物語をつくるとしたら、どんなお話?①奇想天外な物語を想像してみた【童話】
王国にきらめく
リア王国の森の広場にある、戦い場です。
ハサミは頭をひねり、作戦を考えています。
なんと目の前の敵は、白い長い帽子をかぶったコックなのです。
今日は年に一度、開かれる力比べの日。
国で誰が一番強いのかを決める大会の日です。大会には誰でも参加することができて、決まりごとはとくにありません。
ハサミは、全体がすらっとしていて先が鋭く、どっしりとした握り手は、黒色をしています。ちょっと見たところ、怖そうに見えますが、実は優しい心の持ち主なのです。
(絶対にひとは傷つけてはいけない。いったいどうしたものか)
ハサミが生まれたての頃、もっともっと刃が鋭くピカッと光っていました。得意気に歩いていたハサミは、通りすがりのひとに浅い傷を負わせたことがあります。それはそれは痛そうに泣いている様子が、今でも自分のことのように心の痛みとして残っているのでした。
コックは両手を広げ、構えています。
ハサミもコックも長い間、向かいあったままです。見ているみんなは、息をするのも忘れたかのように、静かに見つめています。
すると、ついにそのときが、
コックが前へ出た瞬間、ハサミは小さくチョキンと音を鳴らすと、コックに向かってすごい勢いで突き進みました。
ジョキ ジョキ ジョッキーン。
低くて鈍い音に、大勢の悲鳴が聞こえました。
ところが、どうしたことでしょう。いつの間にか、悲鳴が笑い声に変わっているではありませんか。
「コックさんのパンツは水色水玉だ」
ひとりの子どもが叫ぶと、笑い声はますます大きくなりました。
「コックのパンツは水色水玉」
たくさんの声が、歌を歌うように聞こえてきます。
顔を真っ赤にしたコックはたまらず、足元までずれ落ちたズボンを上にあげ、逃げるように走りさっていきました。
そう、ハサミが切ったのは、コックのベルトだったのです。
「ハサミの勝ち、準決勝進出」
審判が叫ぶと、今度は喜びの声が嵐のようにわきあがりました。
ハサミの仲間、コーヒースプーン、フルーツフォーク、テーブルナイフは、飛んで跳ねて大さわぎをしています。
♤♢♧♡♤♢♧♡♤♢♧♡♤♢♧♡
一年前、お城の大掃除の日。古びた物置小屋に、ハサミと仲間たちは忘れられ、サビだらけになり、気がつくと、捨てられてしまっていたのです。
たくさんのゴミのなかで、どうしようもない悲しい気持ちで過ごしていたある日、『今年の力比べ大会は、優勝者の願いを叶える』という、王様のおふれがあることを知ったのです。渡り鳥が、話しているのを聞いて、渡り鳥に頼んで運んでもらい、大会に参加したというわけです。
仲聞たちは早くに負けてしまいましたが、ハサミは、これまで仲間の励ましと、見事な作戦で勝ち進んできたのでした。
さあ、次は準決勝。相手は鉄の釜です。
試合が始まってすぐに、釜は、ハサミの周りをごろごろ回りだしました。けれども、ハサミは動くことができません。サビついてしまった刃が開かないのです。
(もはや、これまでか)
ハサミが大きなため息をついたそのとき、ハサミの頭の上を一枚の新聞紙が、ふわーっと飛んでくるのが見えました。
「しめた!」
ハサミは叫ぶと、思いきりジャンプして、あるだけの力でハサミの刃を開き、新聞紙を挟んで釜に投げつけたのです。
すると、どうでしよう。新聞紙は釜におおいかぶさりました。
「うわぁー、なんだ。前が見えないぞ」
そう言って、あわてた釜は、すごい早さて転がり、あちこちぶつかりそうになりながら、あっという間に戦い場からいなくなってしまいました。
戦いを見ていたものたちは、あっけにとられてぼんやりしていましたが、しばらくすると、ハサミの戦いぶりに拍手をおくり、「素晴らしい」「よく考えたね」「大したものだ」と、大いにほめました。
「次はいよいよ決勝戦だね。がんばって!」
コーヒースプーンが声をかけると、ハサミはがっくりと力のない声で、
「もう、戦えない。新聞さえ切ることができなかった。それに刃を開く力なんて残ってないさ」と言って、戦い場から出ていこうとしました。
「あきらめちゃダメだよ。さっきみたいに何が起こるか分からないからね」
フルーツフォークが目を輝かせて言うと、続けてテーブルナイフがニコニコと笑って言いました。
「勝っても、負けてもいいさ。もう一度、夢をみれたんだ。ありがとう」
「もう十分だよ、もういいよ」
コーヒースプーンは心配そうな顔をしています。
ハサミは仲間たちのボロボロの姿を見て、温かい言葉を聞いていくうちに、なにか体中がふるえ、ふつふつと力が湧きあがってくるのを感じました。
ハサミはくるっと向きをかえて、中央に進みだします。
