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新人バンドが作った曲がメガヒットしたら起きそうなこと。

ある朝起きたら突然メロディが降ってきて、「うわっ」とか言いながらそれを五線紙に書き記して、メンバーに聴かせてコーラス入れて、ほかの音をぶち込んで改めて聴いて、「やっぱよくね? これは売れるんじゃね?」ってみんなで顔を見合わせて。

「歌詞はそうだな、五感を刺激するような歌詞にしようぜ」ってみんなで話して、できるだけ具体的で韻も踏んでて、なのに哲学的な要素も含まれていて、聴いてくれた人たちを元気づけちゃいますよ? みたいな気持ちも込めながら「これはマジで売れるかも」と言って、よっしゃリリース。


(※)
そしたら、この時代にSNSよりも先にまずはおしゃれなラジオ番組で繰り返し流されて、どこでもかしこでも流されて、で、YouTubeとかでB級な人たちが「歌ってみた」みたいな動画をあげて、SNSでもバズり出して、トゥイッターを見てみると「マジで泣ける」とか「作ったやつ天才すぎる」とか「モーツァルト以来の音楽の神」とか「この歌唱力どうなってんだ」とか「口にCD入ってるに違いない」とか「いや、声帯にBOSEのスピーカーが入ってる説に1票」とか言われて。

かと思ったら広瀬香美とか普通の歌手たちもカバー動画をガンガンあげちゃって、コメント欄には「さすが! うまいです!」みたいな賞賛コメントがあるかと思ったら「本家が紛れもなく頂点」って書いてあって、そのコメントにいいねが114万件ついてて。

で、入る店入る店のBGMに自分が作った曲が流れてて、すれ違う女子高生が「マジこの曲はスルメ。聴けば聴くほど耳にしみいる蝉の声」とか言ってて、なんか知らんおっさんまで「あ、これは聴いたことあるなぁ」とか言って、歌詞の意味を理解できない5才の女の子まで「ンパッ」って口ずさんでる始末で。

なんかYouTubeにあげた動画もあれよあれよと再生回数が高速メリーゴーラウンドのようにクルクル回り出して、え、どうなってんの? みたいな感じで桁が上がっていって。なんなら割と簡単にYouTubeで「億」の壁こえちゃって。


で、Mステからオファーがきて「なんか、タモリさんに会えるっぽいです。当日は韓国からNew Jeansもくるっぽい。あと、Snow Manもいます。共演ですわ」とか言われちゃって、でも「いやいや、そこは出んとこ、まだそのステージじゃないし俺ら」とか言って「あぁ、そうだな、俺たちは緊張して指が震えちゃうよ」「そうだべ、そうだべ」「なまらやべーよな」って断っちゃって。

「もしも情熱大陸とか出ちゃったらさ、『ぼくはこの曲を作るために生まれてきたのかもしれません』とか言っちゃったりして」って言ったら「それはカッコつけすぎっしょ〜」って笑いつつ、本当にオファーがきて、でもそれも断っちゃって。


で、なんやかんや下火になることもなく、約1年間聴かれ続けて、その年のNo.1ソングとかに選ばれちゃって。

有線大賞とかレコ大とか紅白の打診もされちゃうけど、「いや、まだ早いって」なんて言いながら断って、そしたらメンバーのだれかが「いや、長渕剛とか浜田省吾ポジション狙ってるんじゃないんだからさ」って言って笑って。



またある朝起きたら、ふたたびなんか雷みたいなメロディが降ってきて、また五線紙に書いて、メンバーに伝えたら「おいおい、またですか?」「1年ぶり2回目だな」って笑ってたのに、いざ聴かせたら「え、身体が勝手に踊り出すわぁ」「これは100年聴かれるかも」とか言ってまたレコーディングして、「これ、もしかして才能が暴走してんじゃね?」って言いながら「俺ってもしかしてフレディ・マーキュリーの生まれ変わり?」とか言っちゃって、「ポール・マッカートニーの生まれ変わりかもよ?」って誰かが言っても誰もツッコまず。

メンバーが「これは間違いないわ。前回よりも確信に満ちあふれてる。メントスコーラよりもあふれてるかも」って言うから「それは確信の噴水だな」って誰かが言うから「大通公園の噴水みたいな?」って言って「いや、もうイグアスの滝」ってふざけるけど「それはあふれてるなぁ」ってみんなでノホホンとして、それでまた2ndシングルをリリース。

次はアップでファンクでブギーな楽曲。

それで(※)に戻って確変モード突入して。

……

どの曲を聴いても甲乙つけがたい神曲だらけの13曲で構成されたアルバムをリリースしちゃって、それも爆売れして、で、それを引っさげて初のドームツアーやったらチケットは即完売して。

それまで顔出し一切してなかったから、とうとう表舞台に出てくるぞ、みたいな期待を軽くこえちゃうちょうどいいビジュアルしてて、大歓声の東京ドームで、暗闇の中とうとうライブが始まって、パッと明るくなったと思ったらシンとして、かと思ったらあの神曲のイントロが流れ出したとたんに歓声がワッとわいて、いざ歌い始めたらきちんと口から音源状態で、それを聴いた満員の観客が「うわぁ、エグすぎるってぇ!」みたいな地震のような歓声がわいて。


汗まみれで歌い終わって、アンコールもそつなくこなして「あのー、それじゃあ、次は僕たちの故郷札幌でお会いしましょう」って静かに言って、ライブ終わりにSNSでエゴサしたら「彼女が感動して失神してました」とか「曲も歌声もビジュもいいってどういうこと?」とか「やつは口の中にCD入れた最初の人類」とか「この天才たちが札幌に眠ってたとか、まだまだ日本は安泰」とか書かれちゃってて。


で、札幌ドーム公演やって、これまた地鳴りのような歓声の中で歌いきって、ドームの万を超える観客の中に、むかし付き合ってたけど俺をフッた元カノがいて「こんなことになるなら……あのとき彼の才能を信じきれなかった私が悪いんだわ」って後悔しちゃってるくらいにして。

こちらはそんなこともつゆ知らず、忙しいツアーの合間に作曲活動しちゃったくらいにして「モテるにはモテるけど、ここでモテても、いわゆる真実の愛じゃなくね?」ってメンバーに言ったら「それを言い始めたらおしまいよ」って揶揄されて「あ〜、才能って難しいなぁ」って言ったら笑いながら「悔しいけどお前にはそれをいう権利あるわ」ってニコニコされて。


そんなことになったら、自己肯定感ってどうなっちゃうのかな、って思っちゃったくらいにして。


〈あとがき〉
なによりおそろしいのは、この記事に書いたような人たちが、この世に本当に存在するということです。みなさん思い思いのアーティストがいることと思います。どうですか。「こんなんありえんやん」が現実になってる人たちです。私ならやっぱり溶けちゃいます。今日も最後までありがとうございました。

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