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【ショートショート】ペンギン、干支に挑む(1140文字)

「干支の構成比、おかしいと思いませんか?」

形骸化していると言われて久しい、年に一度の「干支選定会議」。だが、今年は違った。
壇上に上がったペンギンが、冒頭の主張を叫んだ瞬間、会場のスクリーンに円グラフが映し出された。

「哺乳類:9種。爬虫類:1種。想像上の動物:1種。そして鳥類は……“酉”として1枠のみ。ニワトリたった一羽。これは不平等です」

ざわつく会場。しかし「哺乳類が多くて当然だ!」「あの有名な競走で決まったんだぞ!」というヤジが飛び、それに同調する空気が流れた。

「でも、地球上の種数でいえば、鳥類は哺乳類より遥かに多いんですよ? 約一万種。しかも空を飛ぶという進化の極み。なのに干支では一羽だけ。それでいいんですか?」

熱弁を振るうが反応はいまいちだった。

「……なるほど。哺乳類の絶対数が多いこの会場では、この主張は通りませんか…。それならば」

ペンギンはスライドを切り替えた。映し出されたのは、猫の写真。

「猫さんは、あの競争以降、ずっと列に並んでいます。“干支に入れるかも”と。けれど現実は、一向に順番が回ってこない。ペット数No. 1の実績を誇る猫さんですよ?これは“飴と鞭”ですらない。ただの鞭です。猫さんが猫じゃらしと勘違いして楽しそうにしてるから許されてるだけで、実際は、残酷な話です」

会場が静かになった。

「だからこそ提案したい。せめて“入れ替え戦”を導入すべきです。何千年も同じ顔ぶれじゃ、緊張感もありません。代謝のない制度に、未来はありません」

オブザーバー参加の動物たちの中から拍手がちらほらと起こる。

「……とはいえ、鳥類の枠をこれ以上増やすのは難しいという意見もあるようですね。それならば…」

ペンギンはぐっと前に出た。

「この私が、“酉”の持つ鳥類の枠を奪います」

会場がざわついた。壇上のスクリーンが切り替わる。

「ペンギンによる企業キャラクター実績=Suica、ピングー、ドンペンくん。人気も知名度も抜群。水陸両用で、フォルムも可愛い。モノクロ映えもすることから年賀状にも最適。――一方ニワトリは? 代表作といえばコーンフレークくらい。チキンの代名詞であるケンタッキーですら、主役は白いおじさんです」

会場から笑いが起きる。ペンギンは止まらない。

「それに……ニワトリさん、あなたなんか、イラストになってもほぼ横顔でしょう?」

爆笑が巻き起こった。壇上脇にいたニワトリの肩が震える。

「……そんなふうに笑うなんて、ずるいよ」

会場の空気が、ふっと冷えた。

ペンギンは一瞬黙ったが、すぐに身を正した。

「入れ替え戦は、公平な未来のために絶対に必要です!」

その瞬間、オブザーバー席の最前列にいた猫が無言で前足を叩き合わせていた。肉球のため音はしないが、賛成の気持ちは伝わった。

(了)


この記事は、はらとけいさんの企画への参加作品です。

■セリフ
「そんなふうに笑うなんて、ずるいよ」
■三題
・飴
・ペンギン
・列

を盛り込んでいます。


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五十嵐雉虎(イガラシ・キジトラ)|準文筆家|掌編小説・ショートショート作家 よろしければ、ぜひ応援をお願いします!

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