薬の変化は、本人より周りが先に気づくことがある
昔、訪問歯科診療で伺った先で、気になる場面がありました。
総入れ歯の方で、上の入れ歯だけなら問題ない。
でも、下の入れ歯を入れると、舌を出したり引っ込めたりする動きが出て、入れ歯が外れてしまう。

施設の職員さんも困っていました。
「入れ歯が飛び出してしまうんです」
「どうしたらいいでしょうか」
私も歯科医師も、精神科の専門ではありません。
だから断定はできません。
ただ、飲んでいる薬や動きを見ながら、
「脳や薬の影響かもしれないね」
と話した記憶があります。

食事中は、その動きがあまり出ない。
何かに集中している時は、少し落ち着くこともある。
そこで、普段は上の入れ歯だけにし、食事中や職員さんが対応できる時だけ下の入れ歯も使う、という話になりました。

原因を決めつけず、生活の中で困りごとを減らす方法を探す。
歯科診療としては、決してそれが正しかったとは言えませんが、
今思うと、とても大事な視点だったのかなと思います。

別の場面でも、似た経験がありました。

身近な人が薬を調整していた時期、身体が落ち着かず、じっとしているのもつらそうでした。
本人も苦しそうでしたが、周りもどうしていいか分からない。
声をかける。
背中をさする。
そばにいる。

できることは限られていました。
その後、薬が合って落ち着いた時期もありました。
でも今度は、本人が気づいていない身体の動きが見えることもありました。
本人は気づかない。
でも周りは気づく。

薬の影響なのか、体調なのか、疲れなのか。
専門家でなければ判断はできません。
でも、「いつもと違う」と気づくことはできます。
そして最近、今度は自分がその立場になりました。
薬を調整して、気持ちは少し楽になった。
でも、身体がふわふわする。
手足に力が入りにくい。
歩きはじめに足がカクンとなる。
玄関で転ぶ。

自分では、
「気をつければ歩ける」
と思っていました。
でも実際は転びました。

病院では看護師さんに介助してもらいました。
申し訳なさと恥ずかしさで居た堪れなかったです。
でも、それは恥ではなく、安全のためだったのだと思います。

薬は、合えば助けになります。
苦しさを和らげてくれることもあります。
でも、効くからこそ身体に変化が出ることもある。
眠気、ふらつき、脱力感、いつもと違う動き。
本人は意外と気づきにくい。

だからこそ、家族や支援者、医師、薬剤師に伝えることが大事なのだと思いました。
「薬を飲んだら楽になりました」
だけではなく、
「楽になったけれど、ふらつきました」
「歩きはじめに力が入りにくいです」
「転びました」
「以前も別の薬でふらついたことがあります」
そうした情報も、治療には必要なのだと思います。
私は診断する立場ではありません。
専門外のことを決めつけるつもりもありません。
ただ、そばで見てきた人として。
そして今は、支えられる側になった人として。

「いつもと違う」を気のせいにしないこと。
「本人が大丈夫と言っているから大丈夫」と決めつけないこと。
困った時は記録し、医師や薬剤師に伝えること。
それは、思っている以上に大事なのかもしれません。

薬の変化は、本人より周りが先に気づくことがある。
そして本人も、あとから気づくことがある。
だからこそ、責めずに観察し、記録し、共有する。
それが、支える側にも、支えられる側にも必要なのだと思います。
#CoinBridge (コインブリッジ)
構造を言語化し、現場と制度をつなぐ
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費や将来の居場所カフェ運営に使わせていただきます。