【ショートショート】軽そうで、そうでもない話(686文字)
僕は、軽トラで荷物を運ぶ軽貨物の仕事をしている。
正直、この仕事に就くまでは、軽自動車と軽車両の違いも曖昧で、燃料も軽油だと思い込んでいた。
求人票には、「主に軽金属や軽合金の部品などを運んでいただきます」と書いてあった。
「軽作業、軽労働でしょ?」
軽く見積もった僕は、軽挙にも軽装で面接に行ったが、所長の軽断により、あっさり採用された。
でも、あの頃の僕は、まだ何もわかっていなかった。
いくら軽金属や軽合金だと言っても、梱包された部品はしっかり重い。軽量鉄骨だって、名ばかりだ。
軽印刷のパンフレット、軽食用の食材、軽音楽の楽器、軽工業で使う軽石……。
依頼されるのは、軽そうで重い荷物ばかりだった。
思い返せば、若いころから僕は軽はずみで軽薄だった。
友人の誘いを軽率に軽請け合いし、気づけば軽犯罪に加担し、検挙されていた。
処分は軽微。
だが、法的には軽度でも、周囲からは軽蔑された。
軽佻浮薄な行動が、僕の人生に軽症ではないダメージを与えたのだ。
結果、就職も軽易には叶わなくなった。
それなのに僕は、せっかく採用されたこの仕事すら、軽々しく考えていた。
そんな僕が変われたのは、荷物の重さを、毎日、自分の腕と腰で受け止めるようになってからだ。
今なら、わかる。
軽そうに見えるものこそ、決して軽んじてはならない。
僕は、何事も軽視せず、どんなに苦しくても、軽やかに超えていこうと心に決めた。
今日は、軽井沢から津軽まで荷物を運ぶ。
もちろん、気軽な仕事ではない。
でも、今の僕は知っている。
荷物が重ければ、心は軽い。ハンドルも軽快だ。
一番重いのは、運ぶべき荷物が無いことなのだから。
(了)
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