コメダを推して、はや10年。~コメダオタク、10年間の軌跡~
あなたの推しは誰ですか?私はコメダ珈琲店。
コメダ珈琲店とは、株式会社コメダホールディングスがフランチャイズを中心に全国展開する、喫茶店チェーンである。

木とレンガの内装、ベロアの赤いソファ、そしてボリュームたっぷりのメニュー。ゆったりとしたあの空間で、ほっと一息ついた方も多いことだろう。
コメダブランドの店舗は他にもあり、和風甘味喫茶の「おかげ庵」や、おむすび専門店の「米屋の太郎」など、多様な店を手掛けている。

そんなコメダの店舗、別に行かなくても日常生活は送れる。一生のうち一度だって足を運ばなくとも、それで困ることは何もない。しかし、私の推しがコメダである以上、私は日常生活にコメダを組み込み、コメダに通うことで、コメダを推し続けている。
コメダを推して、はや10年。実に人生の3分の1をコメダと共に歩んだことになる。なぜ私はコメダのオタク、コメダオタクと化したのか。そしてコメダ珈琲店にはいかほどの魅力があるのか。それらを紐解いていこう。
コメダは、心安らげる場を提供したいとして「くつろぐ、いちばんいいところ」をモットーに掲げている。私に言わせれば、あそこは「くつろぎの沼」である。一度コメダの良さを知ってしまうと、もう離れられない。さながら底なし沼のように。
コメダの沼レベルを1〜7まで作ってみた。私がどのようにレベルアップしたのか──いや、沼ならダウンと言った方が正しいのかもしれないが──順を追って見ていこう。
注意:人は1分間に400〜600文字を読めると言われていますが、ここから4万字あります。言わば『80分でわかる!コメダ珈琲店とそのオタク総集編』です。もちろんしっかり読んで頂けると最高に嬉しいのですが、是非とも肩の力を抜いてスクロールしまくることをオススメします。
沼レベル1・コメダを知る
私が住む家の近所には、広い田んぼがあった。幼少期は、通りすがりに稲の状態から季節の移ろいを学んだものだ。しかし、所有者の方が辞めたのか、いつしか稲作はされなくなり、がらんとした空き地の状態が続いていた。しばらく経ったある時、その田んぼが埋め立てられているのを発見した。噂によれば、どうやらコメダ珈琲店なるカフェチェーンができるらしい。こんな田舎にカフェができる?またまた、ご冗談を!

ところが噂は本当であり、レンガをあしらった山小屋のような、田舎に似つかわしくないオシャレな建物が出来上がったのだ。工事現場の前を通るたび「全国各地に出店するようなすごいカフェが、こんな近くにできるんだ!」とワクワクしていたものだ。
オープンしたのは2015年の9月。オープンしたての頃は、コメダに行ってみたという近所の人から情報を収集し、どんなものかと様子を窺っていた。すると、どうやら無料でモーニングが食べられるらしいと聞き、おトクなものに目がない両親が、俄然興味を持ち始める。そこで、一番初めは家族でモーニングを食べに行った。あたたかみのある木材ベースの内装。高級感のある赤いベロアのソファ。ドリンクを頼めば無料でついてくるモーニングセット。全てが新鮮で、家族揃って感動した記憶がある。
コメダのモーニングは、パンの種類、トッピング、塗るものを選ぶことができる。パンは、スタンダードな山食パンと、デニッシュ生地の丸いローブパンのどちらか。トッピングは、ゆでたまご、たまごペースト、小倉あんの3択。たまに地域の特産品を扱ったご当地ジャムなどの限定メニューが登場し、4択になることもある。そして塗るものは、バターかいちごジャムのどちらか。私はモーニングを食べる中で色々なパターンを試した。

私が辿り着いた至高の結論は、山食パンにバター多め、たまごペースト。コメダの注文は「バター多め」という要望も聞いてくれるのだ。たまごペーストは、各店舗で手作りしている。色々な店舗を訪れる機会に恵まれる人なら、それぞれのたまごペーストの違いを比べてみても面白いだろう。寒い時期ならドリンクにはコーンスープを頼み、パンをスープに浸しても美味しい。

また、サラダやヨーグルトは別で販売されている。自分だけのモーニングをカスタマイズすれば、朝から贅沢な時間を過ごせること間違いなしだ。
こうしてモーニングを堪能した私だったが、次は他のメニューにも目を向けるようになった。シロノワールに出会ったのは、オープンから1か月後、10月のことだった。

シロノワールとは、温かいふかふかのデニッシュパンに冷たいソフトクリームが載った、コメダの代表的デザートメニューである。このシロノワール、季節ごとに様々な新作が登場する。その美味しさに取り憑かれた私は、新作が発売されるたびにコメダへ行くこととなった。シロノワールを追い始めた当初は、コメダが独自で考えた新作シロノワールがメインだった。春はいちごや抹茶を扱ったもの、秋は栗や芋、カボチャを扱ったものという風に、季節感を持って販売されていた。

しかし、徐々に他企業とのコラボが増え、季節に関係ない新作シロノワールがメインになってきたように思う。コラボの形も様々だ。鬼滅の刃、ちいかわ、すみっコぐらしなど、メニュー注文でおまけが貰えるというキャラクター重視の売り方。

それから、東京ばな奈や桔梗信玄餅などの銘菓をシロノワールで再現するコラボ。ガーナやネスレなどのコラボでは、その会社が誇るチョコレートの力を借りて、チョコレートのシロノワールを販売してきた。

価格改定による値上げで、多様なコラボにお金をかけられる余裕が生まれたのだろうか。コラボではない、オリジナルのシロノワールも美味しいのだが、コラボの方が明らかに力が入っていて、当たりの確率も高い。これからも色々なシロノワールを見せてもらいたいものだ。
新作シロノワールを追うものの、この頃の私は単なる利用客。コメダオタクと自称できるほどコメダにのめり込んでいたわけではない。2015年当時は大学1年生で、自由に使えるお金も少なかった。それに、コメダとは正反対の方向へ通学していたため、近所とはいえあまり足を運ぶ機会はなかった。
だが、休日に気が向いたらコメダへ赴き、デザート以外のフードメニューに挑戦したこともある。
あるテレビ番組にて、芸人の寺門ジモンさんが、天然ウナギを食べに行くという企画があった。ジモンさんに関しては、牛を一頭買いしたというエピソードしか知らなかったため、牛肉ではなくウナギのロケとは意外だった。特に肉へのこだわりが強いものの、幅広い食通であるらしい。そんなジモンさん、お店では3匹相当のウナギを食べる予定とのこと。ウナギ3匹分って結構な量ですよね?そんなに食べるんですか?と尋ねるスタッフに、ジモンさんが返す。
「だって、たくさん食べなきゃ味が分からないでしょ?」
良いウナギの味が分かるようになるには、それだけ良いウナギをたくさん食べる必要があるということだそうだ。なるほど、確かに。
そしてジモンさんが凄いのは、たくさん食べるために「たくさん食べられる胃袋」を作っているところにある。ジモンさんは胃袋を鍛えるために、何十年もの間、毎日のランニングと筋トレを欠かさず行っているのだという。
味わうために食べる。食べるために鍛える。このジモンさんの食への姿勢は、私にとても響いた。というのも、私は少食のくせに、コメダ珈琲店のフードメニューに憧れていたからだ。世間のイメージとしては「コメダ珈琲店=逆写真詐欺」だろう。メニュー写真とは似ても似つかないほど、ボリュームたっぷりの商品が登場することでお馴染み。それを食べるとなると、胃袋のコンディションチェックを行った上で、空き容量に何をどう割り当てるかが重要になってくるのだ。
せっかくコメダに行ったなら、フードメニューとデザートメニューの両方を味わいたいものだ。ところが、コメダのほとんどのフードメニューは、少食人間にとって量が多すぎる。胃袋のコンディションが相当良くないと、最後まで美味しく食べきることができない。デザートの入る余地など最初から存在しないのだ。新作のシロノワールを食べたい場合でも、フードメニューは厳しい。スパゲッティの後でケーキを食べるくらいはいけるかもしれない。しかし、ほぼお腹いっぱいの状態で、ケーキをちゃんと味わえるだろうか?
もっと食べられる身体なら、こんなことを考えずに食べたいものをあれこれ頼めるのだろう。そのような背景から、私はジモンさんの考えと行動に感銘を受けたのである。しかもいっぱい食べたいからではなく、真に美味しいものをきちんと味わうために、そこまでの努力を長年継続するなんて、凄すぎる。これが究極の食通の姿……!
番組を通して、私はジモンさんに深い尊敬の念を抱いたのだった。そう、尊敬。憧れではなく尊敬。運動不足の化身たる私が真似するには、あまりにもハードルが高い。そういうわけで、私は軟弱な胃袋のまま、コメダのフードメニューに挑んだのだった。
その日のランチに選んだのは、エッグサンド。以前、隣の席にいたお兄さんが「コメダではモーニングのトーストを頼んだことない。これが一番美味しいからこれしか食わん」と話していた。そんなに美味しいのかと、ずっと気になっていたのだ。

注文してドキドキしながら待っていると、ボリュームたっぷりのエッグサンドが到着。たまごペーストがギュウギュウに詰まった、はち切れんばかりのサンドイッチが、長方形の皿の中でひしめき合っている。私はパッと見で、サンドイッチが7個か8個あるのだと思っていた。しかし、掴もうとしてよく見ると、食パンの枚数が合わない。なんと、食パンそのものまで挟み込んだ、分厚い巨大サンドイッチが4個あるのだ。これを朝から食らうお兄さんは、きっと鍛え抜かれた胃袋の持ち主だ。
途中で休憩を挟みつつ、1時間半かけて完食。ちなみに朝ご飯は食べていない状態でのランチだ。ゼロからのスタートでこれだけのダメージを与えてくるとは、さすがコメダである。持ち帰りは負けだという変なプライドで何とか乗り切った。
そうか。コメダが長居してもいい方針なのは、少食人間が時間をかけてフードメニューを攻略できるようにする配慮だったのか。たくさん食べられない私は、時間をかけてゆっくりじっくりコメダを味わっていこう。そう思ったのも、この沼レベル1での思い出だ。

ところで、ここまでは「コメダが提供するメニューは写真からかけ離れているほどのボリュームである」という前提で話を進めていた。しかし、コメダはそのインパクトが仇となり「コメダのボリュームは過大評価である」と意見されることもある。どうやら「世間はコメダの量が多いと騒ぎ過ぎだ」と主張する勢力も存在するらしいのだ。
ちなみにコメダの公式の見解としては、そもそも「デカ盛り」を意識しているわけではないという。そのため、そのボリューム感について議論することにすら意味がないと言えよう。しかし、その量がコメダのイメージになっていることは確か。何だかコメダが不条理な誹りを受けているようで、応援する者の立場からすれば、何とかできないものかと思ってしまう。せっかくなので、コメダのメニューのボリュームに関する意見について考えてみよう。
まず「コメダの量は言うほど多くないだろう」というような意見。これは主に、自分はこの量を食べても満足できない、という文脈において出現する。そんな大食いさんならしょうがない。だが、レギュラーサイズのシロノワール、カツパン、バーガー類などは大食いさんでも満足して頂けると思うのだが、どうだろう。

