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感想『ファイナル・デッド・ブラッド』死の装置はいかに進化したか。

『ファイナル・デッド・ブラッド』が近所の劇場で公開されなかったため、GEOのレンタルでようやく鑑賞することができました。

本作は『ファイナル・ディスティネーション』シリーズの6作目であり、前作『ファイナル・デッド・ブリッジ』から実に14年ぶりの新作となります。

久々の続編ということで少し不安もあったのですが、観終わってみると、このシリーズが長年愛されてきた理由と、それを現代的にアップデートしようとする姿勢のどちらも確かに感じ取れる、満足度の高い一作でした。

■1. 姿なき“死神”というシステムの発明

「ファイナル・ディスティネーション」シリーズは“ホラー・サスペンス”に属する映画ですが、他の作品と決定的に違うのは、「ジェイソン」や「フレディ」のような“キャラクターとしての殺人鬼”が存在せず、“不可視の死=概念としての死神”そのものが敵役となることです。

動機も感情も持たない“死”が、ただ淡々と順番に人を殺しに来る――
その“機械的な理不尽さ”こそが、このシリーズを特別なものにしています。

見えない死神が背景にいることで、観客の視線は細部へ向けられます。 水道から落ちる一滴の水。床に散ったガラス片。電線の小さな火花…。

…どんな些細な現象にも不吉な予感が宿り、クローズアップのたびに緊張が走ります。映画の編集や構図そのものが罠として機能するという点で、本シリーズは“映画という装置”の恐怖表現を一段上の抽象レベルへと押し上げたと言えるでしょう。

なお、この“現象が人を殺す”という発想は『オーメン』シリーズにその萌芽を見れますが、それを徹底的にシステム化し、エンターテインメントとして昇華したのは本シリーズならではの発明だと思います。

■2. 冒頭、実質『タワーリング・インフェルノ』のリメイク?

本作でも、シリーズの伝統である冒頭の大惨事スペクタクルが健在です。

舞台は1970年代のアメリカ。
当時の文化を色濃く反映したレトロな高層タワーで事故が発生します。

古めかしいエレベーター、時代を感じさせる内装、甘い安全基準。
それらすべてが死の連鎖装置となり、壮絶でありながらどこか懐かしさの漂う惨劇が展開します。

熱狂する観光客の足元のガラスにヒビが走る――「ジャンプして叫ぼう!」じゃねーよ!と思わず突っ込みたくなるハラハラ感は、ジュリアン・ムーアの手元のガラスにヒビが入る『ジュラシック・パークIII』のよう。
バーナーの引火から火だるまの惨事へ至るのは『タワーリング・インフェルノ』。展望室の崩落と人々の落下は『タイタニック』。そしてグランドピアノが滑り落ちて人を圧殺させるシーケンスは『キングコングの逆襲』の現代バージョンのようです。

古今東西のパニック映画が誇る“嫌な死に方のつるべ打ち”。 この冒頭のサービス精神だけでも「F.D.シリーズが帰ってきた!」と嬉しくなりました。

しかし今回は、この1970年代という遠い過去の出来事が、物語の新しい軸となっていきます。

■3. 世代を超えて繋がる「死の連鎖」

従来のシリーズでは、事故を生き延びた人々が“死の帳簿”に記載され、その順番通りに命を狙われていきました。

ところが本作では、この連鎖は時間的に閉じていません。

死の運命は、事故当日の生存者だけではなく、“彼らが生き延びたせいで生まれてしまった子どもや孫”にも受け継がれていきます。
つまり、死の運命が血筋に刻印されてしまうのです。

この設定を見たとき、私はリブート版『ハロウィン』(2018)を思い出しました。マイケル・マイヤーズに襲われたローリー・ストロードが40年間怯え続け、その恐怖が娘・孫娘へと影を落としていく――
三世代がひとつの“恐怖の遺産”に向き合う構図は、本作のテーマと響き合っています。

近年のホラーでは“世代をまたぐトラウマ継承”が重要な潮流になっていますが、それを「死の物理法則」として導入した点に、本作のフレッシュさを感じました。

■4. 生まれた年代順に死んでいく――ブラックユーモアの極み

そして、この“世代にまたがる死”の設定が生み出すもう一つの魅力が、
シリーズ特有のブラックユーモアです。

今回の死は、家族の生まれた年代順に訪れていきます。
祖母 → 父 → 長男 → 次男……と、まるで死神が戸籍を確認しながら淡々と作業しているようです。

お葬式の場面が繰り返されるたび、
悲惨な状況なのに、あまりに規則正しすぎて思わず変な笑いが漏れてしまいました。この“笑ってはいけないのに笑ってしまう”という感覚こそ、シリーズが大切にしてきた美学であり、本作では特にその切れ味が鋭く感じられました。

■5. シリーズの未来と、“死の装置”の進化

『ファイナル・デッド・ブラッド』は、シリーズを特徴づける編集・構図・巧みなミスリード・ピタゴラスイッチ的連鎖事故といった
従来の面白さをしっかりと継承しています。

そのうえで、“世代継承”という現代的なテーマを導入した、非常に意欲的な一作でもありました。

近年、「親の世代で負ったトラウマが子ども・孫へと受け継がれてしまう」映画が注目を浴びています。『アイアンクロー』『ブルース・スプリングスティーン 孤独なハイウェイ』など、親の世代からの“負の遺産の連鎖”を扱うドラマが増えているのも、その流れにあります。

そう考えると、“過去の傷をどこで断ち切るか”というテーマは、もはやホラーに限らず、現代社会そのものの問題とも言えるでしょう。本作が“世代をまたぐ死”の構造を取り入れたのも、そうした時代感覚と無関係ではないのかもしれません。

とはいえ、難しいことを考えなくても、本作は頭を空っぽにして楽しめる痛快なホラー映画として十分に楽しめます。シリーズファンの方にはもちろん、シリーズ未見の方にもシリーズの入門編としてお薦めの一作です!


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