投資詐欺に気づいた夜。心が弱っているときほど、罠はやさしい顔をする│うつ夢#16
穏やかに過ごしていた日々に、
突然、嵐が吹き荒れたのは
セミが鳴き始める頃のことでした。
※この記事は、有名人を使ったSNS投資詐欺に
巻き込まれた実体験と、心が弱っているときに
起きやすい判断ミスについて書いています。
第1話~最新話まで、ココから読めます👇
穏やかな日常に、静かに入りこんできたもの
家でゴロゴロと過ごしていた、ある日の午後。
何気なく開いたInstagramで、
有名人が起用された「投資」に関する広告が目に留まりました。
「しっかり勉強すれば稼げる」
「●●が教える、確実に稼げる方法」
そんな言葉が、きれいに並んでいました。
有名な人がうたっている広告だし、
Instagramに掲載されているくらいなら、
きっと審査もされているんだろう。
そんなふうに、疑うこともなかったのです。
そして、投資の勉強ができるというLINEに
登録しました。
今思えば、そこが悪夢への入り口でした。
「ちゃんと調べたつもりだった」わたしの油断
わたしはこれまで、お金についてまったく学んでこなかったわけではありません。
・ファイナンシャルプランナー主催のセミナーに参加したこと
・お金に関する有名なYouTubeを観ていたこと
・本を読んで、少額ながら投資を実践していたこと
・FPの試験を受けたこと
その中で、強く印象に残っていたのが
「お金は、稼ぐだけでなく、守ることが大切」
という考えでした。
使い方、守り方を知らなければ、
お金は味方になってくれない。
とくに投資のようにリスクを伴うものほど、
慎重であるべきだ、そう思っていました。
だからこそ、LINEグループに入ったあとも、
すぐに行動はしませんでした。
発信者がどんな人なのか。
どんなツールを使っているのか。
やりとりに違和感はないか。
一つひとつ、確かめるように静観していたのです。
*確認したこと*
・発信者の素性(実在する人物か)
・投資ツールが国に登録されている会社か
・発信内容に明らかな嘘がないか
安心してしまった理由と、LINEグループの空気
グループには、20名ほどが在籍していました。
そのうち5~6名が、特によく発言していたと思います。
「昨日●●円稼げたので、今日は少し高いカフェで朝活です」
「●●さんのおかげで、勝てました」
「みなさん、一緒にがんばりましょう!」
活気のあるやりとりが、
毎日のように流れてきました。
2週間ほど見守ったあと、
「この様子なら、大丈夫かもしれない」
そう感じてしまったわたしは、
発信者に個別で連絡を取り、
投資の練習をしてみたいと伝えました。
少しずつ増える数字が判断力を奪っていった
最初に求められたのは、個人情報の入力と、
初期投資費用としての10万円の振込でした。
免許証の写真も含め、指示された通りに入力し、
指定された口座へお金を振り込みました。
そのとき、発信者から言われた言葉を
今でも覚えています。
「まずは小さなお金で、少しずつやってみましょう。練習が大事です。一緒にがんばりましょうね」
その言葉に、
少し安心してしまったのだと思います。
それからは、指示通りに投資ツールで売買を繰り返し、画面上では、少しずつ資産が増えていきました。
そんなやりとりが1週間ほど続いた、ある日。
「もう少し、元金を増やしてみませんか?