私はカツパンを初めて見た時の衝撃が忘れられない。その名の通り、カツを挟んだパンなのだが、あの直方体のカロリー爆弾はインパクト大だ。サクサクで熱々のカツがとても美味しいので、食べ始めた時はペロリと食べてしまえそうにも思える。ところが半分ほど食べ進めたところで失速するのがお決まり。終盤は苦行と化すのだ。そんな結末が分かっているのに、メニュー表を見たら頼みたくなってしまう。あのカロリーの暴力と美味しさを享受したいという欲求には抗えないのである。
世間で目にする意見として「コメダのボリュームは値段の割にそれほど多くない」というものもある。量の多さは、コスパの良さに結びつけられがち。値段に絡めて考えるのも無理からぬことだ。だが、コメダの場合、量の多さがコスパに直結しているわけではない。むしろ良い値段なのだから、多くて然るべきとも言えよう。コメダ珈琲店とは、サンドイッチ単品が1000円前後するような世界なのだ。そのくらいするなら、2食分賄える量は要求したいというもの。また、コメダは2023年、2024年と二度にわたって値上げをしている。価格に対するお得感は、どうしてもなく下がってしまう。こういった値上げ前後の感覚のズレも「値段の割には……」と考える原因なのかもしれない。
こうして様々な意見を鑑みるに、コメダのボリューム感については、個人の感覚によって賛否が分かれるところなのだろう。だが、量が多いと思う人にも、量が多くないと思う人にも、私は主張したい。コメダの価格は、場所代の面が大きいのだ!
コメダのモットーは、くつろぐ、いちばんいいところ。コメダは飲食物ではなく「くつろぎ」を提供しているのだ。通常の飲食店の場合、注文に応じて飲食物を提供する。食べる間は店に滞在するので、食べるに適したイスとテーブルがある。ところがコメダは、客が自分の時間を過ごすための「時間と空間」を提供しているのだ。コメダは、ゆったりとした空間で、客が思い思いの時間を過ごすという体験を味わうための場所。だから、店内でゆっくりできるように、計算し尽くされた空間が作られている。例えば、コメダを象徴する赤いソファは、長時間座っても疲れないようにふかふかである。飲食店によっては、回転率を重視し、あえて座り心地の悪い木の椅子を配置すると聞いたことがある。それを思うと、コメダが回転率より個々の時間を尊重してくれていることがよく分かる。

また、木材がベースとなった内装も、リラックスできるように計算されたものだ。「木視率」といって、建物の空間にいる人から木材がどのくらいの割合で見えるかを表す指標がある。例えば、全てが木材でできたログハウスの場合、どこを見渡しても木材しか見えない。その場合、木視率は100%と言える。木視率が高ければ高いほどいいのかと言うと、そういうわけでもないらしく、木視率40%くらいが最もリラックスできるとされているようだ。コメダはその木視率に基づいて、内装の設計をしているそう。このように、くつろぎの体験を充実させるために様々な工夫が施されており、さらにそこへ美味しい飲食物が付いてくるのだ。
要は、コメダに求めるべきはコスパではなく、満足感である。近年は何においてもコスパやタイパが重視されがち。コスパは費用対効果。価格の割に量が多くて美味しいレストランはコスパが良い。タイパは時間対効果。動画を倍速で視聴するのはタイパが良い。コメダでくつろぐのは、コスパもタイパも悪い行為だ。コメダのコーヒーは、2025年2月時点で460~700円。1食分を賄えるお金でたった1杯のドリンクを頼むのは、コスパが良いとは言えない。それにタイパの観点からコメダを利用するならば、金銭に直結するような生産的な行動が伴うべきだ。それでも私はコメダでくつろぐ。コメダで過ごす、無駄で贅沢な時間が愛おしいから。安くないお金で、美味しい料理を食べて、時間を浪費する。お金や時間を節約するような、せかせかとした世界から離れられる。それがコメダのくつろぎだと私は思っている。くつろぎの空間、それを彩る食事。値段に見合った体験ができればそれで良い。コメダを訪れるみんなも、思い思いのくつろぎ体験を味わえますように。
沼レベル2・コメダに通う
本格的にコメダにハマったのは、社会人になった2019年。私の仕事は月2回、午前だけの土曜出勤がある。一日の半分を仕事に奪われてしまうのなら、せめてもう半分は有意義に過ごしたい。そんな思いから、働き始めた当初は、仕事終わりにカフェ巡りができないものかとリサーチしていた。しかし、仕事が終わって街を歩けるようになるのは14時過ぎ。個人経営のカフェは、13時半がラストオーダーの店が多かった。14時で一旦閉店して、次は17時に開店する。そのため、意外にもカフェを巡りづらいという事実に直面したのだ。そんな私をあたたかく受け入れてくれたのが、コメダ珈琲店。7時から23時まで休みなく迎えてくれる素晴らしさ。今までは新作シロノワールの様子を見に行くだけだったが、今度は仕事終わりの遅いランチとしてお世話になることに。自由に使えるお金ができたこと、通勤ルートがコメダの前を通ることも影響して、私はコンスタントにコメダへ通う習慣が身についた。

沼レベル1にて、フードメニューに苦戦していた学生時代の私。ところが仕事終わりの空腹状態は、学生時代の朝食抜きなど比べ物にならない。少食の私でも、その空腹を利用して色々なフードメニューにチャレンジすることができた。最も苦戦したのは「ボリュームたっぷり まんぷくプレート」という括りで並んでいる商品たち。通常運転ではボリュームたっぷりを意識していないと言うコメダが、わざわざボリュームたっぷりと宣言するレベルなのだ。例えば、レギュラーサイズのヒレカツプレート。レギュラーサイズという言葉から、既に危険な香りが漂っている。

大きな皿に盛られてやってきたのは、ヒレカツ5個、パン2個。ひとつひとつのヒレカツは、そこまでの大きさではない。ここまでは大丈夫。他が問題なのだ。まず、付け合わせのポテトサラダ。サーティーワンのアイスクリームくらいある。それから、物凄く大きいキュウリ。同じく、物凄く広大なレタス。ウサギにやるエサかと思うレベルだ。そして極め付けは、山盛りのキャベツ!

二郎系ラーメンの上部構造と同じくらいに盛り盛りなのだ。私はまんぷくプレートについてくるこのキャベツを「キャベツ界の二郎」と形容するようになった。まんぷくプレートはヒレカツ以外にもジャーマンやエビフライもあるが、ポテトサラダとデカ野菜、二郎系キャベツは漏れなく付いてくる。野菜を食べられるので健康的なのだろうが、付け合わせの野菜だけでまんぷくになりそうなプレートだ。しかし、多くの人にあの二郎系キャベツを見てほしい。ミニサイズのヒレカツプレートなら、ヒレカツやパンの数も少ないし、少しは野菜も減る。まんぷくプレートの入門編としてちょうどいいかもしれない。途轍もなくお腹が空いている時、ぜひ一度お試しあれ。
コメダへの通い方がエスカレートしたのは、2021年の冬。コメダは「季節のケーキ」と銘打って、年に3回、約4種類のケーキを発売している。

そのオシャレな広告を目にした時、私は「ショコラズベリー」というケーキがとても魅力的に見えた。丸いショコラ生地の上にかかった、真っ赤なフランボワーズピューレ。その鮮やかな赤色に目を奪われたのだ。ショコラズベリー、早く食べてみたい。あのケーキだけは、次の土曜出勤まで待てない。そう思うと我慢できなかった私は、平日の仕事終わり、家族には内緒でコメダへ寄った。晩ご飯が用意されているのに、ケーキを食べたなんてバレてしまってはいけない。念願のショコラズベリーを注文し、ワクワクしながら口に運んだ。正直なところ、感動的な美味しさではなかった。考えてみれば、私はベリーの類がそれほど好きというわけでもなかったのだ。完全に「衝動買い」ならぬ「衝動食い」だった。だが、この経験を通して、私は気づいてしまう。何も休日だけに限らなくていい。平日の仕事終わりでも、コメダに寄るという手があったのだ。こうして平日でも、私は時々コメダへ通うようになった。

そして、半年後の夏。そのシーズンのケーキは、どれも本当に美味しかった。甘酸っぱいオレンジとクリームチーズが爽やかな「口どけオレンジ」。ブルーベリーのクリームが美味しいモンブラン「熊本ベリー」。柑橘の風味がシフォンケーキにたっぷり詰まった「ふ和っと柑橘」。凍ったまま味わうチョコケーキ「氷点下ショコラ」。私はこの夏、4種類全てのケーキを2回以上食べた。ここで遂に、推しメニューのリピートまでも覚えてしまったのだ。
季節のケーキは、全く同じものが再登場することは滅多にない。そのため販売期間中にしっかり味わう必要がある。とはいえ、焦って一度に2つ攻略するのは御法度。空腹からスタートして基準を揃えないと、満腹感で美味しさが阻害され、正確に評価できなくなる可能性がある。発売日から、毎日ひとつずつ攻略していくのだ。その後、気に入ったケーキはリピート。ハマらなかったケーキでも、ネットの口コミを見た状態で味わい直して、シーズンを過ごす。次なる季節のケーキが告知されたら、シーズン切り替わりの合図。最後に食べ納めをして、全てのケーキに別れと感謝を告げるのだ。
攻略、リピート、食べ納め。今や、季節のケーキはワンシーズン3周の周回プレイがデフォルトとなっている。4種類のケーキを3周、3シーズン。最低でも、年に36個のケーキをコメダで食べている計算だ。そう考えると、摂取する糖質や脂質は……いや、これ以上は考えない方がいい。
最近では「仕事のストレスやばい!こんなんコメダが無けりゃやってらんねえよ!」という意味不明な理由付けを行い、新メニューが出ていなくても週2でコメダに通っている。新商品が多く発売されたり、限定メニューにハマったりした際には、週7で通うこともある。
幸か不幸か、私の出勤時間までにはコメダが開かない。もしも出勤前に間に合っていたならば、私は毎朝コメダのモーニングに通い、仕事終わりにも寄り、コメダの化け物として倍以上の出費をしていたことだろう。
ありがとう、コメダ。私をまだ人間でいさせてくれて。
沼レベル3・コメダのグッズを買う
コメダに通うだけなら、まだオタクとは言えない。毎日モーニングを利用する人だってたくさんいるはずだ。でも、グッズを買っているとなれば、だいぶオタクとしての印象が滲み出てくるのではないだろうか。

初めて買ったグッズは、ケンエレファントという会社のミニチュア。コメダのロゴ入りカップやシロノワールなど、定番メニューとその食器を忠実に再現したミニチュアだ。百均で収納ボックスを買い、並べて撮影会を楽しんでいた。

しばらく経つと、ミニチュアを彩る背景や小物が欲しくなった。じゃあ、作ろう。そう思った私は、再び百均へ。赤いソファはスポンジにフェルトを巻いて。テーブルや内装は木やレンガの画像をコピーして、切り抜いて貼り付ける。

そうこうしていたら今度はリーメントという会社からミニチュアが出た。なんとソファやテーブルのミニチュア付きで。もちろん私の手作りとは比べ物にならないハイクオリティである。この会社は親切なもので、「オトナ買い」という名の、全種類を一気に揃えられるセットを販売してくれている。もちろんオトナ買い即決だった。

