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ダブル・バインド

私は感受性が高い、豊かだと


父からよく言われていた。


父は子煩悩で、


三人兄弟の末っ子だった私をとても可愛がってくれた。


自然とパパっ子になっていった。


けれど——


安心感は、どこか足りなかった。


父が私を褒める。


欲しいと言ったものを買ってくれる。


そのたびに、


母の空気が変わる。


「甘やかすから言うことを聞かない」


喜びを感じる間もなく、


母の否定が同時に起こる。


褒められることで、


家の空気が重くなる。


私はいつも、


どこか不安定だったのだと思う。


賞賛と否定が同時に起こる世界。


人は一日に約8万回思考し、


その8割はネガティブだと言われている。


生存本能が優位だからだ。


幼い頃の私のRAS(脳幹網様体賦活系)は、


母の批判と、家の空気に反応していた。


父と母はよく喧嘩をしていた。


父は母に厳しかった。


朝起きないこと、


料理が美味しくないこと——


強く責めていた。


私が自分を認められないのは。


すぐに自分を責めてしまうのは。


皮肉なことに、


一番可愛がってくれた父の


母への責めの言葉が、


私の潜在意識に刻まれているからかもしれない。


結婚してからも、


朝きちんと起きられないと責める。


料理を作れないと責める。


家事にやる気が出ないと責める。


無意識に、


それは習慣になっていた。


「ちゃんとしなければ、認められない」


そんなルールを、


私は自分に課して生きていた。


やる気がないのは、


元気がないのは、


ちゃんとできていないからだと——


足し算ばかりしていた。


本当は、


引き算が必要だったのに。


気づかないまま、


走り続けた。


結婚も、


本当に望んでいたのかもしれない。


けれど今思えば、


それもどこか義務の足し算だった。


今、夫の不機嫌が続いている。


その空気に、私はまた反応している。


でも本当に必要だったのは——


親と離れ、


一人になること。


誰からも何も言われない環境で、


自分を見つめ直すこと。


引き算をして、


0ベースになる。


本当の自分に戻る。


私には


「結婚」「いい妻」「いい母」「いい嫁」


になる前に、


0になる時間が必要だったのだ。


もしかしたら、


ありのままの自分がわからないと


苦しんでいる人がいるかもしれない。


何かを足せば


認められる気がして。


ちゃんとすれば


愛される気がして。


でも、うまくできない自分に


また傷ついてしまう。


もし今、あなたがそうなら——


足りないんじゃない。


足しすぎているだけかもしれない。


引き算をしていい。


何者でもない時間を持っていい。


0になっても、


あなたの価値は減らない。


むしろ、


そこからしか見えない自分がいる。

自己理解がすすむにつれて、

他者を深く理解しようとする、

マインドになれてきている


ダブルバインドは私にとって苦しみでもあったが、


そこを深ぼった先に見えることも出てきた


人を見るときに、平面だけでなく、

裏側や、側面、底、など

立体的に見れる感覚となってきている


それが幸か不幸か、分からないが、


人生の深みは得られている


平面だけ見ていれば、すぐに決められて、

先に進めるのかもしれない


嫌な面だけを見て、

見切りをつけられたかもしれない


立体的に見ようとして、ぶれるのかもしれない


繊細さん、HSPと言われる人は後者なんだと思う


夫の不機嫌が続いている


不機嫌というか


今、彼は孤独さを感じているのかもしれない


家でだんまり


子ども達は話しかけない


私も、静観している


インナーチャイルドが彼の中で、大きくなっている


そんな自分を深ぼれるタイプではないので、

他責と自責の狭間で


葛藤しているかのように見える


夫はきょうだい児だ


もの心ついた頃から姉は入院


母は毎日病院へ朝起きて祖母宅へ


祖母は厳しい人だった


夫はかわいがられていた方だと話している


何を食べたいと聞かれて有名で高価な和菓子屋の名前を言うと


買ってくれたという


多分愛情表現が言葉や抱きしめるなどではなく

物を買ってくれる


という家柄なのだと思う


夫も仲直りしようとするときは、

私や子どもが喜びそうなお菓子を買ってき


て、それを渡してきたり、

ダイニングテーブルに夜置くのだ


子どものように、話しかけられるのを待っている


自分から謝るのはハードルが高いのだろう


私は喧嘩になると苦しくて、


早く終わらせたくて夫が仲直りのサインをして


すぐに反応していた、


しかし、立体的に見えるようになり、

苦しさは遠のき、自分も大切にという想いが存在し

はじめた


このままではまた同じ繰り返し


夫のインナーチャイルドは癒やされない


本当は夫がそういう自分に気づき自分で

小さい自分を癒やさなければ


同じことがまた起こる


沈黙を長引かせているのは、そういう私の新たな


芽生えがそうさせているのだろう


ダブルバインドで揺れる自分


そのおかげで人を立体的に深ぼれる


見えてしまう、自分になれたのだろう



#創作大賞2026
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