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みどりの窓口、利用していますか?

夏休みが終わり、駅の券売機で定期券を買っているふうな学生さんの姿をよく見かけるようになりました。

筆者が学生の頃は、通学定期券を買うにはわざわざ窓口へ出向く必要があったのですが、今は通学定期券も券売機で買えますし、さらには「モバイルSuica」「モバイルPASMO」でも通学定期券を買えるようになりました。

一方で、先月は夏休みの観光や帰省に乗る列車の空席を求めて、または豪雨や台風で運休になってしまった切符の変更・払い戻しをするために「みどりの窓口」へ行こうとしたら閉鎖されていた、営業時間が短縮されていた、大行列で困ったという人もいるでしょうか。中には「話せる指定席券売機」で悪戦苦闘した人もいるかもしれません。

オンライン化で便利になった反面、駅の出札窓口には削減の嵐が吹いていますが、ここにきて一部で逆風も吹くようになったようです。今回は都市部の鉄道駅で静かに様変わりしている券売機出札窓口について書いてみたいと思います。


券売機、使ってますか?

交通系ICカードのチャージに

便利なSuica・PASMO等の交通系ICカードが普及した昨今は、切符を買う機会がめっきり減り、回数券も廃止されてしまったので(※)、券売機はチャージの時にしか使わない、という人が多そうです。

※会社によっては引き続き回数券が発売されています。

さらに「モバイルSuica」等であればクレカでチャージや定期券を買えるので、最後に券売機を利用したのは何時だっけ…という人もいるでしょうか。

使う機会が減った駅の券売機

企画券の購入に

筆者もご多分に漏れず「モバイルSuica」を愛用していますし、JR東日本の「VIEW Suica」カードも使っていますから、大都市圏の駅で現金を使う機会はほぼなくなりました。「モバイルSuica」ひとつでJRも私鉄もバスにも乗れますから、首都圏にいるうちはほぼ不自由しません。

でも、「東京メトロパス」や「高尾山きっぷ」などの企画乗車券を買うために券売機を利用します。筆者は基本テレワークなので定期券ではなく「東京メトロパス」を購入するために券売機をよく使います。

東武東京メトロパス(公式サイトより引用)

東京メトロパス」というのは、私鉄の往復+東京メトロ乗り放題がセットになったお得な切符で、東京メトロと直通運転している大手私鉄がよく発売しています。東京メトロ24時間券と違って出発駅に戻ると切符が回収されて使えなくなりますが、そのぶん安くなっていて、一定以上の距離では往復するだけで元が取れ、数箇所回るような用務ならば乗降するほどお得になります。観光や買い物はもちろん、会議等で東京都心部へ出向く時にも便利なので、日常的に使っている人もいるのではと思います。

しかし今は券売機の数が減らされていて、1~2台しかない駅もざらなので、春と秋の新学期には数少ない券売機が定期券購入で塞がっていて切符をなかなか買えず、予定していた電車に乗り遅れる…なんてこともあったりします(苦笑)。

「東京メトロパス」を「モバイルSuica」で買えると嬉しいのですが、会社の壁以前に、Suica等の交通系ICカードに企画券を登載するのは極めて難しい問題もあって、今のところモバイル対応はしておらず、都度券売機での購入が必須です。

定期券の購入に

交通系ICカードが普及した昨今、券売機の用途は定期券購入とチャージが主になっているようで、大きな駅では定期券購入用の券売機が用意されていたりもします。

例えば京王電鉄では「定期券らくはや予約」というサービスがあって、予めインターネットで予約しておき、駅の券売機ではQRコードをかざして現金等で支払うだけですぐに定期券を購入できます。

春秋は定期券の購入で券売機に行列しがちですが、事前予約すれば混雑を避けて定期券を早く購入できますし、通勤定期はもちろん、通学定期にも対応しているので、窓口に行かずに最寄駅で通学定期券を購入できて便利です。

筆者が学生の頃は窓口のある駅まで行って紙の申込書を書いて並んで現金で購入するしかなかったので、便利になったなぁ、と思います。

定期券購入専用の券売機(京王電鉄)

定期券の購入は券売機や「モバイル」へ

筆者が通学・通勤していた頃は、定期券は窓口で買うものでした。JRでは「みどりの窓口」、私鉄では「定期券うりば」が主要駅にあって、そこまで出向いて都度購入していました。

その後、継続定期券に限って券売機でも購入できるようになり、さらにSuica・PASMOの普及により新規定期券も券売機での購入が主になって、窓口へ行く機会が減ったという人が多いと思います。

「モバイルSuica」「モバイルPASMO」「モバイルICOCA」を使っている人は、チャージや定期券も携帯端末で購入できるので(支払いはクレジットカード)、券売機にすら行く必要がなくなった人もいると思います。