ミニチュア以外には、2023年の一番くじにも参戦。コメダのグッズが当たるくじである。喫茶店のグッズって何だろうと思われるかもしれないが、コメダのグッズ自体はさほど珍しいものではない。コメダ珈琲の公式オンラインショップでは、様々な商品を展開しているからだ。赤いソファ生地をモチーフにしたティッシュケースやスリッパなどの雑貨、定番メニューのイラストを使用したキーホルダーや文房具など。店舗で実際に使用されているコーヒーカップやグラスさえも購入できる。コメダオタクとしての自覚が芽生えてきたところなので、私とて公式グッズを買いたい気持ちはある。しかし、普段使いできるコメダグッズを買った場合、それを身につけてコメダへ行くのか?それは恥ずかしくてできない。店員さんには自己顕示欲が強い奴だと思われそう。それに、家に置いても邪魔になるか、タンスの肥やしになるだけでは?さらに、手を出したが最後、散財の一途を辿り、後戻りできない気がする……!
色々な思いに抑えられていた中での、一番くじの出現。オタクはガチャに弱い。ランダム要素の付与により、何とか抑えていたグッズへの欲求が一気に爆発。ものの見事に購買欲をそそられたというわけだ。
オンライン販売は店頭販売の1か月後なので、実際の店舗でいち早く入手したいところ。対象は全国の一部のファミリーマートだという。私は田舎住まいだが、それでもファミリーマートは多く存在する。あそこなら仕事帰りに寄れるし、向こうでも自転車で行けるな、などと考えていた。ところが、状況は大きく変わる。やがて告知された、コメダ一番くじの取り扱い店舗。なんと、町内で対象のファミリーマートはたったの2か所。しかも、どちらも車で20分以上ではないか!ゴールデンペーパードライバーの私、これには激しく憤慨。何とかバスで行けないか調べていたら、両親が買い物のついでに寄ろうかと申し出てくれた。これはお言葉に甘えるしかない。かくして、コメダオタクの仁義なき戦いが幕を開けるのだった。
仕事が終わり、昼過ぎからの参戦。父の運転で到着したのは、ド田舎のファミリーマート。町の中心地から車を走らせ、山をひとつ、丘をふたつ越えたところに存在する。くじが販売されてから4時間以上。ド田舎とはいえ、販売している店が少ないのだから、既に完売している可能性もある。まずはくじが残っていることを祈りながら入店。
入ってすぐ、景品たちが目に飛び込んだ。良かった、いっぱいある!田舎最高!まだどの賞も残っているではないか。棚の上段には、シロノワールを模した大きなぬいぐるみが2つ鎮座していた。これが最高のA賞である。A賞なんてどうせ当たらないのだから、見る必要もないのだが。
店頭でくじを買うのは初めて。実物を目の前に決して安くない金額を支払うのは、ソーシャルゲームの課金にはない重みと緊張を感じた。予算はくじ10回分と決めていたが、一気に10回買う勇気は出なかった。店員さんに購入券を渡し、5回でお願いしてみる。登場した箱には20枚以上のくじが。一番くじにはラストワン賞といって、くじの最後を引いたら貰える賞がある。今回のラストワン賞は、クリームソーダを模した、机に置ける照明である。ブーツ型のグラスに、メロンソーダの緑色の光が灯るらしい。残りが10枚ちょっとなら、予算オーバーでもラストワン賞を狙おうかと思っていたが、20枚以上はさすがに買えない。ラストワン賞は諦め、5回購入で終わらせることにした。
隣で母が見守る中、運命のくじ開封。1枚目、D賞のジッパーバッグ。定番メニューのイラストがプリントされてある。あまり気にしていなかった賞だが、悪くないスタートだ。2枚目、E賞のハンドタオル。3枚目、F賞のラバー雑貨。これらは目当てのデザインが存在するので、まずは確実に1回ずつ当たって良かった。4枚目、またD賞。ジッパーバッグ2個かぁ…。
そんなことを思いながら、ラスト5枚目……A賞。ん?A賞って、あのA賞!?
シロノワールのもっちりぬいぐるみ!
「えぇーっ!要らんって言っとったのにぃ!」と嬉しい悲鳴を上げ、母と一緒に喜んだ。やはりこの世界に物欲センサーは実在する。たとえ目当てではないとしても、一等賞が当たるのはとても嬉しいものだ。良かった、母がいてくれて。1人で小躍りする不審者になるところだった。バイトらしき女の子が、ニコニコで景品の棚へ案内してくれた。ここで各賞の種類を選ぶのだ。E賞のハンドタオルは、赤色のソファ風デザイン。F賞のラバー雑貨も、コースターを迷わず取った。この2つが、絶対欲しかったお目当てのグッズだ。2回当たったD賞のジッパーバッグは、オシャレなもの1つ、実用的なもの1つで選んだ。
そして最後。上段に待つ、2つの大きなぬいぐるみシロノワール。その片方を手に取り、意気揚々と店舗を後にしたのだった。
いやぁ、5回でA賞当たることある?これがビギナーズラックってやつ?ホクホクしていると、運転手の父から「どうする?次行く?」という悪魔の問いかけが。もう満足だけどなぁ、でもなぁ……。人間とは罪な生き物だ。思いがけず良い賞が当たると、他の賞も当てたいという欲が湧いてくる。こういうのは、欲をかいてしまったが運の尽き。だが、せっかくなので町内のもうひとつの店舗も行ってみることに。そっちでは欲しい景品がなくなっている可能性だってある。何が残っているか確かめ、その上でくじを引くか決めればいいだろう。
田園風景を横目に進んで着いたのは、もっとド田舎のファミリーマート。周辺に住宅地など存在しない。山々に囲まれた、実に自然豊かな店舗だ。入店すると、こちらもすぐに景品の棚が見えた。しかも未入手のB賞とC賞が2つずつ残っているではないか。残りの5回分をここで買い、予定していた10回分の予算を使い切ることにした。箱を見ると、前の店舗よりくじが多い。ここでもラストワン賞は無理だ。でもB賞かC賞が引けたらそれで良し。
母が見守る中、運命の開封・パート2。1枚目、F賞のラバー雑貨。既に欲しかったラバーコースターはゲットしているが、次に気になっていたのがラバータイ。かわいいグッズをさらに獲得できるので、良しとしよう。2枚目、E賞のハンドタオル。タオルは何枚あっても困らないので、こちらもOK。3枚目、再びF賞のラバー雑貨。F賞はこれで3つ目。まあ一番多い賞なんだから、順当な結果なのだが。4枚目、ここでB賞のタオルケット!最後の5枚目でC賞が来たら、ラストワン賞以外は当たったことになる。
いや、そんな都合よく来るわけないよなぁ〜。じわじわと期待しながら、最後の5枚目を開く。飛び込んだ文字は、なんとC賞!これでC賞の冷感マットも獲得だ。「凄い!揃ったじゃん!」と、母と共に喜んだ。重ね重ね、隣に母がいて良かった。1人でニヤつく危険人物になるところだった。こうして10個の景品を車に載せ、ご機嫌で帰ったのだった。

コメダ一番くじ10連。1回680円、総額6800円である。大きな出費だが、効率よく色々な景品を手に入れられたので、大勝利と言っていいだろう。これがビギナーズラックというものか。実は翌年に一番くじの第2弾が登場したのだが、私は参加しなかった。ビギナーズラックが切れて、ギャンブルの沼にハマるのが恐ろしかったからだ。私は意地っ張りなので、A賞が当たるまで辞められないとか、そういう縛りを自分で設けて自分で苦しむタチなのだ。働き始めて収入があるとはいえ、極めて薄給。破産は御免である。

今でも私の部屋で、シロノワールの大きなぬいぐるみが棚の上を占拠している。仕事が苦しくても「帰ったらシロノワールのぬいぐるみちゃんが癒やしてくれる……!」と思って耐えている。そう、これはきっと、コメダが我に与えたもうた褒美なのだ。仕事で毎日上司の八つ当たりを受けている姿を、コメダの神はご覧になっていたに違いない。お仕事頑張ってて良かった!
今まではコメダを愛する女と自称していたが、今度からコメダを愛し、コメダに愛された女と名乗っていいだろうか。いや、くじ運が一度良かった程度で推しに愛されるなんて傲慢だろう。調子に乗りすぎ。実際の私は、どこにでもいる一介のコメダオタクでしかない。でもそれで十分だ。ありがとう、コメダ。ありがとう、一番くじ。

ミニチュアに、一番くじ。これらはその時だけの企画だが、毎年コメダのグッズをゲットできる機会もある。それが、年末年始の福袋だ。
コメダの福袋は、毎年大まかな構成が決まっている。福袋の袋に当たる部分は、オリジナルデザインの手提げバッグ。そして福袋を買った店舗で使えるコーヒーチケット1冊と、指定のフードメニューに使えるスナックチケット1冊。それからドリップコーヒーやお菓子などのコメダ製品がいくつか。ここまでは固定だが、目玉商品は毎年変わる。ブランケットやポーチなどが多いが、他社コラボにより食器や美容品だったこともある。

最初にコメダの福袋を購入したのは2020年。お試しで母と割り勘して買った。その時の手提げとエコバッグが便利で、未だに重宝している。翌年以降は目ぼしいグッズが入っておらず、購入には至らなかった。

しかし2024年、ついに欲しい目玉商品が登場。赤いソファ生地を使ったポーチである。さらに福袋のトートバッグも赤いソファ生地。赤いポーチと赤いトートバッグが欲しくて、購入に踏み切った。だが、赤いトートバッグは持ち歩く勇気が出ず、結局引き出しにしまいっぱなしだ。ポーチの方は、化粧品を入れて持ち歩くのに重宝している。

2025年も福袋を購入。あまり目ぼしいグッズはなかったのだが、バッグが例年より大きく、実用的で助かっている。それから「サステナブルなココア」というコメダのオリジナル商品が意外にも刺さった。この商品は無調整ココアなので、自分で砂糖や牛乳を入れて温めなければならない。最初は面倒だと敬遠していたのだが、美味しい配合を発見してからは、休日にココア作りを楽しむようになった。

グッズ以外にも、手が届く範囲でのコラボ商品・監修飲料などは購入している。特に大規模だったのが、森永製菓とのコラボ。コメダは2023年と2024年の二度に渡り、森永製菓と大きなコラボをしている。シロノワール味のサンドクッキー、クロネージュ味の小枝など、メニューの再現にこだわった素晴らしいお菓子を味わうことができた。特に2回目のコラボ商品はどれも美味しくて、たくさん買ってしまった。最も好きだったのは、アイスココア味のチョコボール。香りが本当に上品なココアで、くちばし部分から内部の香りを嗅ぐくらいハマっていた。

たまに、スーパーやコンビニでコメダ監修の商品を目撃したという情報が私の元へ寄せられる。出会った際にはぜひ購入して、感想を聞かせてもらいたいものだ。
こういったグッズ・商品の購入に共通していること。それは、購入を通してコメダを応援したいという思いだ。その時、こう思った。私はコメダを応援したいと思っている。応援したいという気持ちで出費するのは、ある種の「投げ銭」に当たるのではないだろうか?
YouTubeの配信者に投げ銭をしても、見返りは貰えない。せいぜい自分の名前やメッセージを読んでくれるくらいだ。おまけに投じた金額の何割かはGoogleに取られてしまうので、全額が相手に届く仕組みではない。ところが、年末にコメダへ投げ銭をすると、なんと福袋が貰えるのだ。しかも食品売り場で投げ銭をすると、コメダの飲料が貰えることだってある。すごい!なんと割のいい投げ銭なんだ!
ただの金品の交換なのに、奇妙な持論を展開していると思われただろう。これはある種の自衛だ。こうやって出費を正当化しないと、自分の異常性に気づいてしまうから。己の行動が無駄遣いではなく応援だと信じて、私は今年も福袋を買うことだろう。
沼レベル4・コメダの聖地巡礼へ行く
コメダを知り、コメダに通い、コメダのグッズを買う。そんなコメダの沼レベリングが順調に進んでいる最中の2022年10月。彼氏にフラれた。「俺とコメダ、どっちが大事なんだよ!?」と言われたわけではない。そうだったら面白かったのだが。私たちには心理的にも物理的にも距離があって、互いにそれを埋める努力をしなかった。もしくはその努力をするに値しない人間だと評価し、評価されていたのだと思う。今では記憶がなさすぎて、いつから、何年間付き合っていたのかも定かでない。なのに、なぜフラれた年月だけは分かるのかというと、その時期に販売されていたシロノワールが、2022年秋の「オレンジと小倉あんのシロノワール」だったからである。あの時のオレンジソースは苦かった。

