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【エッセイ】幼少期に見た雑誌に書かれていた、「家でのお父さんの役割」とは?(890文字)

もう50年近く前のことだろうか。幼い私が読んでいた子ども向けの雑誌に、今も記憶に残るページがあった。「お父さん、お母さんはどんな役割?」というようなコーナーで、それぞれの親が家族の中でどんなふうに活躍しているかを、職業のイラストとともに紹介していた。

当時は、父親が外で働き、母親が家を守るのが当たり前とされていた時代。記事もその価値観をそのまま映し出していた。

お母さんの役割は盛りだくさんだった。「ご飯をつくってくれる」の横にはコックさんのイラスト。「洗濯をしてくれる」の横にはクリーニング屋さん。「優しくしてくれる」には保母さん。「病気のとき看病してくれる」には看護婦さん。まるで何人もの専門職を一人でこなしているようだった。

一方で、お父さんについては——「お父さんがいると安心する」という一言に、警察官のイラストが添えられていた。これだけしか記憶にない。
そして、幼い私はこう思ったのだ。「お父さんって、安心感を与える機能しかないの!?」と。

もしかしたら「家の修理をしてくれる」と、大工さんの絵もあったかもしれない。「お出かけの時に運転してくれる」と、運転手さんの絵もあったかもしれない。でも、それは覚えていない。

お父さんとお母さんのバランスの悪さが、子ども心に大きなインパクトだったのだ。なにより、お父さんの“安心をくれる”という抽象的な表現が、なぜかぼんやりしていて、お母さんの具体的な役割たちと比べて、あまりにも頼りない印象だったことを覚えている。

もちろん、あの時代の父親像は、働いて家族を養うことに集約されていたのだと思う。それは今よりもずっとシンプルで、でもどこか、何とも言えない寂しさを含んでいたようにも思う。

今、世の中は大きく変わった。家事も育児も、働くことも、分かち合うことが当たり前になってきた。役割が分かれていた時代の“当たり前”は、確実に塗り替えられている。

けれど、ふとあの記事のことを思い出すたびに、おじさんに求められる最も基本的な機能は「安心感」であり、「安心感」なき大人は一人前の大人ではないのだと言われている気がする。

幼少期に見た本の影響は絶大である。

(了)


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五十嵐雉虎(イガラシ・キジトラ)|準文筆家|掌編小説・ショートショート作家 よろしければ、ぜひ応援をお願いします!

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