今日知った言葉⑥ Zhēng Shàngyóu
今日は何と、中国語の言葉から。
中国語に詳しい方もいらっしゃると思うので、何か間違っていたらご容赦をいただきたいのだが、これまた面白い言葉だったので、調べてわかったことをまたつらつら書いていこうと思う。
漢字で書くと「争上游」で、それをピンインで表記したものが「Zhēng Shàngyóu(ジョンシャンヨウ)」だそうだ。
ピンインだと読み方だけなので意味不明だが、漢字がわかると何となく推測できて便利だ。
最初の「争」は日本語と同じ「争う」、「上」は文字どおり「上方向」、「游」は日本語で「遊ぶ」に近いが、さんずいなので水に関係してそう。
ということで『白水社 中国語辞典』によると、「いち早く上流に到達しようとする」という意味で、高い目標や先進的な地位に達しようとすることを示す慣用語とのこと。
日本語では「上昇志向」「向上心」「野心」あたりが近いだろうか?
さてこの「争上游」、日本にもあるトランプゲームの名前でもあるのだが、何だかおわかりだろうか?
そう、かなり多くのかたがご存じ、もしくは遊んだ経験がおありかと思うが「大富豪」もしくは「大貧民」である。
私は昔から「大貧民」と呼んでいて、そういう名称だと思っていたのだが、うちの娘やムコさんは「大富豪」と呼んでいる。そもそも目指すべきは大貧民ではなく大富豪のほうだから、正しい名称は「大富豪」かもしれない。
発祥が中国か日本かわからないが、何となく麻雀と同じで中国から来たような気がする。世界中どこに行っても中国人ソサエティがあるので、彼らが麻雀やトランプゲームを広めたとしても不思議ではない。
ちなみに「マージャン」は英語でも "Mahjong / Mah Jongg" である。たまにアメリカのドラマや映画にも登場する。
Wikipediaによると「争上游」のルールは以下のようになっている。
・ジョーカーの2種類を区別する。ジョーカーの次に強いのは2であり、3が一番弱い。
・2枚以上の組み合わせでは、2とジョーカーをワイルドカードとして使える。
・競技者は前の人が出したカードと同じ組み合わせで、より大きなカードを出すか、パスする。
・最初に手札をすべてなくすると上がりとなる。最後のひとりが残るまでゲームを続ける。
・2回目以降のゲームでは、下位の2名がいちばんよいカードを上位2名の任意のカードと交換する。

日本の「大富豪」のルールと基本は同じではないだろうか?
私が高校生の頃に遊んでいたルールはこれくらいの単純なもので、あとは「スペ3返し」(スペードの3がジョーカーより強い)くらいのものだった。
が、娘一家がくるとたくさんルールが付け足される。
「8」で「8切り」(やぎり、その場を終えて自分からターンを始められる)、「J」で逆(数が少ない方が強い)、同じ数字を4枚出すと「革命」でその先はすべてが逆(数字では「3」が最強)となるとか。
さらに「反則上がり」(ジョーカー、2、8で上がれない)もあってやたら複雑だ。
特に「革命」をされると、それまでの世界が全く逆になるので頭が混乱してパニックに陥る。孫が革命をしようとすると、娘に「ばあばが混乱するからかわいそうだよ」と言われるくらい、同情されてしまう情けない私である。
ネットから探してきた表題の写真も、たまたま「J」が4枚だが、それだと「革命?そのまた逆さま?」とわけがわからなくなる。
こんなに複雑なルールになったのは最近かと思ったが、調べるとちゃんと「公式ルール」が存在していた。何と「日本社団法人 日本大富豪連盟」という組織があるのだ。
確かに、娘たちのやり方と同じで「革命」も「8切り」も出ている。さらに「都落ち」「スートしばり」という知らないルールまで出ていて、余計に複雑である(娘たちには内緒にしておこう)。
全国大会もあって、年によって副賞が100万円とかFIAT500とか、確かにプチ富豪になれそうだ。
…と、いきなりトランプ大会の話になって、私はいったい何を読んで調べているんだ? と思われそうだが、れっきとしたノンフィクションの英文だ。
そもそもは英語で出てきた。最初は何かと思ったが、実はこのゲーム、アメリカでは "President" もしくは "Asshole"と呼ばれているらしい。
大富豪が「大統領」なのはまだわかるが、「大貧民」が「アスホール」とは何とかわいそうな呼ばれ方。"ass" は「お尻(というかケツ)」 "hole" は「穴」だが、たいていは「最低」「ばか」「マヌケ」あたりを意味する。
また、"President" の下が "Vice President"「副大統領」なのは当然として、"Asshole" の上が "Vice Asshole" とある。この珍しい言葉はいったい何と訳せばいいのやら?
これもまた地域性があって、"President" の代わりに "Capitalism"「資本主義」と言ったり、"Asshole" の代わりに "Scum"(「カス」「クズ」と、これまたひどい呼ばれよう)と言ったりもするらしい。
我が家は子供たちが小さいうちに日本に帰国してしまったので、アメリカのゲームはよく知らないのだが、同じようなトランプゲームが存在しているのは面白い。
Wikipediaによると、ベトナムにも「ティエン・レン」(Tiến Lên「前進する」という意味)という似たゲームがあるそうだ。他のアジアの国々にも存在するのだろうか?
このゲームの面白くて、また不条理なところは、1番負けた人(大貧民)が1番勝った人(大富豪)に手持ちのカードから1番いいカードを2枚差し出さないといけないことだ。
逆に大富豪は、自分に不要なカード2枚を大貧民に放出する。これによってランダムに配られた手札から最強の戦力を取られた上、弱いカードが加わり(たまにいいカードがもらえることもあるが)、環境としては最悪となる。
これで、大貧民から一気に大富豪に昇進出来たら、それはもうプレーヤーの腕がよかった、と称賛されるわけだが、一度下まで落ちたらたいていは運も味方につけないと這い上がれない。
こんな単純なトランプゲームであるが、こういうゲームを使って成功者の要因を「環境か努力か」という問題に落とし込んで研究している社会学者もいるようなのだ(『国宝』の「血筋か才能か」みたい)。
確かに現実でも、努力してもなかなか報われない環境もある一方、恵まれない環境に生まれながら立身出世した偉人はたくさんいる。どうやって底から這い上がるか、限られた手札でもって勝負していくか、トランプゲームながら、深い人生を感じられるではないか?
先ほどの「大富豪連盟」の全国大会でも、何度も優勝しているチャンピオンがいるらしい。手札がどうあろうと、運を味方にして勝つコツ、攻略法があるのかもしれない。
我が家は今度の週末、夫の誕生日祝いで(ついに古希!)また娘一家がやってくる。私も運を味方につけて「万年大貧民」(8歳の孫にさえ負ける)から抜け出すすべを模索したいと思う。
「Mリーガー」という言葉も初めて知った。チャンピオンは日本人ばかりだ
*写真はネットからお借りしました。
フリーランス翻訳者: 浦田貴美枝
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