今では無事に記憶を消去できているが、当時は本当に病んだ。その上、仕事にも悩まされていた。上司との関係が悪く、閉鎖的な職場では致命的な状況にあったのだ。ストレスチェックに引っかかったのでカウンセラーに相談したが、想定通りのやり取りをこなすだけで気が晴れない。そんな辛い時期に切り出された、突然の別れだった。
もしも私が死んだら、彼の心にダメージを与えられるだろうか。別に私の死を悲しんでくれなくたっていい。別れたことを後悔しなくたっていい。ただ、後味の悪い思いを生涯引きずってくれたらそれでいい。そんな思いから、本気で死のうと計画を立てた。薬物濫用による死亡事例を調べ、ドラッグストアを回って薬を買い集めた。死後なるべく家族に迷惑をかけないようにと色々な会員サービスをリストアップして、解約を始めた。だが、メールではなく書類が必要だったり、パスワードが分からず再設定をしたり。そうこうしている間に色々と面倒になってきて、死ぬのは一旦保留することにした。
ちなみにドラッグストアの薬で健康被害を起こした場合、死ぬよりも障害が残る確率の方が高い。他にも色々と自死の方法を調べたが、なるべく多くの人に迷惑をかけず、ひっそりと死ぬ方法は、たったひとつだけ。病院や施設など、専門のスタッフの下で看取られて、医師の死亡判断を受け、然るべき手続きをしてもらうことだ。つまり、天寿を全うする。これが唯一の「正式に」死ぬ方法であるというわけだ。自然界の理に反した死に方は、大勢に迷惑をかけてしまう。
こうして自死を行動の選択から外したものの、依然として病みステータスは回復しないまま。病んでいる時、どこへ行けばいいのだろうと考えた。
そうだ、東尋坊へ行こう。
東尋坊と言えば、その昔は自殺の名所。鬱々とした気分で崖を歩き、そこから飛び降りたであろう先人に思いを馳せるのも悪くない。福井県か。ついでに大阪や名古屋にも行けそうだな。そう思った私は、人生初のひとり旅を計画し始めた。お酒が好きな彼氏に合わせて居酒屋に行かなくたっていい。朝が苦手な彼氏に遠慮して朝食を諦めなくたっていい。そう、ひとりならどこへだって行ける。何をしたっていい。私は自由だ。
もうお気づきかもしれないが、この時点で傷心はどこへやら。私はひとり旅が楽しみで仕方がなくなっていた。
そうして迎えたひとり旅。新幹線で田舎を脱出すると、まずは一杯のラーメンを食べるためだけに大阪で下車。

座銀というお店の鶏そばが、個人的な世界一なのだ。それから再び新幹線に乗り、名古屋へ。こんなもったいない時間とお金の使い方、友達との旅行じゃ絶対にできない。

さて、名古屋といえば、コメダが生まれた地。ここで狙う聖地は、コメダ珈琲店の本店。さらにその向かいには、コメダの和風甘味喫茶「おかげ庵」の本店もある。コメダブランド二大巨頭の本店がある土地。これはコメダの聖地と言っていいだろう。
コメダ珈琲店の本店では、スタンダードなモーニングでほっと一息。おかげ庵の本店では、おにぎりセットを楽しんだ。

それから特急列車に乗って、福井へ。
長い北陸トンネルを抜けた瞬間、パッと雪国の景色が広がる。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」は、あまりにも名文。特急列車で芦原温泉駅に着いた後は、バスで東尋坊へ。

想像以上に壮大な岩壁が一面に広がっていて、感動。そして、ロープとか安全柵とか、そういった守りが一切ない。それなのに、周りの観光客たちは崖の先へとガン攻めしており、その姿を見るのも怖かった。
東尋坊散策は、階段の上り下りと山登りの複合みたいなものだ。一通り歩いて疲れたので、帰りのバスまで休憩タイム。転ばないよう慎重に歩いたので、凍った路面を歩くのと同じような筋肉の使い方をした気がする。明日は筋肉痛だろう。そんなことを思いながら、無の時間を過ごす。同行者に遠慮する必要がないから、自分のタイミングでボーッとしたっていいのだ。
あまり大きな声で言えることではないが、東尋坊は自殺願望を抱く人には「オススメ」だ。これは決して自殺に適しているという意味ではない。危険な場所に身を晒すことで、死に対して近い状態で向き合えるからだ。バンジージャンプと似たような恐怖かもしれないが、東尋坊には安全装置すら存在しないのが大きな違い。刑事ドラマの追い詰められた犯人ばりに、崖の先に身を乗り出してごらん。ジェットコースターやお化け屋敷とは違う、這い寄るような「死への恐怖」を味わうことができる。どうしてこれ以上は崖先を攻める勇気が出ないのか?そこで初めて己の生存欲求を感じ、自分の天寿はまだ先であると悟ることができよう。

無事にひとり旅を終えた私は、次なる聖地に狙いを定める。それが「オールドコメダ」であった。オールドコメダとは、コメダ珈琲店の1号店から10号店までを指す名称だ。私が初めてコメダ珈琲店そのものを知った時、まだ1号店は存在していた。1号店の姿は、メニュー表の表紙裏に載っている。今のチェーン店とは異なる、レトロな店構え。いつか名古屋に行く機会があれば、寄ってみても面白いだろうな、くらいに思っていた。
しかし、2014年3月。1号店は閉店を迎えた。ああ、私の判断の何と遅いこと!私の近所にコメダができたのは2015年9月。コメダへの愛が高まるよりも先に閉店してしまったのだ。残るオールドコメダは、高岳店と今池店。この2店も、私がのんびりしていたら閉店・改装してしまうかもしれない。オールドコメダについて調べていると、後悔と危機感は募る一方。
同じ頃、世間では「推し」という言葉がピックアップされるように。推しは推せるうちに推せ。この言葉が私を名古屋へと駆り立てた。失くなってしまったら、もう取り返しがつかない。早く行かねば……!
名古屋市民ならば、聖地巡礼のハードルは低い。だが私は広島の、しかも新幹線へのアクセスが悪い田舎の人間。遠征費用も労力もかかるのだ。でも、コメダのためなら旅費の捻出だって面倒な予約手配だって厭わない。
2023年6月。最初のひとり旅から4か月後。私は再び新幹線に乗り、古きコメダの聖地巡礼を敢行したのだった。
まずはコメダ珈琲店・高岳店について。高岳店は、コメダの2号店。現存する中で最古のコメダ珈琲店である。土日休みで、7時から15時までしかやっていない。さらに、臨時休業も多い。ホームページには詳細な休業情報があるため、行きたい人は要チェックだ。
そんな高岳店に行くべく、5時40分に起床。ホテルを出て朝日を浴びながら向かうと、木製の古めかしい店構えが見えてくる。

足を踏み入れると、まず「20歳以上ですか?」という確認が。喫煙可の店舗であるため確認が入るのだと口コミで見たことがあった。喫煙できる証拠に、灰皿が置かれている。私はタバコが苦手なので、臭いに耐えられるかという懸念があった。タバコを吸ってる人はいたが、そんなに臭いがしなかったので良かった。
お店は、キッチンのお父さんとテキパキしたお母さんが切り盛りなさっているようだった。スチールワゴンを押して運んだり片付けたり。いいな、そのシステム。
目を惹くのは木製のメニュー看板。それからアンティークのようなオシャレなライト。天井との接続部にも装飾が施されていて好きだった。

コメダの店舗の照明も、デザインが凝っている。もしかしたらその源流となる存在なのかもしれない。
注文するものは既に決めていた。ブレンドコーヒーとモーニング。そしてここにしかない商品を何かひとつ。メニューを眺めていると、デザートにプリンという字が。プリンソフトなるメニューを発見したのだ。一般的なコメダには存在しないので、これにしよう。商品が運ばれてくるのを待っている間にも、ドンドコお客さんがやってくる。私の後に3組入ったが、もうそれで満席だった。お母さんの「ごめんなさいねー」が4回は聞こえた。5時40分に起きた甲斐があったというものだ。
付近のお客さんの会話からも、オールドコメダという単語がチラッと聞こえた。やはりここが特別なコメダであると知って来ている人が多いようだった。かつてのオールドコメダはどこもこんな雰囲気だったのだろうか。惜しい店たちをなくしたものだ。

まずやってきたのはブレンドコーヒー。コメダのロゴや店名など、何のプリントもされていない、シンプルな白いカップ。使い込まれた感じはあるものの、汚れはひとつも付いていない。今までに見たどのコメダのカップとも違う。そのお味は、初手から苦味強め。しかし、酸味が苦手な私にとってはありがたい。ミルクが要らないくらい、最後まで飲みやすかった。私がコメダブレンドを飲む際は、途中で酸味がキツくなって、ミルクを投入している。この現象が起きないというのは初めてだった。

モーニングの山食パンは厚切りではないが、フワフワのモチモチ。そして何よりたまごペーストが違う。普通のコメダより粒が細かいというか、もっと潰されているというか。もう一段階ペーストに近い滑らかさ。こちらも山食パンによく馴染んで美味しかった。

デザートはプリンソフト。ソフトクリームの味自体は、一般的なコメダの味と同じだった。プリンは昔ながらのしっかりとしたタイプ。しかもちゃんと高さがある。底には焼きプリンのような、茶色い美味しい膜が付いている。朝からモーニングにデザートと、贅沢な時間を過ごさせてもらった。

さて、お次はコメダ珈琲店・今池店。地下鉄の今池駅から歩くと、街角にレトロな外観が。ドキドキしながら、いざ入店。

店内で真っ先に目を惹くのは、大きな木彫りのパーテーション。穴だらけのスカスカお洒落パーテーションなのに、座っている人の顔はちょうど見えない。意外と計算されたシロモノなのかもしれない。コメダといえば赤いソファだが、こちらはソファというより椅子。座面だけが見慣れた縦縞レッドだった。テーブルはもっと独特で、雲みたいにかわいい形をしていた。脚もアンティーク家具っぽい凝ったデザイン。

見上げると、暗い色調の天井、渋い色の梁、黒いエアコン。照明も歴史を感じるデザイン。全てが、あまりにも、あまりにもカッコ良い。
メニューは裏表の紙1枚きりだが、豊富である。コーヒー1杯は450円。行きつけ店舗の520円から見ればとても安い。しかもコーヒーチケット10枚を4000円で買えるそうじゃないか。するとコーヒー1杯が400円。安すぎる。いいなぁ、私、ここの子になりたいよ。
高岳店同様、店舗独自のメニューもある。気になるところだが、ここはスタンダードにレギュラーコーヒーとミニシロノワールで。年季が入っているものの、清潔感のある食器類で運ばれてきた。

まずはレギュラーコーヒーから頂く。カップを手に取ると、何だか持った感じが軽い。コメダのカップといえば有田焼だが、こちらにはAokiという表記がなされていた。事前に調べたネット情報では、自家焙煎のコーヒーだそうで。しかし、コメダブレンドとそれほどかけ離れた味ではないように感じた。いつものコメダブレンドは苦味より酸味を感じるが、こちらのレギュラーコーヒーは、酸味より苦味が強い。酸味が苦手な私にとっては、より飲みやすいコーヒーという印象だった。

続いてミニシロノワール。さくらんぼが無いのと、深皿での提供という点が異なっていた。溶けたソフトクリームやメープルシロップは、別に平皿でも溢れるわけではない。だが、深さのある器だとこれはこれで何だか安心感を覚える。さあソフトクリームを一口。いつもコメダで食べるソフトクリームとは違うように感じられた。スプーンの入り方が若干重いのは確かだと思う。そして味わいはやや濃厚であるように感じられた。これで通常のコメダと全く同じソフトクリームを使っていたら、恥ずかしいったらありゃしない。どうか誰も真相を追求しないでほしい。さて、今度はソフトクリームの下のデニッシュパンをひと口。表面がサクサクだが、このサクサク感には覚えがある。シロノワールには、デニッシュパンをしっかり焼く「よく焼き」というオプションが存在する。その場合、デニッシュパンがサクサクする代わりに、溶けたソフトクリームはあまり染み込まなくなる。ところがこの今池デニッシュパン、サクサクなのにソフトクリームがしっかり染み込んでいくではないか。よく焼きと通常のいいとこ取りだなんて、最強かもしれない。

ミニシロノワールの後は、ドリンクサービスの小袋を開封。裏面にはヨコイピーナッツという表記。名古屋では老舗の会社らしい。中身はまさかの柿ピー。ヨコイ「ピーナッツ」だし、豆菓子の代わりに添えてあるんだからピーナッツなのだろうと思っていたので、柿の種も出てきてビックリした。
店内の雰囲気を味わいつつ、残りのコーヒーを飲む。お店の方々は、色んなお客さんと親しげに話していた。常連さんばかりなんだなと思ったが、不思議とアウェー感や居心地の悪さは無かった。むしろ、とても居心地がいい。近くにこんな店があったら絶対に通いたい。滞在1時間の店なのに、こんな好きになることなんてあり得るのだろうか。しかし所詮はコミュ症。好きになっても、近寄ることはできない。お店の方に話しかけることもなく、ご馳走様でした、だけ言って退店。さようなら、今池店。どうかお元気で……!
そして、翌朝。