どのくらいなら出せそうですか?」
そう聞かれました。
すっかり前向きになっていたわたしは、
「30万ほどなら」と答えてしまいました。
振り込もうとして初めて、振込上限額があり、
すぐには送金できないことに気づきます。
その日は、結局振り込みをしませんでした。
ここが、運命の分かれ道でした。
その夜、世界が反転した
その日の夜、何気なくネット検索をしていると、
ある記事が目に入ったのです。
「有名人を使った投資詐欺の広告による被害」
読み進めるうちに、
背筋を冷たいものが走りました。
書かれている内容が、あまりにも見覚えのあるものだったからです。
「有名人の名前を無断で使った投資詐欺が多発」
「●●という名前の人物に注意」
「LINEグループに誘導され、複数人が成りすまして発言している」
「儲かっているように見える投資アプリは、すべて作り物」
「振り込んだら最後。お金は戻ってこない」
読めば読むほど、動悸が激しくなる。
……知ってる。
これ、わたしがいる場所だ。
絶望、焦り、怒り、不安。
言葉にできない感情が、次々と押し寄せてきました。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
本当は、すぐ誰かに相談すべきだったと思います。
でも、そのときのわたしには
それができませんでした。
助けを求められなかった理由
うつ病で休職中。
思考は鈍く、判断力も落ちていました。
それ以上に、「間違ったことをした自分」を
誰かに責められるかもしれない恐怖のほうが、
ずっと大きかったのです。
だから、ひとりでどうにかしなければ、
と動いてしまいました。
翌日、発信者に連絡を取りました。
「私用で急にお金が必要になり、元金の追加ができなくなりました。現時点の元本を引き出したいのですが、いつ頃になりますか?」
“詐欺に気づいたと思わせないこと”。
それだけを意識して、やりとりを続けました。
連絡が途切れたら終わりだ。
そう思いながら、何度も、冷静を装って確認を重ねました。
そして、奇跡的に元金が手元に戻ってきたのです。
お金が口座に戻ってきた瞬間、
全身の力が抜けて、
手足に血がもどってきたのがわかりました。
その後、グループ内のやりとりをすべてスクリーンショットに残して、消費者生活センターへ相談し、家族にも報告しました。
※お金が戻ったあと、発信者はグループを抜け、
連絡は取れなくなりました。
おそらく、詐欺が露見したと気づいたのでしょう。
この出来事のあとから、
「有名人を無断で起用したSNS投資詐欺」が
ニュースでも大きく取り上げられるようになりました。
お金は戻っても、残った傷跡
人をだましてお金を得る行為は、
どんな理由があっても許されません。
生きるため。
余裕のある生活のため。
お金が欲しいと思う気持ちは、わかります。
痛いほど、わかります。
それでも。
やってはいけないことは、あります。
わたしは運よく、お金を失わずに済みました。
けれど、
人に裏切られた傷
嘘を見抜けなかった自分への失望
大切な人に心配をかけてしまった後悔
それらは、確かに残りました。
時間をかけて、少しずつ整理し、癒してきました。
今は、日常に支障が出るほどではありません。
でもきっと、一生消えない傷なのだと思います。
心が弱っている人に伝えたいこと
わたしがこの経験を通して学んだこと。
それは、
心が弱っているとき、
お金の不安を抱えているときほど
リスクを取ってはいけない
ということです。
心が弱っているときにすべきことは、
「休む」ことです。
脳も体も疲れ切っている状態では
誰もが正しい判断はできません。
何もできないことに罪悪感を抱かないで。
休むときは、
SNSのように刺激が多い場所は避けて、
自然と触れあったり、体を動かしたり、本を読んだりする。
しかも、回復に必要な行為って
以外とお金がかからなかったりします。
わたしは、大好きなスイーツを手作りしたり、
公園に行って本を読んだりしていましたよ。
あなたの脳も体も心地よく休める方法を
ゆっくりと探してみてくださいね。
もし罠に落ちてしまったら、必ず相談をすること
人は巧妙な罠に、ふとした隙で落ちてしまう。
どれだけ気をつけていても、抜け出せなくなることがあります。
もし、そうなってしまったら。
どうか、ひとりで抱え込まないでください。
身近な人や、公的機関。
助けてくれる場所は、きっとどこかにあります。
そして、被害に遭った人の周りにいる方へ。
どうか、その人を責めないでほしい。
誰にだって、騙される可能性はあります。
一番悪いのは、詐欺を働いた側です。
そのことをどうか、
忘れないでいてほしいと願っています。
わたしが決めたお金との付き合い方
お金は、簡単には稼げません。
今のわたしは、その意味を身をもって知っています。
だからこそ、堅実に学ぶことを選びました。
価値を提供したその先に、収益が生まれることが
当たり前の世の中であってほしいから。
わたしは書きます。
自分の経験が、誰かの助けになるように。
穏やかに生きるための選択をしたい
悪夢のような日々が過ぎ去ったあと、
わたしは「穏やかに過ごす」ことを選び、
休職期間の限界まで、ゆっくりと時間を使いました。
そして、
休職期間の終わりを告げる会社からの通知を前に、
ひとつの決心をしました。
正社員を、辞めよう。
#17へ、つづく。
ここまで読んでくださって、
ありがとうございます🌷
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