とはいえ、皆が「モバイルSuica」等を使っているわけではありませんし、クレジットカードを使いたくない・使えないという人もいるでしょう。窓口に出向いて現金で買いたいという人もいるでしょうから、今でも年度始めや新学期には券売機や窓口が混雑しがちです。

窓口の削減が進む大手私鉄

JR以外の私鉄・地下鉄では券売機でできることが増えて便利になった反面、出札窓口には削減の嵐が吹いています。

例えば小田急では各駅に出札窓口を設けて特急券や「箱根フリーパス」「丹沢・大山フリーパス」などを発売していましたが、特急券と主な企画券は券売機で買えるようになり、出札窓口は閉鎖されました。

特急券やフリーパス(企画券)は券売機で買えるようになり、出札窓口は閉鎖された

比較的長距離の営業をしていて窓口でしか買えない切符も多い東武鉄道では、インバウンド観光客が多い浅草駅などには窓口があって、特急券のほか、券売機では買えない「ゆったり会津 東武フリーパス」や「NIKKO PASS」などのお得な企画乗車券を発売しています。

東武浅草駅には出札窓口があり、長距離客やインバウンド観光客に対応している

東武でもインバウンド観光客向けに「ALL NIKKO PASS」などのデジタルチケットを発売していますが、紙の切符も残して、インバウンド観光客の多い駅に絞って窓口も残しているわけです。

でも、出札窓口がある駅はごく一部。他の駅では基本、有人改札で企画券を発売しています。

東武でもほとんどの駅では出札窓口は閉鎖され、企画券は有人改札で発売している

定期券の払い戻し、紛失再発行などの券売機ではできない手続きもあるので、一応窓口も残ってはいますが、削減の一途ですし、会社によっては駅事務室などで受け付けている場合もあります。

近頃は、むしろ地方中小私鉄の方が窓口が残っていたりします。不慣れな観光客が多い登山鉄道などでも窓口が健在です。乗客そのものの多寡よりも、案内を求める客の多寡で分かれているようです。

つまり、定期的に利用する乗客にはモバイルや券売機などを使ってもらい、観光客などの不慣れな乗客向けには窓口でも対応する、という役割分担が見て取れます。

JRの「みどりの窓口」

ところがJRでは事情が変わります。

JR旅客6社は国鉄時代から引き続き、全国のJR駅の切符を取り扱っていて、全国の切符を発売できる出札窓口は「みどりの窓口」(JR東海は「JR全線きっぷうりば」)と呼ばれます。

みどりの窓口(海老名駅)
JR東海に限り「みどりの窓口」ではなく「JR全線きっぷうりば」と称している(東京駅)

切符には「普通乗車券」「回数乗車券」「定期乗車券」「指定席券」「特急券」(急行券)「寝台券」「企画券」など様々ありますが、「みどりの窓口」では「普通回数乗車券」と「企画券」を除く(※)全国の様々な切符を取り扱います。

※普通回数券は原則として利用する区間の周辺駅でのみ発売しています。新幹線回数券は全国で購入できますが、2024年12月で発売終了となります。JR東日本では2022年9月末で普通回数乗車券の発売を終了しています。「Sきっぷ」等は企画券扱いで発売条件が異なります。企画券は各々発売箇所が指定されています。

全国の切符を買える「みどりの窓口」は一見便利ですが、ローカル(短距離)輸送から都市間輸送まで、全国の様々な券を扱う必要があることから負担も大きいようで、全国の切符を扱わない(「みどりの窓口」ではない)出札窓口も存在します。この場合は発売券種・範囲等に制限があります。

JR東海の東京駅で発券(区間変更)した、JR只見線の乗車券
JRの乗車券は全国の「みどりの窓口」で手続きできる

JR各社では「みどりの窓口」の一部機能を代替できる「指定席券売機」を主要駅に設置しています。これについては別の記事で扱いたいと思います。

切符を買う機会

企画乗車券(お得なきっぷ)

チャージと定期券以外で券売機や出札窓口を使う機会が多いのは、企画乗車券(お得なきっぷ)だと思います。

Suica・PASMO等の交通系ICカードは便利なのですが、その仕組み上、企画券の設定に難があるため、企画券は依然として紙の切符で発売されていることが多いです。

交通系ICカード全盛の昨今でも、企画券(お得なきっぷ)は紙の切符で発売されることが多い

エリア境界をまたぐ切符

頻度こそ多くないですが、Suica等のエリア外への移動には依然として切符が必要になります。例えば、上越線では水上駅以南がSuica首都圏エリアですが、水上駅より北(湯檜曽、土合方面)はSuica未対応です(小千谷、宮内はSuica新潟エリア)。Suicaを開発した元祖・JR東日本ですら、Suicaが使えない線区はまだまだ多いのが実情です。