私は再び今池店の扉を開けていた。ただいま。せっかくの珍しい店舗だから、どうしてもモーニングが食べたかったのだ。昨日訪れたから今日は行っちゃダメなんてルールはどこにも存在しないはずだ。

頼んだのは、小倉あんトッピングのモーニングと、アイスコーヒー。ミルクをお願いしたら、既に投入された状態で現れた。トーストはふわふわで、小倉あんとバターが馴染んでいて、最高だった。
事情は分からないが、今池店はチェーン店ではない。だから、公式サイトの店舗一覧には載っていない。外観、内装、食器の全てに年季が入っており、慣れ親しんだコメダ珈琲店とは明らかに異なる雰囲気が漂っている。しかし、清潔感、あたたかみ、安心感はそこに間違いなく存在する。それらが合わさって生み出される居心地の良さは、確かにコメダ珈琲店の「くつろぎ」なのであった。

本店。オールドコメダ。二度のひとり旅を経た今、私はひとつの説を提唱したい。
ひとり旅とコメダは、すごく相性がいいのでは?
ひとりカラオケ。ひとり映画。ひとり焼肉。世の中にはひとり〇〇が多く存在する。わざわざ「ひとり」が付くということは「本来は複数人での行動を、あえてひとりでとっている」という意味が込められているのだろう。ひとり通勤とかひとり風呂とか言わないのは、ひとりでやるのが当たり前だからだ。ひとり〇〇の中で、ひとり旅はどのくらいの難易度に位置しているのだろうか。もしや、映画や飲食店よりもハードルが高い?
というのも、ひとり旅をした話をすると驚かれることが多いのだ。確かに私も、数年前までは自分がこんなにひとり旅を謳歌するとは思ってもいなかった。
ひとりなら、全てが自分の自由。全ての食事をコメダで済ませてもいいし、モーニングのために5時起きしてもいい。誰にも気を遣わずに、思う存分好きなものを満喫できる。名古屋で大好きなコメダを摂取しまくったことで、私はひとり旅の楽しさに目覚めたのだった。
そんなひとり旅に、コメダが最適だと思う理由は3つ。第一に、チェーン店である強み。コメダ珈琲店は全ての都道府県にある。系列店舗を含めると、2023年に1000店舗を突破しているのだ。最近では郊外だけでなく街の中心地にも出店するようになっている。お目当ての場所とコメダの位置関係だけ頭の片隅に置いておけば、旅の「ガッカリ妥協」に対応しやすいのだ。
例えば「朝食付きの宿泊代は高いなぁ。朝はコンビニ飯で済ませるか……」というのは、低予算で行きたいひとり旅にありがちな妥協。せっかくの旅なのに、予約の段階からガッカリしてしまうなんてもったいない。ここでコメダを召喚!朝食なしでホテルを取り、コメダでモーニングを食べるのだ。コメダのモーニングは、ドリンクの値段のみでパンを食べることができる。朝からガッツリ食べたい人は、サンドイッチやバーガーを単品で頼んでもいいだろう。そうなると、ホテルはコメダの近くで一番安いところを選べば良い。なんと、ホテル選びで迷う時間すらカットできてしまうではないか。さらに言うと、コメダには「別に行かなくていい」というのも良いところである。他に美味しそうな店を見つけたら、素直にそこへ行けばいい。前日に食べ過ぎて朝ご飯が要らないなら、早起きせずゆっくり休めばいい。ホテルの朝食ならキャンセルをもったいなく感じるが、状況や体調に応じて気兼ねなく動けるのだ。
もうひとつ例を出してみよう。「行きたいお店がどこもいっぱいで、結局空いていた微妙な飲食店で済ませてしまった……」これもありがちな妥協。一期一会に身を任せるのも旅の醍醐味ではあるが、メニューが微妙だったり金額が予想以上に高かったりして「やっぱり待ってでもあっちに行くべきだった……」などとガッカリするのは旅行でよく起きること。ここでコメダを召喚!コメダのフードメニューは充実している。加えてチェーン店なので、どこでも変わらない味である。過去に食べて美味しかったメニューがあるなら、それを頼めば確実に美味しい食事にありつける。ご当地気分は味わえないが、ガッカリすることも無いのだ。
これらの例から、いかにコメダが旅の妥協ポイントをカバーしてくれる存在であることか、お分かり頂けただろうか。決してコメダありきで動くわけではない。コメダは言わば保険。自分が自由に動き、満足できる旅行にするための安心材料なのだ。
ちなみに私はコメダオタクなので、コメダへ行くことそのものが推し活である。コメダを推す人間が旅行をする中で感じた最大のメリットは、食べるもの・食べるところに一切困らないこと。だって、目的地が飲食店だから。それに、食事と推し活を兼ねられる。何ともお得な活動ではないか。
コメダがひとり旅に最適な第二の理由。それは、拠点としての安心感である。第一の理由を読んで下さった聡い皆さんなら、こう思っただろう。「別にコメダである必要ないよな?」と。そう、全国展開していて朝から開く飲食店なら、どこだっていい話だ。それでも私があえてコメダを勧めたいのは、コメダのあの空間があってこそ。コメダは街のリビングルームを名乗っており、その言葉通り、本当に居心地がいい。まさに、家が各地に点在している気分になるのだ。RPGのセーブポイントと同じくらい安心感がある。私はひとり旅に抵抗が無いというだけで、ひとり旅が得意というわけではない。なんせ方向音痴なのだ。これはひとり旅において致命的な短所である。例えスマホでマップを開いていようとも、大きな交差点のどこにいてどっちに渡ればいいか分からない。とりあえず進行方向を特定するためにしばらく歩いてみると、高確率で反対方向に進んでいる。
頼れる同行者がいない環境下で、安心感の得られる拠点がいかに大切か!近くにコメダがあるだけで「最悪コメダに行けば大丈夫」と思える。時間的にも旅路的にも、迷った時はコメダに行けばいい。コメダで腰を落ち着けて、どこに行くかゆっくり考えて、Wi-Fiを繋げて調べればいいのだ。
コメダがひとり旅に最適な第三の理由。「ひとり旅に興味があるけど、抵抗もある」という人に対しても相性がいいのだ。以前、叔母が「コメダって誰かと行くところだから」と行き渋っていたことがある。いや、何言ってんの?コメダはひとりで行くところでしょ?と内心では驚いたものだ。しかし考えてみれば、誰かと会話をするでもないのにカフェに独り入り浸る人間の方こそ異端なのかもしれない。私だって、どんなカフェでもひとりで行けるわけではない。四人席しかないオシャレなカフェなどは、ひとりで来ることを前提としてない雰囲気が非常にキツい。周りのカップルや女子集団などにも萎縮させられる。反対に硬派な喫茶店は、今度は喫煙可能で臭いが気になったり、あまりにも常連さんオンリーな空間だったり……。その点コメダにはおひとり様がいっぱいいるし、長居しやすい雰囲気作りがなされている。前述した、ひとりで行きづらいカフェではないのだ。むしろひとりでゆっくりするのにピッタリ。ソロ活を練習するならコメダで。コメダこそがソロ活コソ練の聖地とも言えよう。
コメダで「ひとりカフェ」を行えば、ひとりで喫茶店に入ることに慣れていく。慣れたら「ひとりカフェ」からは「ひとり」が取れ、ただの「カフェに入る」という日常的な行動に変わる。そうすればひとりで飲食店に入る抵抗はなくなり、ひとりで行動することが苦にならなくなる。こうしてひとり旅ができる心持ちが育っていくのだ。
もっとも、これが良いことなのかは分からない。集団から己を切り離すことに慣れてしまうので、社会性を欠如させる方法かもしれない。でも、ひとり旅は自由を味わえる楽しさがある。それだけは確かだ。コメダを介したひとり旅、ぜひご一考あれ。
沼レベル5・コメダの株を買う
消費でコメダを支える次元は超えた。今度は株主としてコメダを支えるレベルだ。とは言え、このレベルに到達するまでにはかなりの時間を要した。私はコメダの株を買うかどうか、何年も迷っていたのだ。
株を買いたい理由は至ってシンプル。株主優待が欲しいからである。コメダブランドで使えるプリペイドカード、KOMECA。株を買うと、株主優待専用デザインのKOMECAカードが貰えるのだ。しかも、そのKOMECAに年2回の1000円チャージをしてくれる。さらに、長期に渡って株を保有していると、チャージの額も増える。私には「特別なデザインのKOMECAでないと持ちたくない!」という変な意地があった。正月や記念日など、特別なKOMECAの抽選キャンペーンには必ず応募しているが、当たるはずもなく……。しかし、2023年、KOMECAの特大キャンペーンが開催された。チャージすればKOMECAのポイントがいっぱい貰える、大変お得な内容だった。

