私とGoogleに縁がない理由――全盲クリエイターが選ばなかった世界

🌙 はじめに

ある夜、ふとした思いつきで、Googleの「マイアクティビティ」を開きました。

自分がどんな情報を、どれくらいGoogleに渡してきたのか。

ほとんど使っていないつもりだった私の履歴でさえ、細かく分解されて並んでいるのを見て、背筋が少しだけ冷たくなりました。

そのとき、改めてハッキリと自覚したのです。

ああ、やっぱり私は「Googleと縁がない世界」を選んできたんだな、と。

この記事では、全盲のクリエイターである私が、なぜGoogleを積極的に選ばなかったのか。

その理由を、スマホ、地図、ブラウザ、そしてプライバシーという四つの切り口から、正直に書いてみます。


📱 Androidがどうしても「身体になじまなかった」

私のような視覚障害者にとって、スマホは画面を見る道具ではありません。

音声で世界とつながるための、いわば 「耳の延長」 です。

iPhoneにはVoiceOver。

AndroidにはTalkBack。

これまで、Galaxy、OPPO、そして最新のPixelと、何度かAndroid端末を試してきました。

結論から言うと、少なくとも全盲の私には「日常で使えるレベル」には達していませんでした。

画面をタッチしてから読み上げが始まるまで、わずかなラグがあります。

健常者の感覚では誤差の範囲かもしれません。

けれど、音だけを頼りに操作していると、そのコンマ数秒が操作の流れを何度も断ち切ります。

最新のPixelでさえ、フリックしてから読み上げが始まるまで、微妙な「もたつき」を感じました。

タイピング中にこのラグが入ると、思考のリズムが途切れてしまう。

音だけで操作している私にとって、その断絶は地味にストレスがたまります。

日本語の発音も、私にはどうしても耳に引っかかります。

アクセントが不自然で、長時間聞いていると聞き流せなくなり、耳の奥が疲れてくる感覚がある。

改善するには、別の読み上げアプリを導入して、設定を細かくいじる必要があります。

一方のiPhoneは、箱を開けて、VoiceOverをオンにするだけで、すぐ「実戦投入」できます。

もちろん完璧ではありません。

それでも、 「道具として身体にすっと馴染むかどうか」 という一点で、私はどうしてもiPhoneを選んでしまいます。

Googleはアクセシビリティを掲げています。

それでも、少なくとも全盲ユーザーの私にとって、今のAndroidは「頑張れば使えなくはない」レベルにとどまっている。

「安心して身を預けられる」ところまでは来ていない、というのが正直なところです。


🚶 歩行ナビに託した期待と、その挫折

知らない街を一人で歩くとき、私たち視覚障害者は、常に「迷子になるリスク」と隣り合わせです。

だからこそ、Google Mapに「視覚障害者向けの歩行ナビ」が搭載されたと聞いたとき、私は本気で期待しました。

これがあれば、一人で行ける場所が増えるかもしれない。

これまで諦めていた場所にも、自力で行けるようになるかもしれない。

実際に試してみると、その期待はすぐに不安へと変わりました。

案内のタイミングが、どうしても遅いのです。

「五十メートル先を右」と言われたとき、体感としては、もう角を通り過ぎてしまっている。

交差点の直前で足を止めてほしい場面でも、アナウンスが来るのは「少し後」。

視覚情報で微調整ができる人なら、その「少し」は誤差かもしれません。

けれど、音と白杖だけで歩く私たちにとって、その0.5秒は、縁石につまずくか、車道に出てしまうか、誰かとぶつかるか、そういう分かれ目になり得ます。

もちろん、ルートによっては問題なく案内してくれることもあります。

ただ、「今日は大丈夫でも、明日はどうか分からない」という不安を抱えたまま、命綱として使うには、私にはハードルが高すぎました。

結局、私は今でも、人に付き添いを頼む、電話で道案内を受ける、点字ブロックや音響信号に頼る、といったアナログな方法に戻っています。

便利さと引き換えに、命綱をGoogleに預ける覚悟は、まだ持てていません。


🌐 ブラウザでさえ、Googleから完全には逃げられない

長いあいだ、私はFirefoxを愛用してきました。

動作が軽く、読み上げソフトとの相性も良く、何より「非Google」の選択肢であることが、ささやかな安心材料でした。

ところが、ある時期を境に、読み上げソフトとの相性が急に悪くなりました。

フォーカスが飛ぶ。

読み上げ順序が乱れる。

ショートカットが安定しない。

調べものや日々の作業を行う上で、これは致命的です。

どれだけ理念に共感していても、日々の実務が回らなくなっては意味がありません。

結果として、私は今、やむを得ずChromeを使っています。

できれば距離を置きたい相手のサービスに、自分の仕事の入り口を預けている。

この矛盾を抱えたまま、毎日ブラウザを開いているのは、正直なところ、少し複雑な気持ちです。


🕸️ 「逃げようとしても逃げきれない」構造

検索に関しても、私は長いこと、意識的にYahooを使っていました。

