歯を見れば、その人の生活がわかる(学校歯科検診の話)
歯科検診で、毎年感じていたことがあります。
口の中を見ると、その子の生活がなんとなく見えてしまう、ということです。

小学校の歯科検診では、乳歯と永久歯が混ざる時期で、
ただでさえ口腔環境は不安定です。
その中で、きれいにケアされている子もいれば、
少し気になる状態の子もいる。
検診後に保健の先生とのお話から、
子どもの衣服や身だしなみ、食事の様子と、
口の中の状態が、なんとなく重なって見えることがありました。
当時は「やっぱり家庭環境なのかな」と、
どこかで単純に考えていた部分もあったと思います。

実際に、ブラッシング指導として、
歯ブラシを持ってきてもらい、個別に声をかけることもありました。
あれも一つの“介入”だったと思います。
ただ、その取り組みができた背景には、
保健の先生の存在が大きかったように思います。

「このままでいいのか」と考え、
改善しようと動いてくれる人がいたからこそ、
あの場での関わりが実現していました。
すべての学校や現場で、同じようにできるわけではない。
だからこそ、あの経験はとても大きかったと感じています。
その後、別の歯科医院で高校の検診に行く機会がありました。

いわゆる進学校と呼ばれる学校で、
口腔内は全体的に整っている子が多く、
検診もとてもスムーズでした。
ここでもやはり、「差」は存在していました。
でも、今振り返ると、あの頃の自分は
少し単純に考えすぎていたのかもしれません。
そんな私も結婚して、子どもを育てるようになり、
考え方は大きく変わりました。

「虫歯は作りたくない」と思って、
できることは一生懸命やっていました。
食べ物に気をつけたり、タイミングを考えたり、
いわゆる“正しいこと”をやろうとしていました。

でも現実は、そんなにうまくいきませんでした。
家族に預けている間に、
知らないうちに箸を共有していたり、
食べ物の与え方が変わっていたり。
当時の私は、それを強く言うことができませんでした。

子ども自身も、思い通りには動いてくれません。
歯磨きを嫌がる。
暴れる。
泣く。
毎日が、理想とはほど遠いものでした。

二人目になると、さらに余裕はなくなり、
「全部完璧にやるのは無理だ」と、どこかで手放した部分もあります。
歯科衛生士としては“正しくない”選択だったかもしれません。
それでも、あの時の自分には、あれが精一杯でした。
そして今なら思います。
口の中に生活は出る。
それは確かにそうです。
でも、それは「努力が足りないから」ではない。
生活には、それぞれ事情がある。
余裕がある日もあれば、
どうしても手が回らない日もある。
だから今は、
「ちゃんと磨こうとしているだけで、十分すごい」
そう思っています。
昔の自分が一生懸命に伝えていた“正しさ”も、間違いではない。
でも、それだけでは届かない現実もある。
その両方を知った今だからこそ、
見えるものがある気がしています。
正直、こういうこと書くの、ちょっと怖いです。
でも、これが今の自分の本音です。

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