さすがにこのキャンペーンは逃せなかったので、ノーマルKOMECAカードの作成を余儀なくされたのであった。KOMECAのカードが複数枚ある場合、ひとつのカードに残高を合算することができる。それなら特別なKOMECAをメインカードに据えたいものだ。その思いから、ノーマルKOMECAカードを作った後も、株主優待専用デザインへの憧れは消えなかった。
こんなに株主優待を欲しがっているのに、なぜ株の購入を踏み止まるのか?理由は2つ。
ひとつ、証券会社の口座を持っていなかったから。株を買うには証券取引のできる口座が必要だ。しかし私が持つのは、給料が振り込まれる地方銀行の普通口座のみ。その口座は銀行に行って作ったのだが、膨大な手続きと時間がかかった。やれハンコだの、やれ住民票だの、そういった銀行への持参物の準備も面倒だった記憶がある。新たに口座を作るなんて絶対面倒に決まっている。
ふたつ、株は怖いという認識。私にとって、株はギャンブルと同じ。競馬や競艇、パチンコの仲間だと思っていたのだ。株や投資信託を運用する人からすれば、特大のため息が出るような言葉かもしれない。だが「分からないから怖い」という思考に陥ることは誰にでもあるはずだ。
面倒。分からない。怖い。そこで止まっていた私を変えたのは「カズレーザーと学ぶ。」という、専門家を招いて最新の学説を教えてもらうというテレビ番組だった。その日のテーマは、お金の新常識。その中で、投資の専門家であるテスタさんが話していた。
「投資に抵抗があるので貯金するという人もいるが、貯金だって“円”に投資しているのと同じ」
なんと、私は知らぬ間に投資していたのか。そう言われると、地方銀行ひとつに財産を集中させているのは、それはそれでリスクがあるのかもしれない。テスタさんの言葉によって、私の株に対する見方は、ギャンブルから資産へと変わっていったのである。
そう思い始めた2023年、世間が新NISAを喧伝しはじめた。どうやら2023年内にNISAを始めたら、非課税で運用できる枠が増えるのだそうだ。つみたてNISAを始めるには、証券会社で口座を開設する必要があるという。じゃあ、その口座でコメダの株を買うのはどうだろうか。一石二鳥とはこのことだ。このような経緯で、私は口座の開設からスタートしたのであった。
まず、どの証券会社を選ぶか。ここから既に面倒だ。
どういう観点から選ぶといいか、ネットで調べてみる。
付与されるポイントで決めよう!……却下。楽天ポイントもPontaポイントも使っていない。選ぶ理由にならない。なら、携帯会社で決めよう!……却下。auでも楽天モバイルでもドコモでもない。これも基準にならない。なら、安い投資信託を取り扱う所で決めよう!……確かに地方銀行の投資信託は高いが、ネット銀行同士ではどこも同じくらい安い。ひとつの証券会社に絞る理由にはなり得ない。さんざん迷った果てに、SBI証券とSBIネット銀行の口座を作ることにした。SBIの利用者は多いため、初心者向けに口座開設をガイドする記事もたくさんあった。多くの人が選ぶものと同じものを選択するというのは、付和雷同のようでいて、実は賢明なのかもしれない。様々な初心者向け記事を教科書代わりにして、スマホと睨めっこだ。ハンコや住民票は要らないので、マイナンバーカードの有用性は実感した。それでも手順があまりに多すぎる。最短◯分で完了!と宣っているのは嘘だ。おそらく口座開設RTA走者の記録だろう。ぼちぼちNISAの口座開設しようかなぁと思ってる人は早く始めた方がいい。始めようと思って色々調べだすと、そこからまた時間がかかるぞ。
やっとのことで開設の申請が完了し、税務署の審査も無事に通過。その後の初期設定とも延々格闘した。SBI証券とSBIネット銀行、それぞれのユーザー名やら初期パスワードやらログインパスワードやら取引パスワードやらがゴチャゴチャになったせいで、マイページにログインするまでに1時間かかった。我ながら段取りの悪さに辟易してしまう。これを読んでいて証券取引の口座を開設しようかという人がいれば、全てのパスワードは一度きちんとメモして、どこのページで使う何のパスワードかを整理しながら手続きを進めて頂きたい。
さあ、気を取り直して、お次は軍資金の投入だ。給料が入っている普通口座から、ガボッと現金を引き出す。分厚い札束を財布にしまい、ドキドキしながら近くのセブン銀行に駆け込み、ネット銀行の口座にお金を移し替える。わざわざ現金に換える必要があるのか?と疑問に思った人もいるだろう。無いよ。普通口座でネットバンキングが使えたらの話だがな!手続きに疲弊しきっていた私は、地方銀行のネットバンキングを申請するよりも、物理的にお金を移動させる手段を取ったのだった。何にせよ、これで証券口座にお金を入れることができた。
そして、SBI証券のつみたてNISA用アプリを導入。ここで投資信託を選び、取引をするのだ。事前にネットでどの投資信託が良いか調べるも、情報が多すぎて行き詰まっていた。迷いながらアプリを開くと、なんと、人気順・手数料が安い順などでソートができるではないか。ひとつひとつの投資信託をちまちま調べなくとも、ここで投資信託同士の比較が容易にできたのだ。早くアプリで探せば良かったなぁと後悔。結局、人気かつ手数料が安いものでいくつか選んだ。給料の口座から毎月定額をネット銀行に自動振替し、その振替分が個々の投資信託に振り分けられるように設定。これでつみたてNISAが自動で運用されるようになった。めでたしめでたし。
……待て待て、終わるんじゃない。つみたてNISAにかまけて目標を見失っていた。最初の目的は、コメダの株を買うこと。そして株主優待の恩恵を享受するのだ。
今までの手続きにより、既に軍資金は口座に投入済み。後は株を買うだけだ。購入数は100株から始まるが、株主優待も100株から。つまり100株買えたらそれで良し。もはや買い時とか知らなくていい。安く買えなくたって、私の力で株価を爆上げさせてやるさ!気前よく聞こえるが、私にそんな力は無い。これ以上お金知識の迷宮に閉じ込められたくないだけである。ところが株取引も、ただ購入するだけでは済まない世界だった。注文画面に進んだ瞬間、知らない単語が一気に襲い来る。指値?成行?逆指値?東証?SOR?全然分からない。でも、自分のお金だ。分かった上で運用しないと。疲労困憊のオタク。札束を手に、うろうろと取引所を彷徨っている気分だった。ここに100株買えるだけのお金があるのに、どうして簡単に買えないのだろう。そんな風に嘆いても仕方ない。こちらに関しても、初心者向けの記事を読み込んだ。株取引は、現時点の株価でいつでも直ちに取引ができるわけではない。15時半から翌朝9時の間は取引所が閉まっている。夜はその場での取引ができないのだ。しかし、注文を申し込んでおくことはできる。「この期間中に◯円より安くなったら買います」というのが指値。今よりどのくらい安い値で攻めるか、どのくらいの期間待つかが肝のようだ。対して「もう何円でもいいから買います!」というのが成行。私が見ていた時、コメダの株価は1株2805円。成行の詳しい仕組みまでは理解できなかったが、2805円より高いところで決まってしまう可能性もあるのだろうか。それはさすがに嫌だ。というわけで、2805円以下の指値で設定しておいた。そして翌朝9時に取引所が開く。開始時点で2805円なのだから、秒で取引成立だ。翌日、報告書なるものが交付された。ご精算金額、28万500円。2805円を100株で、28万500円。確かに100株買えていることを確認した。祝!100株購入完了!コメダオタク、ようやく株主になれた!
だが、いざ30万円弱の出金をしたのだという事実を突きつけられると、自分はとんでもない取引をしたのだと震撼する。赤裸々に言うと、私の手取りは月20万に満たないのだ。でも、これはコメダのために出したお金だ。株を買うことは、その会社を支えることに繋がるはず。商品を食べたり買ったりする以上にダイレクトな推し活では?もはや推し活の極みとも言えるかもしれない。ならば誇らしく思おうじゃないか。必死に己を正当化する薄給コメダオタクなのであった。

後日、株主優待デザインのKOMECAカードが届いた。KOMECAはアプリでモバイル決済ができるので、カード自体を普段から持ち歩く必要はない。しかし私はお守りとしてスマホケースにしまっている。
口座の開設も、入金も、諸手続も、非常に面倒だった。しかし、この煩わしさを乗り越えて手にした株とつみたてNISAは、いつか自分の大事な資産に育つに違いない。そして、その利益をコメダの飲食や株の買い増しに利用するのだ。これが推し活の永久機関というものか。
沼レベル6・コメダの株主総会へ行く
コメダの沼レベルも、いよいよ極まってきた。沼レベル5においては、人生で初めて株を購入。権利確定日を迎え、晴れて株主となったのであった。
株主としてやりたいことは主に3つ。第一に、称号の獲得。株を3年保有し、3年目の時点で300株に達している場合、長期保有株主という称号が得られるのだ。1年目から300株を買う必要はない。2年間は100株を保有し、3年目に200株を買い足しても条件はクリアできる。でも、いてもたってもいられなくて、もう300株まで買い増ししてしまった。この状態で3年が経過すれば、私は晴れて長期保有株主だ。人生をゲームに例えるなら、これはアチーブメント、あるいはトロフィーである。株式というクエストに挑戦したからには獲得したいものだ。それに「長期」保有株主という響きが古参っぽくてカッコいいじゃないか。
第二のやりたいことは、株主優待の享受。株主優待とは、もちろん株主にならないと受けられない恩恵である。コメダには、KOMECAという名のコメダブランド店舗で使えるチャージ式プリペイドカードが存在する。店頭で申し込めるのだが、その場合には通常デザインのカードがもらえる。そして株主優待として、年に2回、1000円がチャージされるのだ。コメダに通い詰める私にとっては焼け石に水なのだが、それでも何もないよりは助かるというもの。ちなみに長期保有株主の場合、チャージ金額が1000円から2000円にアップする。もっとも、先に述べた通り、私が長期保有株主を目指すのは金銭的なメリットが動機ではないのだが。
そして、第三のやりたいこと。それは、株主総会に行くことに他ならない。株といえばやっぱり株主総会だろう。株を推し活と認識してから、株主総会は私の憧れと化していた。私はコメダオタクで、コメダが大好きなわけだ。株主総会とは、愛するコメダが自ら開催する、年に一度の一大イベント。しかもそこに私を招待してくれるのだ。私のようなコメダ愛好家だけではなく、コメダを投資対象と見なすだけで、贔屓にはしていない株主もいるだろう。しかし、コメダの将来性を信じ、自分の財産を託しているのは皆同じ。そんな人々が集い、コメダに思いを馳せる。それは最早、一種のファンミーティングではなかろうか。これは仕事を休んで行くしかない。
2023年の11月に株を買った日から、ずっと株主総会を心待ちにしていた。そして、2024年5月。遂に、株主優待と共に招待状が届いた!封筒の文字をよく見れば、「招待状」ではない。正しくは「招集通知」である。でも招待状と表現する方が夢を感じるので、これからも私は招集通知を招待状と言い張らせてもらう。
株主総会において、我々株主は議決権を持っている。議決権とは、株主総会の決めごとにおいて票を投じる権利。この議決権を行使する方法としてはオンラインが推奨されており、総会の模様はライブ中継される。ならば、現地に行かずともライブ中継でいいんじゃないか?と思った人もいるだろう。さてはあなた、野球は実況中継でいいというタイプの人間だろう。確かに、現地で見た後で「やっぱりライブ中継でも良かったな」と思う可能性はある。でもライブ中継を見ながら「現地はもっと楽しいのかな、行けば良かった」と思ったらどうするのか。これが悔いなき選択というやつだ。
電子配布された参考資料を見て予習しておこう。資料によれば、株主総会は大きく2つのパートに分かれているようだ。パート1、報告事項。事業や決算の報告、そしてそれらが公正で間違いないという報告らしい。色んな表が載っていたが、全くもって理解できない。経営が悪くないということだけは分かる。そんなあやふやな知識で、自分のお金を預けていいものかと思われるかもしれない。でも、私はそれでもいいという覚悟でコメダに投資している。例えコメダの株が大暴落したとしても、再び盛り返すまで応援すればいいのだから。
話は株主総会に戻り、パート2は決議事項。取締役と監査のメンバーを選任するらしい。ここで株主の議決権が発揮されるわけだ。私の清き一票が幹部の顔ぶれを左右するだなんて、そんなの荷が重すぎる……!と思っていたら、衆議院議員選挙のように100%落選が生じる投票ではないらしい。メンバーはあらかじめ決められており、その賛否を表明するだけ。反対する場合にのみ、除外すべきだと思った人の名前を書くのだ。10人から7人選べ、みたいな形式じゃなくて良かった。でも、ちゃんと全員の紹介に目を通した。それぞれの候補者に選出理由がしっかりと書かれていた。みんな知識や経験が豊富だし実績もあるから、取締役として迅速で適切な意思決定ができるらしい。
株主総会に必要なものは、議決権行使書用紙のただ一枚。しかし、これを忘れたら一巻の終わり。何度も確認してから、旅行用カバンを閉めたのだった。
株主総会の前日。仕事終わりの夕刻、新幹線で田舎を脱出。コメダが好きなので愛知県在住だと思われたことがあるが、生まれも育ちも広島、生粋の広島県民である。じゃけど広島駅から遠いとこに住んどるけん、のぞみに乗るのがほんまに不便なんよ。
朝5時に起きれば、株主総会に間に合わせることは可能だ。しかし、あえて1泊2日にすることで、なるべく多くのコメダを摂取したい。その思いから、株主総会の前日に前乗りしておくことを決めたのだった。
名古屋に着いたのは20時半。名古屋駅のシンボル、金時計の周りは閑散としていた。土日の人混みしか見たことがなかったため、私にとっては珍しい光景だった。
晩ご飯にありつくべく、事前にリサーチしていたコメダに直行。ただのコメダ珈琲店じゃダメ。地元の行きつけ店舗にはない、夜コメという夜限定メニューが食べたかったのだ。21時以降も開いていて、なおかつ夜限定メニューを取り扱っている店舗は、お膝元の名古屋でも数少なかった。
地下道を出ると、通りには至る所に呼び込みっぽい人が立っている。スプレーで落書きされた配電盤。道端に放置されたダンボール。踏まれてボロボロになったタバコの吸い殻。治安がよろしいとは言い難い。とても心細かったが、すぐに暖かくオレンジ色に光る看板を見つけることができた。

錦・伊勢町通店。ネットで軽く調べたところ、名古屋の中でも特に治安が悪いとされている錦3丁目に位置している。特別ヤバい人には遭遇しなかったが、少し歩くだけでも危ない感じが伝わってきたよ。下調べで分かっていながら、なぜここを訪れようと思ったのか?その理由は、この店舗の営業時間にある。なんと、金土日は深夜3時まで営業しており、それ以外の日も0時まで開いているのだ。ここを不夜城のコメダと呼ぼう。夜の街に位置するため、飲み屋帰りのお客さんやお店で働く人をターゲットにしているのかもしれない。この営業時間なら、21時近くに入店してもゆっくり過ごせそうだと思ったのだ。

