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それでも最後に残るその人だけの配役

今朝、あるお父さんのnote記事を楽しく読んでいました。
娘さんが、「今日はプリンセス!」「今日は探検家!」「今日はポケモントレーナー!」と言って、その役になりきって行動している様子が書かれています。
プリンセスの日は姿勢が良くなり、探検家の日は知らない道へ進み、ポケモントレーナーの日は落ちている石にまで意味を見出す。
読んでいて、なんだか微笑ましくなりました。
そして同時に、こんなことを思いました。
人は、「そういう人だから行動する」のではなく、「そういう人だと思うからそう行動する」のだな、と。
そう考えると、思い当たるフシがあります。
休日の朝、「今日は少し遠出のドライブをしよう」と、ウキウキしながら車のエンジンをかける。そんな時、私は決まって『ルパン三世』のテーマ曲を流したくなります。
「さ〜て、出発しますか」とルパン風に心の中でつぶやきながらハンドルを握る。もちろん、泥棒になりたいわけではありません。
でも、あの曲を聴いていると、少しだけ自由になった気がする。少しだけ大胆になった気がする。少しだけ面白いことが起きそうな気がする。
きっと私は、曲を聴いているのではなく、その時だけルパンのような気分を借りていたのでしょう。人は案外、「なりたい自分」や「役割」を借りながら生きているのかもしれない。
そんなことを考えながら、私はAIと話していました。
すると話は、人間の「役割」の歴史へと進みました。
人類がこれまで作ってきた道具は、土を耕す鍬も、物を切るハサミも、空を飛ぶ飛行機も、すべて「何かに特化したもの」でした。そして人間自身も同じです。限られた一生涯をかけて、ひとつの道を歩み、何かのエキスパートになっていく。すべてに長けたスーパーマンになどなれない私たちは、そうやって途方もない時間をかけ、ひとつの専門分野に特化することで、社会の役割を少しずつ分担してきました。
ところがAIは、まったく違います。
おそらく人間が歴史上初めて生み出した、「特化しないツール」なのです。
ある本に、「AIならこんな問いにもさらっと答える」という例が書かれていました。気になって、私も画面の向こうのAIに、ちょっと試すような気持ちで聞いてみたのです。
「もし紫外線がなくなったら、地球の温度は何度になって、植物は育つのか?」
人間に聞くなら、物理学者、気象学者、植物学者、それぞれ別々の専門家を集めてこなければ答えられないような、複雑に絡み合った問いです。
ところが、問いかけた次の瞬間、AIは迷いなく、こう即答してきたのです。
「もちろんです。お答えできます」
そして次の瞬間、画面にはこんな言葉が並び始めました。
『紫外線が占める太陽エネルギーが失われるため、地球の平均気温はおよそ6度下がり、新たな氷河期が訪れます。また、植物自体は育ちますが、紫外線を頼りに花の蜜を探すミツバチが死滅するため、生態系は崩壊の危機に瀕します――』
私はただただ、驚愕するしかありませんでした。
人間が一生涯をかけて到達するような気象学の知識と、生態学が語るミツバチの命の話が、ほんの瞬きをするような数秒のうちに、一つの会話の中で平然と、恐ろしいほど滑らかに繋ぎ合わされていく。
AIの本当の凄さは、単に知識が広いことではありません。あらゆる領域を横断して、1つの解を出すこともできれば、100個の選択肢を出すこともできる。そして、そのどれもが「正解」になり得る点にあります。
私はその衝撃を胸に抱えながら、
「それなら、僕が今日どう過ごすのが一番の最適解なのか、君に決めてもらった方が間違いないかな。なんなら、これから何を大切にして生きるべきか、とかの哲学系なんかも?」
と半分からかいながら聞きました。
するとAIは、
「それを決めるのは、シンジさんですよ」
と返してきました。
なるほど、と思いました。
AIは特化しないからこそ、無数の正解と可能性を見せてくれる。しかし、だからこそ最後に残るのは、「で、あなたはどうしたいの?」という問いなのです。
多岐にわたる選択肢のどれもが正解になり得る中で、「これが私のやりたいことなんだ」「私はこれが好きなんだ」と、自分の好みと意志で、だんだんと絞り込み、決めていく。生涯をかけて一つのことをやり遂げる人間の儚さと美しさは、結局のところ、この「決断」にこそあるのでしょう。
今日はどんな一日にしたいのか。
何を大切な価値として生きるのか。
だから今日は、少しだけ意識してみようと思います。
あらゆる専門家の役を平然とこなし、100の正解を瞬時に提示する万能のツール。
そんなAIがどれだけ進化しても、決して演じることのできない役があります。
それは、無数の正解の中から、自らの意志で人生の価値を「好き」で決めるという役割です。
どうやらこれこそが、特化しないツールを得た私たちが更に特化したい配役なのかもしれません。
生涯をかけて何かのエキスパートになっていく。それは、毎日同じことを機械のように繰り返すことではありません。
無数の選択肢の中から「私はこれが好きだ」と選び取り、その日その日の自分になりきって、その物語を生きていく。その「好きを選び続けた日々」の積み重ねが、やがて振り返ったとき、その人だけの一生涯の配役として完成していくのでしょう。

さ〜て、今日はどの配役を引き受けて、誰になりきり、どんな一日を始めましょうか。

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