Suicaエリア外へ行くときは紙の切符が必要

また、JR東日本(Suica首都圏エリア)とJR東海(TOICAエリア)にまたがって乗車するときも、紙の切符が必要です。SuicaエリアとPASMOエリアは一括精算できるのですが(ただし4社まで)、SuicaとTOICAはダメなんです(;_;)。

国府津で乗り換えて御殿場線の神奈川県内は首都圏との流動が多いでしょうから、下曽我など小田原市内の御殿場線沿線に住んでいる人は不便していると思いますし、小田原付近から三島・沼津あたりの流動も多そうです。

三島駅や沼津駅にはSuicaエリアから来た人に現金精算してもらうための精算機が多数設置され、冬休みなどの帰省シーズンにはさらに臨時の精算窓口も設置されるほどですから、不便している人は多いでしょう。

JR東日本とJR東海の会社境界をまたぐ移動には紙の切符が必要

特急券など

JRおよび一部私鉄の特急列車に乗るときには、乗車券のほかに特急券が必要です。

私鉄では特急券のオンライン購入+チケットレス乗車が一般的になってきましたが、JRでは依然として紙の切符が必要な場合が多々あります。

JR東日本では(近隣の大手私鉄よりは遅いですが)JR他社よりも早くチケットレス乗車に対応しつつあって、2024年 4月に中央線特急がチケットレス対応したことで、首都圏発着のJR東日本完結の在来線特急は全てチケットレス対応が完了しました(東武直通特急とサンライズ瀬戸・出雲は紙の切符が必要)。

また、2024年10月からは普通(快速)列車の指定席やSL等の観光列車でも在来線チケットレス座席指定券が使えるようになります。これについては機会を改めて紹介したいと思います。

詳しくない人向けのキャリアショップのような存在になった「みどりの窓口」

このように、JR東日本では指定席券売機と「えきねっと」でほとんどの切符を発売できるようになりましたし、チケットレス化も(JRの中では)進んでいます。

筆者も「えきねっと」やチケットレスサービスを便利に使っていますし、切符の仕組みを理解している人にとっては「指定席券売機」も便利で、窓口を利用する機会が激減しました。

でも、一足早くチケットレス化した新幹線でも、依然として窓口で切符を買い求める人が多い様子です。今は在来線でもチケットレス化が進んいますが、新幹線ですらこの状態ですから、しばらくは窓口需要がなくならないのではと思います。

「新幹線eチケット」を始めたが、依然として新幹線に乗るときには切符を買う人が多い

今は誰もが持っているであろうスマートフォンなどの携帯電話も、オンラインで契約して簡単に設定できるようになっているのに、依然として「キャリアショップ」なるものが街中に多数存在し、各種手続きや機種変更等でわざわざ出向く人が少なくないようです。

「みどりの窓口」も、(都市間)鉄道利用に詳しくない乗客にとっての「キャリアショップ」のような受け皿的存在になっているのでしょう。

つまり、よくわからないから「みどりの窓口」に行く人と、窓口でしかできない手続き(変更、払い戻しなど)があって仕方なく行く人に分かれそうです。

大手携帯通信会社の「キャリアショップ」例

スマートフォンでSIMカードを入れ替えてAPNを設定するのは、慣れた人には簡単ですが、ハードルが高いという人もいるでしょう。同様に、頻繁に旅行・出張している人には切符を買うのは簡単ですが、切符の仕組みを知らない人にはハードルが高い面もあるでしょう。

もっと言えば、オンライン手続きが不安な人はキャリアショップに行くでしょうが、お得で便利なオンライン手続きに慣れてしまうと、わざわざキャリアショップに行こうとは思わないでしょう。お得でストレスフリーなオンライン専用プランに乗り換えた人も多いと思います。

JR各社も工夫しているとは思いますし、普段からよく新幹線や特急列車に乗る機会がある人は様々なサービスを活用していると思いますが、切符の仕組みは少々複雑ですし、筆者もよく聞かれますが、知らない人に案内するのは骨が折れます。めったに乗らない人だと、複雑なルールを習得するメリットが薄くて学習する動機も乏しいかもしれません。

SuicaとPASMOがしっかり連携した首都圏の交通系ICカードのように、仕組みをよく知らなくても1枚のカードで利用できるのは理想形ではありますが、利用できるエリアは限られてしまいます。