ディープな街に合う、ディープな雰囲気のお店。柄の入った壁紙や、飾られたモノクロの写真がオシャレである。パーテーションに使用されている木材、色合いはかなり濃かった。経験則に基づくと、濃いほど昔からの店である。また、テーブルの擦れ具合からしても、かなり年季の入った店舗であることが見て取れた。店内の客層は、行きつけの一般的なコメダとはかなり違った。ファミリーや学生はいない。時間帯も関係しているのだろうが、友人同士の若者や、スーツのおじさん集団などが多かった。
さて、夜コメを注文しようじゃないか!夜限定メニュー・夜コメには、チーズカリーグラタンとチーズハンバーグミートスパの2種類が存在する。その字面を見るだけで胃もたれがしてきそうだ。チーズカリーグラタンには、新宿中村屋監修のカリーソースが使用されている。このカリーソースは通常メニューのチーズカリートーストやカツカリーパンで味わったことがあり、辛いものが苦手な私は軽々に頼んではいけないと学んでいる。そのため、実質チーズハンバーグミートスパの一択だ。
夜のカフェイン摂取は良くないので、控えめにコーヒーシェークを選択。チーズハンバーグミートスパとコーヒーシェーク、合わせて1445kcalである。

そして運ばれてきた、チーズハンバーグミートスパ。チーズに埋もれているハンバーグが常識的なサイズで、まずは一安心。だが、ハンバーグを切り分けると、とんでもない密度のパスタが覗いた。そうか、今からこれを食べるのか……。武者震いして、攻略を開始。

一体どんなハンバーグなんだろうと色々想像していたのだが、肉の密度がギッチギチで美味しい。しょっぱいくらいに濃い味つけだ。しかし、この密度、この味。どこかで経験した覚えがあるのだ。そして、頭の中で完全に繋がった。そうだ、これはバーガーに使われるハンバーグの味なのだ。コメダのバーガーに挟まれる肉は、パティなどという生やさしいものではない。ガッツリとひとつのハンバーグが挟まれているのだ。なるほど、このハンバーグを利用したメニューだったのか。そしてミートスパだが、これも通常メニューで味わった記憶がある。スパゲッティのミートソースと同じ味、同じパスタであった。既存の素材を組み合わせ、ハイカロリーなメニューを作っていたとは。コメダよ、何と罪深いキメラを錬成してしまったのだ。
猫舌なこと、早食いできないこと、少食なこと。これらが障壁となったものの、90分かけて完食。当初はデザートも頼む予定だったが、辿り着けず。様々なフードメニューに苦しめられてきたが、その中でも屈指の苦戦だった。食べたら腹囲に出やすい人は注意した方がいい。私は見たことがないレベルで腹が膨れた。
食べ終わってからは、しばらくゆっくり休憩。コメダがカロリー戦争の場ではなく、くつろぎの場であることを再認識。いい夜を過ごせた。
退店後は、輩が屯している道を早足で通り抜け、ホテルに到着。チェックインしたのが23時過ぎ。なんやかんやで1時30分に就寝。おやすみなさい。
そして5時40分、起床。私はこの日のために株主総会コーデを考案してきた。信じてもらえないだろうが、私がコメダオタクになる前、偶然にも赤いワンピースを買っていたのだ。当時は赤色と紺色で迷ったのだが、気を衒って赤色をチョイスしてみた。いざ購入してからは赤色を着る勇気が出ず、捨てることも視野に入れていた。今にしてみれば、この赤色は紛れもなくコメダのソファの色ではないか。しかもソファの柄に似た縦ラインまで入っているのだ。コメダの集まりのために生み出されたとしか思えない。捨ててなくて良かった。
そして、ペンダントと呼んでいいのか分からないようなペンダントを装着。リーメント謹製・コメダブレンドのミニチュアカップに、手芸店で購入したネックレスチェーンを通したものだ。家で予行演習したが、ケンエレファント製のミニチュアだと上下逆さまで安定してしまう。リーメント製のミニチュアじゃなきゃ実現できない。あまりに目立つようならワンピースの内側に隠して歩こうかなとも思ったが、小さいからバレない。これなら羞恥心に苛まれずに済む。
仕上げはカバン。旅行カバンに忍ばせていた、コメダ公式トートバッグ。福袋を買った際にゲットしたグッズだ。大変に目立つ色合いなので、普段使いには躊躇している。
たくさんの株主が来るのだから、一人くらいは私と同じ赤備えがいるかもしれない。いや、全身をコメダグッズで固めた強者がいて、私など霞んでしまう可能性まで考えられる。そんな同志の存在に期待しつつ、ホテルを後にしたのだった。
前日は雨だったが、この日は雲ひとつない晴天。赤いワンピースに身を包み、コーヒーカップのミニチュアを首からぶら下げ、赤いトートバッグを片手に名古屋市内を闊歩する。こんなに真っ赤な姿なんて、カープの試合がある日のマツダスタジアム周辺でしか馴染めないだろう。

株主総会の舞台は、名古屋観光ホテル。大きな建物だが、実際に用があるのは3階の広間である。入口から既にスーツ姿のスタッフさんたちがズラリ。みんな社員さんかな?と思いながら進む。高級ホテルの雰囲気を堪能しようと思っていたのに、スーツの皆様が至る所に配置されまくっており、アワアワしているうちに会場までご案内されてしまった。
ここで一つ反省点。議決権行使書用紙は入場時に提出するため、あらかじめ記入しておかなければならない。株主総会での話を聞いた上で、最後に記入して帰るものだとばかり思っていた。私の前に受付したお兄さんも「まだ書いてないんですけど……」と困惑していたが、係の方に笑顔で受け取られていた。記入なしは賛成の扱いらしいので、まぁいいか。
広間の中には、既に多くの株主が。みんなスーツではなく、普段着の人ばかりだった。浮かなくて良かったと思ったが、私のは普段着じゃなかった。私のような赤備えはどこにもいません。それどころか、コメダのグッズを見えるように持っている人もいない。コメダの赤いトートバッグを置いた時、前列のおじさんは確かにこちらを二度見していた。スタッフさんが「よろしければ前方に」と勧めてくれるが、こんな真っ赤な女が前列に張ってたら危険人物でしかない。学生時代の講義室での席取り経験を活かし、そこそこ中列のそこそこ端っこ、極めて無難な席を陣取った。開始までは、2023年度の新店舗を紹介するスライドショーが流れていた。撮影・録音禁止なのは承知していたため、ここからの写真は撮影していない。しかし、撮影も録音も禁止の内容を、こんなオタクの怪文書に昇華していいものか?会が終わったらスタッフさんに確認しよう。
そんなことを考えているうちに、偉い人たちが登壇。2列に渡って着座。学校の卒業式に参列する来賓みたいに、舞台の傍に座るものだと思ってた。全員がそんな会場を見渡せる感じで座るとは思わなかった。これでは赤備えのオタクがお偉いさん方の目に触れっぱなしになってしまうではないか。私は公式に認知されたくないタイプのオタク。承認欲求はあれど、それは不特定多数からの反応で満たすもの。公式様には求めていない。予想外の配置に焦る私をよそに、株主総会の開始時刻は迫り来るのであった。
10時になると、定刻通り、挨拶と開会宣言が行われた。社長が自ら議長となり、進行役を務める。
まずは売上や利益についての報告。大勢の前で澱みなく話せるのが凄い。私なんて一対一でも吃るのに。そしてスライドが見やすい。これが企業のパワポというものか。事前に電子配布されていた参考資料ではちんぷんかんぷんだったが、色付きのグラフで示されると、分かりやすく頭に入ってくる。今後とも売上や利益の目標達成に取り組み、株主への還元も頑張ってくれるらしい。
そして、コメダの重要課題と、その解決に向けた取り組み。重要課題と書いてマテリアリティと読むそうだ。
課題その1・品質とお客様について。限定商品や各地への出店、公式アプリの普及などは既知の情報。しかし、地域貢献として乗合バスを手がけていることは知らなかった。広い駐車場を活用するという発想が素晴らしいよね。そういえば、近所のおじいさんがマイクロバスからコメダの駐車場に降りているのを見たことがある。デイサービスみたいなバスが乗り付けているのかと思っていたが、あれが駐車場を提供した乗合バスだったのかも。
課題その2・人と働きがいについて。このテーマでは、コメダ珈琲店ならびにおかげ庵の本店で店長を務める2人の女性が壇上でスピーチを行った。私より年下かもしれないような2人が一生懸命話しているのは凄いし、応援したくなった。それはそれとして、こういう場で女性店長としてスピーチに駆り出すという行為そのものが、女性を特別扱いしているような気がする。女性店長を珍しがって担ぐのなら、真に女性を登用しているとは言えないのでは?毎年本店の店長がスピーチしてるのならいいけど。男女平等の在り方は人によって意見が分かれる話題だ。この辺にしておこう。
課題その3・環境について。二酸化炭素の排出量削減のために、様々な取り組みを行っているとのこと。私は環境に対する「本末転倒な配慮」が嫌いだ。例えば、レジ袋を使わないようにと言っても、結局エコバッグを作る方が負担になるとか。あと、結果的に本来の用途を妨げるケースも嫌い。口当たりが悪くってフニャフニャになる紙ストロー、お前のことだよ。こうも捲し立てると環境保護アンチに見えるだろうが、要は環境に配慮するなら合理的であってほしいのだ。とにかくプラスチックを減らせばいいんでしょ?という曖昧な目標でやるんじゃなく、根拠とデータに基づいてやってほしい。その点コメダは、真に持続可能な活動をしている。その代表例が、「コメダの森」である。コメダは「マイ森林」を有しており、保全活動で生じた間伐材を店舗の壁やテーブルに利用しているのだ。用途がピッタリで、実に無駄がないと言えよう。

