JW951 磐城彦という男
【東征冒険編】エピソード26 磐城彦という男
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦111年、皇紀771年(景行天皇41)。
ここは、福島県須賀川市の辺り。



東征をつづける、日本武尊(以下、タケル)一行は、ヤマトへと戻りつつ、蝦夷(東北地方の人々)を討つ旅を進めていた。

タケル(30)「ん? あそこから、怪しげな男たちが、やって来るぞ。」
男「日本武皇子の御一行と、お見受け致しまする。我は『久自の国造』、『物部の連の磐城彦』と申しまする。『いわお』と、お呼びくださりませ。」
タケル(30)「ん? 物部の一族なのか?」
いわお「御意。物部の系譜には登場致しませぬが・・・。」
たっちゃん「伝承だけの人物であると?」
いわお「御意。」
タケル(30)「して、久自国と申せば、二千年後の地名で言うと、茨城県の常陸太田市や大子町の辺りだな?」
いわお「御意。」

タケル(30)「その『久自の国造』が、なにゆえ、このようなところに?」
武日「『おい』たちが、エピソード922で、久自国を訪れた折、参上せんかったくせに、今頃、やって来たんか?」
いわお「あの時は、皇子が来ているなど、露知らず・・・。また、蝦夷との戦に追われておりましたゆえ・・・。」
だねお「では、我らが来とること、どうやって、知ったんだ?」
いわお「はっ。『長幡部の連の多弖』より、報せが有り・・・。」
タケル(30)「なるほど・・・。して、俺たちに加勢する為、ここまで、馳せ参じた・・・というわけか?」
いわお「いえ・・・。」
タケル(30)「ん?」
いわお「皇子の御力添えをいただきたく、参上仕った次第・・・。」
タケル(30)「力添え? 賊が居るのか?」
いわお「御意。久自国の土蜘蛛たちが、俄かに、兵を挙げ、八溝山に帳(陣のこと)を布いてしまいまして・・・。」


タケル(30)「土蜘蛛だと? 初代、神武天皇の御世、岩穴に暮らす者たちが居た・・・と聞いたことが有るが、久自国には、今も、そのような者たちが居るのか?」
いわお「はい。して、その土蜘蛛は、蝦夷と手を結び・・・。」
そのとき、「いわお」に従う者たちが、割って入ってきた。
久自の兵(い)「我ら、帰り路を塞がれ、久自国に戻れぬのです!」
久自の兵(ろ)「我らを、家に帰らせてくださりませ!」
タケル(30)「どういうことだ?」
いわお「この物語では、我らが、国境を越え、蝦夷を討っていた時に、土蜘蛛が、兵を挙げたことになってしまいまして・・・。」
たっちゃん「伝承では、久自国から敗走した・・・と書かれているようじゃが?」
いわお「御意。されど、国造を敗走させておきながら、平らな地ではなく、山に帳を布くのは、面妖であると、作者が・・・。」
タケル(30)「なるほど・・・。」
だねお「して、汝は、我らが来るまで、何をしとったんだ? ただ、指を咥えとったんか?」
いわお「我らの人数では、如何とも成し難く、ヤマトに味方する蝦夷から、食べ物を分け与えてもらいながら、なんとか、過ごしておりもうした。」
たっちゃん「ところで、土蜘蛛たち・・・と申しておったが、手を結んだ蝦夷も、八溝山に?」
いわお「御意。また、土蜘蛛も、八人、居りまする。」
タケル(30)「八人も?」
いわお「はい。黒鷲こと『クロロ』、神衣媛こと『かんみ』、草野灰こと『クハイ』、保保吉灰こと『ホハイ』、阿邪尓那こと『アザ』、栲猪こと『タク』、神石萱こと『カン』、狭磯名こと『サッシ』の八人にござりまする。」
八溝山の賊を討つことは、出来るのか?
次回につづく
