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藪落し 山本周五郎

オーディオブック聴くトクちゃんねる今週と来週は年末年始スペシャルとして、土曜日、日曜日の20時に配信予定。
第一弾となる今回は、水晶の夢に魅せられた男の物語、山本周五郎「薮落し」です。 

「アサヒグラフ」1935年(昭和10年)2月17日号


藪落しあらすじ


薮落とし あらすじ

百姓の勘三郎は、祖父の遺した記録を頼りに、水晶鉱山を探し当てることで家を再興しようと決意する。妻・お豊はその志を理解し、過酷な農作業と家事を一身に引き受けて夫を支え続けた。

しかし、勘三郎の山探しは成果を得られぬまま年月を重ね、家財と土地を失い、一家は叔父の世話になる。過労の末にお豊は急死し、さらに幼い息子・裕吉も「藪落し」と呼ばれる危険な斜面のある場所で行方不明となる。

それでも勘三郎は山から離れられず、老いと病を抱えながら山入りを続ける。六十を越えたある秋の日、彼は藪落しで滑落し、偶然にも紫水晶の鉱脈を発見するが…

主な登場人物の紹介

■ 勘三郎(かんざぶろう)
与石家の百姓。祖父の遺した記録を信じ、水晶鉱山を探し続ける。
妻と子を深く愛しているが、山への執念から離れられない。

■ お豊(おとよ)
勘三郎の妻。夫の志を理解し、過酷な労働と貧困を一身に背負う。
夫の成功よりも、夫自身の望みが果たされることを願うようになる。

■ 裕吉(ゆうきち)
勘三郎とお豊の子。

■ お常(おつね)
勘三郎の母。お豊が病床にある間に死去する。

■ 多吉(たきち)
勘三郎の叔父。与石家から分家して養子に入った人物。勘三郎一家を助け、住まいを与える。

■ 多吉の長男
多吉の跡取り。勘三郎の身を案じ、山入りをやめるよう諫める。


言の葉メモ


【藪落し(やぶおとし)】
細い篠竹が密生する急斜面。踏み込むと滑落し、断崖へ落ちる危険地帯。

【やまさがし】
鉱山(ここでは水晶鉱山)を探し当てること。

【左前(ひだりまえ)】
家計や商売が傾いている状態。

【抵当流れ(ていとうながれ)】
借金の担保にした土地や山が没収されること。

【丸鑿(まるのみ)】
岩や木を削るための工具。

【肥立ち(ひだち)】
産後の回復の具合。

【みず稲】
実が十分に入らなかった稲。

【隠居所(いんきょじょ)】
年長者が住むための離れや別棟。

【金竹(きんだけ)】
本文中では細く滑りやすい篠竹の一種を指す。

【紫水晶(むらさきすいしょう)】
紫色を帯びた水晶。本文では極めて高価な鉱物として描かれる。

紫水晶(アメジスト)の石言葉

紫水晶(アメジスト)は、水晶の一種で、鉄分を含んだ結晶が自然の作用によって紫色に発色した鉱物です。
古くから宝石や護符として用いられ、その紫色は高貴さや精神性の象徴とされてきました。

アメジストの晶洞

紫水晶の石言葉は「誠実」「心の平和」「高貴」「精神の安定」「真実の愛」です。
古代ギリシャでは「酔わない石」と信じられ、理性を保つ守り石として大切にされていました。

主な産出国はブラジル、ウルグアイ、ロシア、スリランカなどです。
現在も世界各地で産出されていますが、色味が深く透明度の高い紫水晶は希少とされています。

紫水晶は「誠実」や「心の平和」を象徴する石ですが、本作では勘三郎がすべてを失って、お豊のお墓の隣に埋められてから、ようやくその平穏が訪れたのかもしれませんね。

朗読動画 藪落し


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