さらにここ数年はインバウンド観光客も増えて、日本の鉄道のルールも知らなければ言葉もうまく通じない乗客にも対応する必要があります。「指定席券売機」は英語表示にも対応していますが、そもそも切符のルールを知らなければ使えないでしょう。そうしたインバウンド観光客に対して「Welcome Suica」は良い仕組みだと思いますが、エリアが限定されてしまうのが悩ましい。都市間移動するインバウンド観光客に案内できる駆け込み寺的な存在は現状「みどりの窓口」しかありません。

欧州などでは都市内と都市間が明確に役割分担していることが多いのですが、日本の鉄道は都市圏内路線と都市間路線が密接に絡み合っています。普段の(都市圏内の)移動ならばSuica・PASMO等の交通系ICカード1つで足りますが、都市間移動になると切符が絡んできて複雑化します。

そのため、普段はSuica等を活用している人でも、たまにしか利用しない都市間移動の際には「みどりの窓口」のお世話になる人が少なくないようです。そうした移動が増える夏休みや年末年始、大型連休などには窓口が混雑しがちです。

オンライン・チケットレス限定の「お得なきっぷ」

見方を変えると、通信キャリアがオンライン限定で廉価なプランを投入しているように、鉄道でもオンライン限定でお得な乗車券類を発売しても良いと思います。

一部では実際に発売されていて、例えばJR東海では「EX」で新幹線にお得に乗れる商品がありますし、JR東日本では「えきねっとトクだ値」がチケットレスで販売されています(※)。

※詳しくは割愛しますが、実は発券もできます(笑)。

東武では「NIKKO MaaS」で電車とバスに乗れる「デジタル中禅寺・奥日光フリーパス」を紙の切符よりも安く販売しています。

このようなオンライン・チケットレス限定の「お得なきっぷ」が増えてくれば、乗客の側にも、デジタルチケットやチケットレスサービスを利用する動機・メリットが生まれると期待されます。「飴と鞭」の「飴」ですね。

「みどりの窓口」の削減を進めたJR東日本

ところが、特にJR東日本は2021年頃から大胆に「みどりの窓口」を閉鎖してきました。「飴と鞭」の「鞭」が先行していたとも言えるでしょうか。

利用者の多い首都圏の駅や、地方の新幹線駅ですら大胆に窓口を廃止してゆきました。

窓口が残る一部の駅でも営業時間が短縮され、首都圏の駅では10時~17時などに短縮されたことが、混雑を助長しました。

「みどりの窓口」を廃止して「話せる指定席券売機」に置き換えられた例(川口駅)
スキー客や湯治客で賑わう上越新幹線・越後湯沢駅でも「みどりの窓口」が廃止された

このしわ寄せは乗客に向かいます。JR東でもオンラインチケットなどの導入を進めていたとはいえ、まだ窓口でしかできない手続きが少なくありません。

また、前述のようにJR各社はローカル輸送と都市間輸送の両方を担っており、全国の切符を発売できる「みどりの窓口」の特長が安心感を提供している面もありそうです。

国鉄分割民営化により、首都圏では在来線がJR東日本、東海道新幹線はJR東海にと分割されたため、縦割りの弊害がもろに出て、JR東海のEX予約をするとJR東日本の駅で切符を受け取れず(※)、「えきねっと」で予約すると新幹線乗車前にJR東日本の駅で発券が必要といった分かりにくさも手伝って、窓口で切符を買うのが無難、という意識が根付いてしまった人もいるかもしれません。

2022年5月より、東京都区内と横浜市内および川崎駅の「指定席券売機」でも受け取れるようになりました。

JR東としては近隣の関東大手私鉄を見習って、ICカードやオンラインチケットの普及で切符の出番は減るはずだと見込んでいたのでしょうが、大手私鉄などと比べてJRでは紙の切符の出番は多いのが実情。どこかで見込み違いをして「みどりの窓口」の混雑問題が深刻化してしまった格好です。

さすがのJR東も計画を改め、2024年夏には窓口数を削減した駅での復活と、完全に廃止した駅での臨時窓口の設置を始めました。

それでも、首都圏の「みどりの窓口」は大混雑が続いていたように思います。まずは窓口に行かざるを得ない人を減らす、具体的にはSuica未対応エリアをなくすことと、払い戻し等の出札窓口でしかできない手続きを改札窓口でもできるようにするといった改善も必要に思います。

そして、「飴」の部分を拡大する。オンラインならではのお得で便利な魅力ある企画券をもっと発売すべきでしょう。

一方で、通信キャリアが「キャリアショップ」を残しているように、ローカル輸送と都市間輸送の両方を担っているJRの特性を考慮して、一定程度の窓口を維持する必要もありそうです。

今も残る窓口へ行く必要がある手続きについては、またの機会に触れたいと思います。


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