戦いを見ているものたちが、ざわざわとさわがしくなりました。
けれども、ハサミには、周りの声など聞こえません。
「どうすればいい、どうすれば勝てるんだ」
ハサミはぶつぶつ、つぶやいています。そのうち、戦いが始まってしまいました。
「ハサミさん、ハサミさん」
近くでハサミを呼ぶ声がします。
「誰だ!」
「あなたの目の前の敵ですよ」
ハサミは、前をじっと見ておどろきました。
なんと、戦い場の真ん中あたりにいたのは小さなスズメだったのです。
ハサミは首を傾げました。スズメの頭に、ひと粒のお米くらいの赤色模様があります。どこかで会ったような気がしてなりません。
ハサミはうなり声をあげていましたが、しばらくすると、ぱっと顔をあげて、大声をあげました。
「あっ、そなたは、あの時のスズメさんじゃないですか」
「そうです、そうです。助けていただいてありがとうございました」
ずっと昔、お城のみんなでピクニックに出かけたときのことです。鳥の鳴き声があまりにもうるさいので見に行くと、網に掛かってよわっているスズメを、ハサミが助けたのでした。
「元気になられたようで、よかったです」
「はい、おかげさまで。でも、今はハサミさんの方が大変そうですね」
「このとおり、なんともお恥かしい。今のわたしは、あの時のように網を切ることだってできない。もう、なんの力も残ってないのです」
ハサミは、しずかに笑いました。
「どうぞ、願いを叶えてください。わたしは一番大切なものを、あなたからもらいました。それ以上の願いなどありましょうか。またいつか、会いましょう。それでは、お元気で」
スズメは、空高く舞いあがりました。
ハサミは、ずっと気になっていたことを思いだしました。
スズメが、頭に赤い模様のあるきょうだいたちを探して旅していたことを。
ハサミは空に向かって叫びました。
「スズメさーん。ごきょうだいが一日も早く見つかることを願っています」
スズメはチューンと鳴くと、飛びさっていきました。
戦いを見ているものたちは、しばらく空を見あげていましたが、ハサミが王様のもとへと、歩きだしたので、はっとして、大きな大きな拍手をおくりました。
「あっぱれじゃ、スズメのやつ、さては恐れをなして逃げだしたな。見事、よし、よくやった。して、望みはなんじゃ」
「わたしは以前、王様に仕えていたものです」
「はて、そうじゃったかのう」
王様は、頭をぽりぽりかいています。
「はい、王様。お城の大掃除の時、物置小屋に忘られてしまい、捨てられ、わたしは、このような姿になってしまいました」
「ふむふむ、これはすまなかった」
「忘れられたものは、わたしだけではありません」
コーヒースプーン、フルーツフォーク、テーブルナイフが出てきて、おじぎをしました。
「よし、わかった。とびっきりの職人を探して、おまえたちをピカピカにしてやろう」
「王様、ありがとうございます」
ハサミと仲間たちは、声をそろえて言い、喜び合いました。
すると、振り子が動かない時計、ヒビのはいった花びん、ガタガタ音をさせているテーブル、ピアノ……、多くのものが顔をのぞかせ始めました。
王様は困った顔をしていましたが、ついに我慢できなくなり、
「ええい、このさい、みんなまとめて直すぞ。望むものはもうしでよ。国中におふれをだすとしよう」と、叫んだのでした。
「王様ばんざーい」
しばらくその声は、やみませんでした。
こうして、多くのものが生まれ変わり、お城もあちこち直してピカピカになりました。
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国が生まれ変わったお祝いの日です。
鳥たちの美しい歌声や、楽器は音楽を奏で、時計は時を刻み、なんとも国中が賑やかです。
お城の広間では、テーブルにご馳走と花が並び、ピカピカに磨かれたコーヒースプーン・フルーツフォーク、テーブルナイフは嬉しそうです。
ハサミといえば、持ち手の真ん中あたりに大きな赤白のリボンを掛けられ、立派な台の上で誇らしげです。ハサミと仲間たちは顔を見合って、照れくさそうに笑いました。
王様は微笑んで、周りを見回してうなずいています。それからハサミを見てニヤリとしました。
「さあ、ハサミよ、ずいぶんと見違えたな。用意はいいな」
ハサミは、胸をはりました。
「はい、王様」
「テープカットじゃ」
王様は声を張りあげました。
ハサミは、長く張ってある赤白のテープに、勢いよく突き進みました。
チョキ チョキ チョッキーン。
高くて鋭い音が、あたりに響き渡ります。
多くの、喜びの声と拍手が、いつまでも鳴りやみませんでした。

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