コメダ珈琲店本店のテーブルには「コメダの森」の間伐材を使った証拠として、テーブルの縁に小さなプレートが付いている。さらに「コメダの森」がどれだけの二酸化炭素を吸収しているかを測定・算出しているのだ。
続いて、お待ちかねの質疑応答タイム。社長の「挙手願います」の言葉と同時に、10人以上の手がババーッと挙がる。私は全ての質問に対して、どんな人がどういった内容を述べたのかをメモしていった。全体的に、要望の直訴が一番多かった。設備の改善や、メニューの種類や量についてなど。そういった要望は、その人たちがいつもコメダに通って、くつろぎの拠点としているからこそ出てくるのだ。大事な場所だからこそ、もっと良くなってほしい。そのような、コメダ愛を感じる質問ばかりだった。そして、そういった質問には必ず感謝の言葉も交えられている。社長もいつもありがとう的な言及で応えていた。やっぱりファンミーティングじゃないか。発言権を得たファンの中には、自我の出し方が上手い人も多くいた。自分がどれだけコメダが好きかという主張を、質問の中に上手い塩梅で混ぜるのだ。別に自分の情報がなくても質問内容は成立するんだけど、大なり小なり自分語りみたいなのを入れたくなるのだ。推しに対して自我を出したくなっちゃうその心理、オタクだから分かる。というか、服装によって現在進行形で自我を出しているのが私です。各々の自我の出し方について、あの人上手かったなぁ〜、今の人は質問から逸れてるからやりすぎたなぁ〜、などと野次馬根性丸出しで聞くのも楽しかった。もっと面白かったのが、要望よりハイレベルな、突っ込んだ質問である。観客席感覚の立場からすると、そういうエッジの効いた質問の方が聞き応え抜群というもの。期間限定商品が早期に終了した見込みの甘さを指摘された際には、さすがの社長も痛いところを突かれたという顔をなさっていた。こういった、要望ではないしっかりした質問の場合、上手く濁されることが多かったように思われた。適当に答えるわけにはいかないのも分かるが、「え?これで終わり?質問者さん絶対納得できないよね!?」と、見ている側も消化不良になるような解答もいくつかあった。「単なる要望ではなく、質問らしい質問にこそ時間を取ってあげてほしいな」という要望を抱いたのであった。
しかし、総じて感謝と要望が多かったこともあって、発言するファンを周りのファンが見守るような、あたたかい和やかムードで包まれていた。プロ投資家軍団が首脳陣を激詰め!飛び交う専門用語!みたいな、もっと殺伐とした雰囲気を想像していたのだが、いい意味で予想を裏切られた。この場で優しい雰囲気を味わったので、今度はそういう展開も見てみたい。優しい消費者部門と厳しい投資家部門とかで分けたら面白そう。
会が進む中でひとつ学んだのは、動議という概念。最後の質疑応答の後、一人のおじ様が「動議!」と声を上げ、質問の時間をもっと取るべきという意見を述べた。いちゃもんをつけるヤバい人かと思ったが、そう捉えるにはあまりにも早計。私は株主総会の仕組みについて無知である。きっと申し立てるシステムが存在するのだ。後で調べたところ、やはり株主総会において基本的な言葉だった。おじ様は自分が質問したかったからではなく、株主への誠意に疑問が生じるとして議事進行に異を唱えたのであった。そして議長である社長は、株主みんなの意思を拍手により確認。私は質問を打ち切る方に拍手した。時間が経ち、だんだんと質疑ではなく各個人の要望発表会っぽくなっていたので。でも後から思えば、誰も拍手しなくて質疑応答が永遠に続く世界線も面白かったかもしれない。
最後に、新しい取締役と監査についての決議。拍手によってこのメンバーで良しと認められ、決議はすんなり終了。新任の方の紹介と挨拶を終えて、閉会宣言。
株主総会が終わった後、私は本当にスタッフさんに確認した。
「総会の内容をSNSやブログにアップするのはやめた方がいいですか?」
そう思うならやめとけよって話だ。下らないことを尋ねて申し訳ない。適当にあしらわれて終わるだろうと思いきや、スタッフのお兄さんからお姉さん、お姉さんからおじ様、おじ様からもうワンランク上のおじ様にまでバトンパスされてしまった。質疑については個人の発言であるため、世に公開することへの同意は得られていない。質疑応答への具体的な言及は控え、抽象的な雰囲気について述べるに留めることを勧められた。こんなしょうもないオタクにも真摯に回答して頂き、感謝しかない。このお言葉も踏まえた上で、私は改めて己の動機を顧みた。別に胸に留めておけばいいものを、なぜ書き残そうとするのか?
私にとって、記録はオタク感情の発露。布教活動であり、推し活でもある。株主総会でどんな話があったかという事実の羅列は、出席した人ならば誰でも書ける。でも、オタクがどう感じたかはオタクにしか書けない。株主総会コーデをキメて、ミニチュアを首からぶら下げ、株主総会をファンミーティングと捉えるようなコメダオタク。推定競技人口1名。こんな異常者にしか書けないモノでなきゃ、逆に残す意味がない。というわけで、コメダオタクの主観バリバリで2024年の株主総会をお届けした。具体性や客観性に欠けると思われたかもしれないが、以上のような経緯によるものだ。せめて私が思う存分エンジョイしたことだけでも伝わっていればいいのだが、いかがだっただろうか。
ちなみにライブ中継で満足できるか問題についてだが、どうしても現地でなきゃ味わえないという要素はそれほどなかった。リモートでも間違いなく困りはしない。質疑応答のライブ感は、現地の方がより味わえるだろう。でも、リモートも同じように楽しめるかどうかは、中継を見てみないと結論づけられない。現地とライブ中継の比較もしたいので、次はライブ中継にしようかな。と考えていたのだが、ライブ中継を見るにも有休の申請を出して仕事を休まなければならないのは同じ。ならば現地に行った方が、色んなコメダを摂取できてお得ではないか。二度目の株主総会も、きっと出席することだろう。

この頃、私は人生を「人生ゲーム」のように感じることが多々ある。周りは、出会い・恋愛・同棲・結婚・子育てと、順調にマスを進んでいく。しかし私はアラサーにも関わらず、一向にコマを進められていない。さっきまで株主総会の話をしていたのに、いきなり何だと困惑されるかもしれない。人生のイベントを何一つこなせておらず、それどころか日々のコメダが最大の楽しみで、さらには株主総会にキャッキャしている。そんな我が身の行く末を憂いたことは何度もあるのだ。本当にこのまま「好き」を中心にする人生でいいのか?
今のところ、私の答えはこうだ。いいじゃないか、脇道を進む人生だって。それは自己の正当化だと言われたら……それはそう。でも、突き詰めていくと人生って、自分の生き方を正当化していく過程ではないかと、私は思う。誰にでも死というゴールは訪れる。それまでに、自分は生きてて良かった!と思えるように、様々なイベントで経験を積むのだ。自分はあんなことができた!だから人生楽しかったよ!こんなこともできた!だから人生に悔いはないさ!そう思えるくらいに経験を積めていたら、死を心安らかに迎えられるのではないか、というのが持論だ。
誰かと暮らし、家庭を築く。今の私にとって、それは苦行としか思えない。良い人生だったと思う材料にはならない。対して、私の人生を良くしているもの。それこそが推し活。すなわちコメダとそれに関連した様々な活動。今回の株主総会は、人生ゲームのコマが進むような出来事ではない。しかし、私が私の人生をより良く捉えるための、大きなサブイベントだったように思っている。もしも死の直前に、その集大成として走馬灯が流れるのなら、今日という日は絶対に組み込まれる。そしてそれは人生の楽しかった経験として想起されるはずだ。きっと死を受け入れるための大切な糧になってくれるだろう。推し活が人生を肯定することを信じて、今日も私はコメダ珈琲店の扉をくぐる。
沼レベル7・コメダ愛を広める
私はコメダが好きすぎて、コメダを語りたくなった。コメダを語ろうと思うと、SNSの短文では到底表現しきれない。だから、創作プラットフォームのひとつ、noteでコメダを語るためだけのアカウントを作り、新作の感想を中心に書き残している。私はいわゆる「書き専」であり、フォロワーの記事を読むことは極めて稀である。しかし、コメダのハッシュタグがついた記事に関しては巡回している。みんながどのようなメニューを頼み、どのような感想を抱き、どのような時間を過ごしたのか。そういった文章を読んで、他人のくつろぎ体験さえも楽しんでいる。
とてもありがたいことに、記事を投稿すると、多くの方から反応を頂けるようになってきた。そのひとつひとつがとても嬉しく、日々感謝している。特に「コメダに行けないけど/このメニューは食べられないけど、noteを通して楽しめた」という意見をよく頂戴する。フードライターのように、美味しいものを美味しそうに表現するのは苦手だ。ならば、読んだ人が楽しめるような文章にしたいと思ったのも、こういったコメントがきっかけだった。私が肌で感じた「ワクワク」「心地よさ」を意識し、せめて自分がコメダで楽しく過ごせていることだけでも伝わったらいいなと思っている。そして、あわよくば私の文章を読む人の脳内にコメダが刷り込まれ、ふらりとコメダに入ってくれたらと目論んでいるのだ。
私にとって、コメダの記録は愛情表現であり、同時に布教活動でもある。記事の文字数は毎度3000字を超える。今回、沼レベルとして1〜6を設定したが、この執筆活動こそが沼レベル7に相当するのではないかと思う。
そんな自己満足noteだが、一度だけ、投稿コンテストで受賞したことがある。そのコンテストは「#推したい会社」。Money for Goodというプロジェクトとnoteが協力して開催されたものだった。私の推しである株式会社コメダホールディングスを思う存分に語れる場を、運営の方から設けて下さったのだ。こんなの私のためにあるようなテーマじゃないか。
とは言え、好きに書き散らしたわけではない。そう、こんな風に。「#推したい会社」コンテストの趣旨は、社会課題の解決に向けて取り組む企業を応援したいというもの。Money for Goodというプロジェクトも、お金の使い方を社会を良くする方向に使おうという活動だ。それらに沿ってコメダをねじ込む必要がある。
さて、そんなことが可能なのかというと、もちろんできる。コメダはサステナビリティ活動に励んでいるのだが、これまで紹介する機会がなかった。コンテストという大義名分を得た今こそ、この活動を語る時ではないか。私は喜び勇んでこのコンテストに参加した。そもそもコメダは「品質とお客様」「人と働きがい」「環境」の3つのテーマで、自社のサステナビリティ活動を分かりやすく紹介してくれている。コメダのサステナビリティ活動を語るにあたり、私は他のコーヒーチェーンのサイトもチェックした。だが、サステナビリティ活動のアピールに関してはコメダが一番充実していると思う。ホームページのデザインや記事の更新頻度を見れば、熱量が伝わってくる。その中からコメダの独自性を感じられる活動を抜粋し、まとめていった。しかし、それで終わってはダメだ。私がコメダを応援していることを伝えないと。私の応援とは、株である。これが私のMoney for Goodの在り方だ。というわけで、株の購入アピールをして締めた。
結果、まさかのMoney for Good賞を受賞。掲載順からして実質4位。周りが真面目な投稿をしている中、私だけが実にふざけた書き方をしている。運営はよくこんなものを選んでくれたものだ。
ちなみに受賞作品の紹介コメントでは「コメダ珈琲店の大ファンであるきなこさん」「コメダ珈琲の推し活として日頃から投稿をされている方」と呼ばれ、noteサイドに私の活動を把握されていることが明らかになった。しかも、株式購入を「究極の推し活」と表現している点がとても力強いと評されていたのだが、そんなこと、今回の受賞作品では一言も述べていない。株式購入を「究極の推し活」として綴ったのは、株を購入した時に書いた別の記事なのだから。定期的に目に留まっているってこと?怖い。
いや、怖いと言いたいのはnoteサイドか。ずっとコメダのことばかり語って、投稿コンテストにも乗り込んでくる異常者が、自分のプラットフォームに棲みついているんだから。もしかして、こいつを一度どこかで受賞させておかないといつまでも投稿企画にコメダをねじ込んでくると思われたのだろうか。それなら大変申し訳ない。私は今後ともコンテストに遠慮なくコメダをねじ込んでいく。どうかコメダを挟む隙を見せないような企画作りを頑張って頂ければと思う。
スタバといえば、Instagram。コメダといえば、note。そう言われるくらいに、読者の潜在意識にコメダを刷り込み続けていくつもりだ。
100年後も、コメダ珈琲店でくつろぎのひとときを。
ここまで沼レベルをお送りしてきたが、皆さんは沼レベルいくつに相当しただろうか。もしかすると、コメダ珈琲店の存在すら知らない、沼レベル0の人もいるかもしれない。また、名前は聞いたことがあるけれど、行ったことはないという人もたくさんいることだろう。そんな皆さん、まずはぜひともコメダのくつろぎの沼を体感して頂きたい。
コメダに通ったり、グッズを買ったりしている人は意外と多いかもしれない。コメダの聖地巡礼となると、ちょっと少なくなってくるか。しかも私の場合、名古屋に用事があるついで、ではない。確かに、初めてのひとり旅においては、傷心旅行のついでという側面もあった。しかし、オールドコメダと呼ばれる古いコメダ珈琲店に訪れる際は、コメダに行くためだけに名古屋を訪れたのだ。
それから、株を購入して株主総会に参加している人も大勢いる。その中で、コメダを推しにしている人はどのくらいいるのだろうか。ネット上ではあまり観測できないが、いつかそんな同志と語らい、共に次なる沼レベルを開拓していければと夢見ている。

最後に、ノンフィクションの番組みたいな質問をしてみようか。あなたにとって、コメダ珈琲店とは?
私にとって、コメダは「推し」である。分かりきった答えかもしれないが、この2文字の重みはこの10年で増す一方だった。なんせ、20代を共に過ごし、支えてくれたパートナーなのだから。仕事の辛さを和らげ、彼氏と別れた喪失感を埋め、ひとりの自由と楽しさを教えてくれた。それは健全な20代女性の生き方ではないかもしれない。それでも、軟弱な私がこの社会を生きる上で、コメダはきっと不可欠な存在だった。30代の私とも、どうか仲良くしてね。

沼レベル7にて、私はnoteの投稿コンテストに見事受賞したことを綴った。その受賞作品のタイトルが、「100年後も、コメダ珈琲店でくつろぎのひとときを。」である。コメダは、100年後も、「くつろぐ、いちばんいいところ」であり続けたいという理念を掲げている。100年後、私はとっくに天寿を全うしているに違いない。でも、コメダは生涯私に寄り添ってくれるし、私の死後もみんなにくつろぎの場を提供し続けるのだろう。
私の生涯の推し。それがコメダ珈琲店である。
