見出し画像

【ショートショート】話半分で聞いてください(836文字)

半醒半睡はんせいはんすいの朝だった。

目を半眼はんがんに開くと、四畳半の部屋は驚くほど静かで、クローゼットは半開きのままだった。カーテンをすり抜けた光は半透明で、テーブルには半量だけ残った水。部屋の半面が、やけに、広い。

あぁ、彼女はもう、いないんだ。

窓を半開はんかいにして耳を澄ますと、隣の部屋から半島情勢や半導体不足のニュースが流れて来る。天気予報は…夜半から雨か。

半年ほど半同棲していた彼女から三行半みくだりはんを突きつけられたのは、半月ほど前だった。

半永久的に一緒にいられると思っていた。

だから、「別れたい」と言われても、僕は半笑いだった。

「またまた、冗談でしょう?」

半信半疑な僕に、生半可ではない表情の彼女。

今思えば、僕は何もかも半熟で半端だったんだ。

部屋を丸く…どころか半円でしか掃けない僕。
料理を作っても半焼け半煮えで半生はんなまの僕。
洗濯物も半乾きで取り込んでしまう僕…。

できることなど半ダースにも満たない。
いつしか、過半どころか大半の家事を彼女がこなしてくれていた。

「半人前同士、半々で支え合おう」

そう誓っていたのに。

この物件の外観を見て「なにこれ? 半壊?」と、ふざけ半分で笑った君。
半額の半加工食品を見つけると嬉しそうだった君。
半クラッチは苦手だけれど、半ドアはきっちり閉める君。
観覧車が半周したところで「半世紀以上一緒にいよう」と言ってくれた君…。

危機を知らせる半鐘はとっくに鳴っていたのかもしれないが、僕はそれに気づけなかった。

別れ話の前半、彼女は半ベソだった。
後半になると、半泣きになった。
それでも最後まで、半ギレで僕を責めるようなことはなかった。

翌日、半休を取り、半日で荷物をまとめ、彼女は出て行った。

机の上には、一枚の半紙。

「責任の一半いっぱんは私にもあります
悲しみも折半にしましょう」

と書かれていた。

「最後の手紙だけ、“半”が半濁音…か」

頭に浮かんだ二つの小さな丸が、今さらのペアリングのようだった。

(了)


お読みいただきありがとうございます。
スキ、フォロー、コメントなどしていただけたら嬉しいです。

「小説」のタグで #コングラボード を獲得!
ありがとうございます!


「創作」のタグでもコングラボード!
ありがとうございます!



#掌編小説 #ショートショート #短編小説 #スキしてみて #創作 #五十嵐雉虎 #擬人化 #言葉遊び #超短編小説 #ダジャレ #駄洒落 #小説

いいなと思ったら応援しよう!

五十嵐雉虎(イガラシ・キジトラ)|準文筆家|掌編小説・ショートショート作家 よろしければ、ぜひ応援をお願いします!

この記事が参加している募集