理由は単純で、「せめて検索データくらいは、国内企業に渡したい」と思っていたからです。

けれど、ある時知りました。

Yahoo JAPANの検索エンジンは、2010年以降、Googleの技術をベースに動いていることを。

つまり、「Googleを避けるためにYahooを選ぶ」という行為そのものが、すでにGoogleの影響下にあったわけです。

その事実に気づいたとき、「この世界のネットの土台って、こんなにも少数の巨大企業に寄りかかっているんだ」と、軽い眩暈のようなものを覚えました。

2023年7月、Googleはプライバシーポリシーを改定し、ユーザーデータをAI学習に利用することを、より明確に記しました。

あとからルールを変えて、「最初からそういう約束でしたよ」と言われるような感覚。

私はそこに、静かな怖さを感じます。

さらに、Geminiでは、履歴をオフにしていても、会話内容が最長72時間は保存され、人間のレビュアーが確認する場合もあるとされています。

直感的には「履歴をオフにすれば安心なはず」です。

けれど現実には、その直感は規約のすき間で、少しずつ書き換えられていく。

ここで書いていることは、特定の企業を一方的に批判したいわけではありません。

ただ、 「逃げようとしても、土台のところで絡め取られてしまう構造」 が、すでに当たり前になっている。

その事実から、目をそむけたくないだけです。

参照元
Google プライバシー ポリシー(2023年7月1日版)
https://policies.google.com/privacy/archive/20230701?hl=ja

Gemini アプリのプライバシー ハブ
https://support.google.com/gemini/answer/13594961?hl=ja


🔍 マイアクティビティを開いて気づいたこと

この記事を書くにあたり、改めてGoogleの「マイアクティビティ」を確認してみました。

自分がどんな情報を、どのサービスで、どれだけ残しているのかを一覧できるページです。

私は、日常的にはほとんどGoogleのサービスを使っていません。

そのおかげか、細かい行動履歴は、思っていたよりは少ない印象でした。

それでも、広告のパーソナライズ設定はオンになっていました。

自分の興味や属性に基づいて広告をカスタマイズするための設定です。

この機会に、私はそれをオフに切り替えました。

せっかくなので、ここまで読んでくださったあなたにも、ひとつだけお願いがあります。

この記事を読み終えたら、一度だけ、自分のマイアクティビティを開いてみてください。

最低限、次の三つだけを確認してみるのがおすすめです。

ウェブとアプリのアクティビティ がオンかオフか

ロケーション履歴 がどうなっているか

広告のパーソナライズ設定 がオンかオフか

確認はこちらから

https://myactivity.google.com/

おそらく、多くの人が「思っていた以上に、私のことを知っているな」と感じるはずです。


🌍 これは「視覚障害だけの話」ではない

ここまで読んで、「自分は目が見えるし、関係ないかな」と感じた方もいるかもしれません。

けれど、障害の有無にかかわらず、私たちの行動履歴や好み、弱さや迷いまでもが、データとして蓄積され、学習されていくという構造は、誰にとっても同じです。

私の場合、TalkBackのラグや、ナビの遅れは、文字通り「転ぶか転ばないか」の問題になります。

あなたの場合は、もしかすると、つい開いてしまうおすすめ動画、気づけば増えている広告、アルゴリズムが見せてこない情報、といった形で、じわじわと生活を変えているかもしれません。

私がここで書いた「選ばなかった世界」は、視覚障害だけの特殊な話ではありません。

「どこまでを巨大なプラットフォームに任せて、どこから先を自分で選び直すのか」

その境界線を引き直す話でもあります。


💭 おわりに

国産のAIや、日本発のサービスが育っていくことには、大きな期待を抱いています。

技術もデータも、できるだけ自分の暮らす場所の中で循環していく。

そんな選択肢が増えていく未来を、心から望んでいます。

もちろん、現時点では、私も完全にはGoogleから離れられていません。

ブラウザはChromeですし、仕事の都合でどうしても使わざるを得ないサービスもあります。

大切なのは「全部使うか、ゼロにするか」という極端な選択ではなく、どこを任せて、どこを手放して、どこを自分で握り直すか。

そのバランスを、自分の頭で考え続けることだと思っています。

もしこの記事が、そんな小さな「考え直すきっかけ」になれたなら、とてもうれしいです。


読んで良かった、と思ってもらえたら、スキやフォローで応援してもらえると励みになります。

そして、あなたは何を「選ばない」と決めていますか。

よかったら、コメントで教えてください。

あなたの選択の話も、ぜひ聞いてみたいです。


#Google #プライバシー #アクセシビリティ #視覚障害 #全盲クリエイター #テック批評 #デジタルデトックス #AI時代 #情報リテラシー #見えないクリエイター

いいなと思ったら応援しよう!