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資料で終わらない業務コンサルへ──現場の違和感を要件に戻す聞き方

資料はきれいにまとまっている。
会議でも、大きな反対は出ていない。
論点も整理したし、課題も一覧化した。
それなのに、いざ現場に戻すと、なぜか動かない。

業務コンサルやITコンサル、パッケージ導入コンサルの仕事をしていると、こういう場面に何度も出会う。

資料上では合っている。
でも、現場の人はどこか納得していない。
言葉では合意しているのに、運用に入ると手が止まる。
説明を尽くしたはずなのに、あとから別の不満が出てくる。

このとき、資料の完成度だけを上げても、あまり前に進まないことがある。
なぜなら、問題は資料の見た目ではなく、現場の違和感が要件に戻っていないことだからだ。

資料で終わるコンサルと、現場に残るコンサルの違い

コンサルの成果物というと、どうしても資料が目立つ。
現状整理、課題一覧、ToBe業務フロー、Fit & Gap、対応方針、ロードマップ。
どれも必要だし、雑に作っていいものではない。

ただ、資料はあくまで意思決定と実行のための道具であって、資料そのものが現場を変えるわけではない。

現場が動くときに必要なのは、きれいな結論だけではない。
なぜその変更が必要なのか。
今の運用のどこに無理があるのか。
誰の作業が増えるのか。
どの例外を許容し、どの例外を潰すのか。
その判断が、業務の言葉として現場に接続されている必要がある。

資料で終わるコンサルは、現場の発言を整理して、論点に並べる。
現場に残るコンサルは、現場の違和感を拾って、要件や運用条件に戻す。

この差は小さく見えるが、実務では大きい。

現場の違和感は、反対意見とは限らない

現場ヒアリングで難しいのは、重要なことほど、はっきり反対意見として出てこないことだ。

たとえば、こんな言葉がある。

それだと月末は厳しいと思います。
今は担当者が見ているので何とかなっています。
例外はほとんどないです。
たぶん大丈夫だと思います。
そこは運用でカバーしています。

一見すると、軽い補足に見える。
けれど、この中に本当の要件が隠れていることがある。

月末は厳しいという発言には、処理件数、締め時間、承認者の不在、他業務との競合が含まれているかもしれない。
担当者が見ているので何とかなっているという発言には、属人化、暗黙判断、システム外管理、引き継ぎ不能のリスクが含まれているかもしれない。
運用でカバーしているという発言には、本来システムや業務設計に戻すべき負荷が、人の頑張りに押し込まれている可能性がある。

つまり、現場の違和感は、単なる感想ではない。
要件になる前の素材である。

ここを拾えないまま資料化すると、きれいなToBeはできる。
でも、実際の運用では、今まで人が吸収していた歪みがそのまま残る。

聞くべきは、何に困っていますかだけではない

現場ヒアリングで、何に困っていますかと聞くことは大事だ。
ただ、それだけでは足りない。

現場の人は、自分たちの困りごとを、必ずしも要件の形で話してくれるわけではない。
むしろ、日常化した不便ほど、困りごととして認識されていないことが多い。

長く続いている運用は、現場にとって当たり前になる。
毎回Excelで直している。
担当者が目視で確認している。
承認前に電話で根回ししている。
システムに入れる前に別台帳でチェックしている。

外から見ると非効率でも、現場ではそれが安全装置になっていることがある。
だから、単純に廃止しましょうと言っても動かない。

聞くべきなのは、困っていることだけではない。

どのタイミングで手作業が増えるのか。
誰が判断しないと進まないのか。
判断を間違えると何が起きるのか。
例外はどれくらいの頻度で起きるのか。
今の運用で、実は一番怖い瞬間はどこか。

こう聞くと、現場の発言は少し変わる。
不満ではなく、業務条件として話し始めるからだ。

違和感を要件に戻すための三つの視点

僕は、現場の違和感を聞くとき、まず三つに分けて考えるようにしている。

一つ目は、タイミングの違和感である。

普段は問題ないが、月末、繁忙期、締め前、監査前、担当者不在時だけ崩れる業務がある。
これは平均的な業務フローだけを見ていると見落としやすい。
要件に戻すなら、通常時の流れだけでなく、ピーク時、例外時、不在時の条件を確認する必要がある。

二つ目は、判断の違和感である。

現場には、明文化されていない判断が多い。
この場合は通す。
この顧客なら確認する。
この金額なら上長に聞く。
このケースは一旦保留にする。

こうした判断は、システム化や業務変更のときに抜けやすい。
でも、抜けた瞬間に現場は不安になる。
なぜなら、自分たちが守ってきた事故防止の勘所が、設計に反映されていないと感じるからだ。

三つ目は、責任の違和感である。

新しい運用では誰が承認するのか。
入力ミスがあったとき、誰が直すのか。
例外判断は誰が持つのか。
システム外で発生した調整は、どこに記録するのか。

ここが曖昧なまま進むと、現場は表向きには合意しても、内心では不安を抱えたままになる。
そして本番直前や運用開始後に、話が戻ってくる。

現場の言葉を、そのまま資料に貼らない

現場の声を大事にすることと、現場の言葉をそのまま資料に貼ることは違う。

現場の言葉は、まだ業務の温度を持っている。
そこには不安、経験則、過去の事故、顧客対応の記憶、部署間の関係が混ざっている。
そのまま課題一覧に貼ると、単なる要望や愚痴に見えることがある。

コンサルの仕事は、その言葉を冷たく削ることではない。
実行できる形に翻訳することだ。

たとえば、現場が今のやり方じゃないと怖いと言ったとする。
それを抵抗感ありと書くと、現場が悪者になる。
しかし、判断基準が未定義のため、例外処理時の責任所在に不安があると書けば、要件になる。

現場がこの画面だと使いづらいと言ったとする。
それをUI不満と書くと軽く見える。
しかし、確認すべき項目が分散しており、承認前の照合作業に時間がかかると書けば、業務要件になる。

現場が結局Excelが必要ですと言ったとする。
それをExcel依存と書くだけでは浅い。
どの情報がシステムに存在せず、どの判断を補うためにExcelを使っているのかまで戻す必要がある。

言葉を整えるとは、現場の声を丸めることではない。
現場の声が、意思決定に使える粒度になるまで戻すことだ。

コンサルの価値は、答えを持っていることだけではない

業務コンサルの価値は、正しい答えを持っていることだけではない。
むしろ、現場がうまく言えない違和感を、業務上の論点に戻せることにある。

資料を作る力は必要だ。
論理的に整理する力も必要だ。
ただ、それだけでは、現場の中に残っている不安や無理は消えない。

現場の違和感を拾う。
それを感想で終わらせない。
要件、制約、判断基準、責任分界、運用条件に戻す。
そして、関係者が決められる形にする。

ここまでできて、はじめて資料は現場に接続される。

きれいな資料を作ったのに動かないとき、足りないのはスライドの枚数ではないのかもしれない。
現場の違和感が、まだ要件の言葉に戻っていないだけかもしれない。

あなたが最近聞いた現場の一言は、感想として処理した言葉だっただろうか。
それとも、まだ要件に戻せる違和感だっただろうか。

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