繁盛しているタバコ屋と命を伸ばす人の話
あるところに一軒のタバコ屋がある。
小さな個人商店だが、中に入るとちょっとした専門店といった品揃えで、
県境をまたいで好みの銘柄を買いにくる客も大勢いる店だ。
店員のおじさん、おばさんも明るく人が良くて、
タバコを吸わないのに、彼らとの会話を目当てに来る客もいるくらい居心地がいい。
この店の雰囲気がいつからか少し変わってきた。
おばさんが重い病気になったのだ。
おばさんは気丈に振る舞っているが、日に日に体調が悪くなり、店に顔を出さない日も増えた。
おじさんも明るく接してくれるものの、前と比べると元気がなくなって、店の雰囲気もなんとなく暗くなった。
店員のおじさんは日に日に悪くなるおばさんの体調にとても悩んでいたが、
ある日を境に前と同じように明るくなり、以前にも増して働くようになった。
おじさんに話を聞こうとすると、
いつも口を濁して詳しく話そうとしなかったが、
ある夜、一緒に食事をしながら、酒を何杯か交わして話をしていると
酒で少し口が軽くなったようで「不思議なことがあったんだよ」と言いながら、話を聞かせてくれた。
おじさんはおばさんの体調が悪化するのが心配で、
眠れない日々が続いていたが、とても深く寝られた日があった。
その日は夢に知らない人が現れて、
店に来る客の命と引き換えに、おばさんの命を伸ばす方法を教える、と言われたというのだ。
夢の人が言うには、店にくる客にタバコを売り、
売ったタバコで短くなった寿命をおばさんの寿命にあてがうことで、おばさんを延命するらしい。
おじさんもそのくらいならいいだろうと思って喜んで話に乗った。
夢の人には、もう一つ何かをもちかけられたらしいが、
おばさんを延命できると聞いて、嬉しくて、
あまり詳しく聞かずにそれも受け入れた、とも言っていた。
そして今日もそのタバコ屋には大勢の客が訪れている。
