコニコうなずいてて(そうだよ)と。変なおじさんは親指を立てて「グー!」ってやってる。金髪美女は(…もう、まったく)ってな具合で「やれやれ」のジェスチャー。


「え、なにその感じ!?
 ぽい!なんかすごい、ぽい!!」

目の前で繰り広げられてる現実離れした光景に、私の口はポカーンとしてたんだけど、まもなく次の駅、というところで金髪美女が立った。降りるんだ。「え、これどうなんの?」と思うじゃないですか。そうしたらその金髪美女、変なおじさんの方にツカツカ向かったわけ。


それで変なおじさんになんて言ってるか分からなかったけど話しかけた。周りの人はなぜかニコニコ。変なおじさんもニコニコ。で、変なおじさんが板から紙を外して、金髪美女に見せたの。絵を。


さっきから口をあんぐり開けてる私にもその絵が見えて、それがね、スーパーうまくて。

「うまっ!!!」って言ったもん。

期待してなかったキノコの天ぷらが本当に美味しかった時のリアクションみたいに。

で、変なおじさん、その絵を金髪美女にあげた。そしたら金髪美女、絵を受け取って「ありがとう」的なことを言ってるじゃないか。周りの人はニコニコしてうなずいてる。私はあんぐり。変なおじさんも金髪美女も満足げ。で、金髪美女は電車を降りていった。


「な、なんだこの光景は…(わなわな)」


私の中に、ふつふつとジャーナリズム精神が芽生えてきた。あの金髪美女を追いかけようと思った。ここまで来るとどの駅で降りても変わらない。私も金髪美女の後を追って降りた。その金髪美女が変なおじさんからもらった絵を捨てないかどうかを見届けたくて。

まぁでも、金髪美女、捨てなかった。

捨てないどころか嬉しそうに絵を見て、大切にカバンにしまってたから、私は心から安堵した。そして思った。



「こんなにやさしい世界があるんだ…」






「日本と全然ちがう…」





2013年3月、札幌在住の私は
初めての海外旅行で、ある国を訪れていた。

情熱の国スペイン、その第2の都市
芸術の街「バルセロナ」である。

このエピソードは、バルセロナの地下鉄の車内で実際に目撃した正真正銘ガチのお話である。摩訶不思議すぎて、あいた口がふさがらなかった。

札幌の地下鉄ではこんな光景、絶対にお目にかかれないけれど、おそらくバルセロナでは日常茶飯事、朝飯前、いつもの地下鉄の光景だ。


極東の島国からやってきた私は、バルセロナで衝撃を受けまくった。あそこはマジで芸術の街だった。アートでハートフルな世界がたしかにそこにある。天正遣欧少年使節団や岩倉使節団ってこんな気持ちだったのかなぁ…。


と、いうわけで、2013年のこのバルセロナ旅行を記憶から引っ張り出して

「イトーダーキ | バルセロナ編」

みたいにして「私がなぜバルセロナにいたのか?」などのエピソードから、あの街で見た光景を、今日を含めて全4日にわたって書いていこうと思う。



そこそこに乞うご期待!


【NEXT】バルセロナ編のつづきはコチラ

〈記事から引用〉
>階段の入口付近、私たちから距離が少し遠いところに、バルセロナ市民だろうか、女性がいた。ベビーカーを押している。ママさんだ。



〈あとがき〉
どんでん返し系の小説にハマる時期って誰にでもありませんか。過去のバルセロナ旅行記をいつか書こうと思っていたところ、あ、これはどんでん系イケるかもと思ったら親指が止まらなくなりました。「いやいや最初からおかしいなと思ってましたよ」というご意見もあるかなぁと思いながらの「どんでん」チャレンジです。本日もお読みいただきありがとうございました。

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