#010 大手と中小で学べることの違い
大手ゼネコンと中小ゼネコンでは得られるスキル・経験に大きな違いがあります。
それは組織構造とプロジェクト規模が根本的に異なるためです。
本日は、両方を経験している私だからこそ、それぞれの環境で「学べること」を整理してみました。
本稿が、キャリア形成を考えるうえでのヒントになれば幸いです。
■大手ゼネコン(スーパーゼネコン・準大手)
大手ゼネコンおよび準大手ゼネコンは、総じてプロジェクト規模が非常に大きいのが特徴です。
大規模プロジェクト特有の予算管理に加え、数千人規模の作業員が動く現場での工程管理・図面管理・安全管理などを学ぶことができます。
また、現場は分業制が徹底されています。事務・工務・設計・設備・建築工事・施工図などの役割が細分化されているため、特定領域における高度な専門知識を習得しやすい環境です。
さらに、研究開発費が潤沢であることから、最新技術に触れる機会も豊富です。建設ロボット、生成AI、カーボンニュートラル素材、さらには高度なBIM活用など、業界最先端の技術に携わることができます。
発注者も大手であることが多く、社会的に求められる品質・安全基準は非常に高い水準にあります。そのため、厳格な社内検査や安全基準を通じて、業界最高水準の「品質管理の型」を身につけることができます。
また、組織が大きい分、情報共有の機会も必然的に多くなります。報告・連絡・相談を徹底する文化の中で、会議体ごとに自らの考えを言語化し、共有する能力が養われます。加えて、他者に業務を依頼する機会も多いため、業務推進や管理におけるマネジメント能力も向上します。
結果として、巨大プロジェクトを動かすための「総合的なマネジメント能力」を高めやすい環境といえます。
■中小ゼネコン
中小ゼネコンでは、少人数の技術者で現場を統括するため、「総合的な現場力」が身につきやすいのが特徴です。
プロジェクト規模が小さい分、分業が難しく、施工管理技士が積算・見積・契約・現場管理・近隣対応・引き渡しまでを一貫して担うケースが多くなります。そのため、建物完成までの全工程を網羅的に学ぶことができます。
また、住宅、店舗改修、公共土木など多様な案件を経験できる点も魅力です。比較的短期間で異なる種類の現場を経験できるため、場数を踏むスピードが速くなります。
さらに、一定の経験を積むとコスト管理を任されることも多く、「どのように利益を出すか」という経営に近い視点も養われます。
中小はとにかく場数・経験の量が桁違いです。総合力を早期に身に着けるには、中小が高めやすい環境と言えます。
■比較まとめ
・主な学び
大手:組織マネジメントと最先端技術
中小:即戦力となる現場力
・スキルの幅
大手:分野ごとの深い専門知識・技術
中小:建築全般にわたる汎用性の高い知識・技術
・ICT・BIMなどのツール
大手:導入が進み、教育環境も充実
中小:汎用ツール中心
・意思決定
大手:組織的な意思決定プロセス
中小:責任者としての迅速な判断
■キャリア形成の視点
「大きな仕組みを作りたい」「最先端技術を極めたい」と考えるのであれば、大手ゼネコンでの経験は大きな武器になります。
たとえば、伝統技術をBIMで解析するような構造的アプローチは、研究開発リソースが豊富な大手だからこそ深く追求できる側面があります。
一方で、プロジェクト規模が大きい分、経験できる案件数は限られます。トータルスキルを高めるためには、限られた機会を最大限に活用する意識が重要です。
それでも、実感として大手ゼネコンの所長クラスは、マネジメントだけでなく高い現場力も兼ね備えています。
中小と比較した場合に限られた場数ですが、おそらく、その少ない機会をすごく大切にされているのだと推測します。
対して中小ゼネコンでは、「どこでも通用する現場力」が最大の強みになります。
この能力を身につけることでキャリアの自由度が高まり、特定の組織に依存しない働き方も可能になります。
ここでは技術をあえて現場力と仮定しますが、現場力が高い人間は引く手あまたなので、こうなると食べることに困りません。
また、「将来的に独立・経営を目指す」のであれば、川上から川下まで一貫して経験できる中小ゼネコンでの実務は大きな財産となるでしょう。
ただし、プロジェクト規模が小さい分、大人数を動かすマネジメント能力や組織運営の経験は得にくい傾向があります。この点については、外部環境を活用するなど、意識的に補う必要があります。
施工管理的現場力は中小に5~10年いれば十分に身に付きますが、マネジメントなどを含めた総合的な人間力は、生涯をかけて磨く部分です。人間力は、大きな組織で多くの人と関わりながら働く方が身に付きやすいです。
どちらが優れているかという話ではありません。
重要なのは、「自分が何を得たいか」です。
自分にとって何が重要で幸せか、ここを主軸に考えていく。
多くの方は、今の幸せと5年後~10年後の幸せは、当然違っているでしょう。そういったことも念頭に置きながらキャリアについて考えるといいかもしれません。
本稿が、キャリア形成や就職・転職を考える方の一助となれば幸いです。
