【ショートショート】無理vs.道理、理詰めの対決!(1007文字)
ここは、「理理事会」の会場。
……誤植ではない。
世の中のあらゆる“理”を司る理事たちが集う会、それが「理理事会」である。
会場には、論理、倫理、原理、定理を重んじる学者たちが並び、その奥では、経理や理財を担当する者、地理や物理の教師、料理人や調理師までもが顔を揃え、無言で資料をめくっている。理学療法士や理髪店経営者、有名な理美容家の姿も見える。
来賓である総理代理の挨拶が終わり、壇上に上がったのは、“道理”と“無理”だった。
「それでは、次期理事長選挙に先立ち、候補者による討論会を始めます」
まずは、静かに一礼した“道理”が、理路整然と口を開く。
「社会は合理的な管理、整理、処理によって成立しています。人は理念を共有し、真理へ近づかねばなりません。それこそが摂理です」
観客席から「一理ある」と声が飛ぶ。
それに対し、“無理”が叫ぶ。
「理屈臭いんだよ!」
場内の空気が凍りつく。
「お前ら理屈屋は、すぐ理責めで人を追い込む! 義理だの心理だのを理由にして、他人へ理想を無理強いする! 理性的? 理知的? そんなの、生理的に無理な奴だっているんだ!」
「理論の伴わない感情論ですね」
道理は表情を変えない。
「非条理を放置すれば社会は崩壊します。文理を問わず、理解と秩序は必要です」
「うるせぇ! お前らは、理解の大切さを謳うくせに、理解できない人間を切り捨てるじゃねぇか!」
無理は机を叩いた。
「人生はリトライできるんだよ! 失敗したらリカバー! 壊れたらリペア! 今のままでダメなら、リメイク! リライト! リボーンだ! 何度でもリターンしてリピートしてリプレイして、リストラクチャーすりゃあいい!」
「場当たり的です」
道理は冷静に返す。
「そのためにリサーチがあるのです。リサイクルやリユース、リデュースも含め、長期的視点で考えるべきです」
「だからお前は理屈っぽいんだ!」
怒鳴った“無理”は、マイクコードを無理矢理引きちぎる。
パッと火花が散る。
スタッフである理系の学生達が頭を抱える。
「修理、無理です!」
その瞬間、無理は勝ち誇ったように笑った。
「最後に世界を動かすのは道理じゃない。無理なんだよ!!」
このあと行われた選挙では、不条理にも、“無理”が初当選した。
「無理に逆らうと、無理が祟る」という理不尽な噂も一役買ったようだ。
「無理が通れば、道理がひっこむ……か」
道理は、小さくため息をつき、会場をあとにした。
(了)
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