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【ショートショート】つぶあん? こしあん? ダルメシアンが思案(950文字)

なぜ僕なんだ?

ある日、“つぶあん”と“こしあん”が、そろって僕の前にやって来た。

「ダルメシアン、あなたに決めてもらいたいの。どっちが魅力的か」
「“アン”の仲間として、公正な判断を頼むよ」

いや、僕は犬だ。しかも洋犬だ。
アンコは食べられないし、日本の心も分からない。
斑点が特徴だからって、判定が得意なワケでもない。

アンコたちには申し訳ないけど、今さらこんな、手あかがついたような論争に僕を巻き込まないで欲しい。マジで、ダルい。

「お願い!」
と、つぶあんはつぶらな瞳で、
「ここはなんとか…」
と、こしあんは腰低く頼んでくる。

「あくまでも私案で良ければ……」
押し問答をしているのも面倒なので、嫌々だが引き受けることにした。

「私は粒が残ってるのが持ち味。小豆の風味も食感も生きてるし、おはぎやどら焼きでも主役級!」
つぶあんは胸を張る。

すかさず、こしあんがなめらかに言い返す。
「でも、上品さなら僕さ。皮をこして作るから舌触りは絹みたいだよ。羊羹や最中で選ばれるのは、たいてい僕なんだ」

二人の視線が僕に突き刺さる。

「あなたの模様、つぶあんみたい! 私たち、仲間ね」
「でも“こしあん”と“ダルメシアン”は、“しあん”の3文字が共通してるよ!」

思案に思案を重ね、さまざまな試案を考えるが、あちらを立てればこちらが立たず……。平和な形では終われない。
僕は大きなあくびをひとつ。そしてプルプルと身を震わせた。

悩みに悩んで、僕はついに決めた。
「“つぶしあん”がいいと思う」

「え?」
同時にふたりの眉が動く。
タイミングぴったりじゃないか。アンサンブルかよ。

「つぶしあんは、“つぶあん”と“こしあん”、両方の良さを持ってる。甘さも控えめで、最近は和菓子屋でも人気なんだ」

僕のアンサーに静まり返る空気。

つぶあんが口を開く。
「つまり、中間ね」

こしあんが続ける。
「ダルメシアンだろ。白黒つけろよ!」

バカを言え!
白黒の犬なんて、色々考えても犬小屋の上で黙っているか、蓄音機の前で首を傾げているものなんだ!

「101匹で多数決取ってよ!」

僕は、そのアンビリーバブルな言い草にアングリー。
アンとアンに挟まれて、本当にアンラッキーな日だ。

鼻を高く掲げて虚しく見上げた空は、僕の気持ちを表すような、鈍くて緑がかったブルー。
そう、ダルめの“シアン”だった。

(了)


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