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若手が育つ現場と潰れる現場──30代リーダーが放置すると起きること

若手が辞める現場と、残る現場の違いは何だろう。

給料なのか。
案件の大きさなのか。
教育制度なのか。

もちろん、それらも無関係ではないと思う。
でも、現場を長く見ていると、それだけでは説明できない差があります。

同じように忙しい。
同じように不完全。
同じように人手も足りない。

それでも、若手が少しずつ前に進む現場と、静かに自信を失っていく現場がある。

その差は、立派な研修資料よりも、日々どう放置されているかに出ます。

僕はここでいう放置を、単に教えないことだとは思っていません。
もっと厄介なのは、任せているつもりで、実は見捨てられた感覚を生んでしまう放置です。

本人に考えさせる。
自走を促す。
細かく口を出しすぎない。

この言い方自体は正しいように見えます。
でも、前提が揃っていない若手に対してそれをやると、自由ではなく、ただの放流になります。

若手が伸びない理由を、本人の意欲や能力だけで片づけるのは危険です。
なぜなら、その見方をした瞬間に、現場側の問題が見えなくなるからです。

若手が潰れる現場には、だいたい三つの不足があります。

一つ目は、フィードバック不足です。

多くの若手は、何が悪かったか以上に、何が良かったかが分からないまま仕事をしています。
修正指示は返ってくる。
でも、どこが考え方として良かったのかは返ってこない。
すると本人の中には、次もこれでいいという足場が残りません。

毎回、正解のない暗闇から始めることになる。
これは想像以上に消耗します。

二つ目は、仕事の意味不足です。

若手にタスクだけを渡している現場は多いです。
この資料を直しておいて。
この画面を追加しておいて。
この議事録をまとめておいて。

でも、なぜそれが必要なのか。
誰が困っていて、どこにつながる仕事なのか。
そこが抜けたままだと、本人に残るのは作業感だけです。

作業はこなせても、仕事を覚えた感じがしない。
成長実感が薄い現場ほど、若手は早く疲れます。

三つ目は、小さな成功体験不足です。

若手を育てるうえで大事なのは、大きな仕事を早く任せることではありません。
自分の判断が、どこかでちゃんと役に立ったと感じられる瞬間を増やすことです。

ここを間違えると、難しい仕事を渡しただけで育成した気になります。
でも本人からすると、毎回うまくできなかった記憶だけが積み上がる。
それでは自信は育ちません。

潰れる現場には、いくつか共通点があります。

質問すると、まず自分で考えてと言われる。
考えたうえで持っていくと、方向が違うと返される。
では何を基準に考えればよかったのかは共有されない。
レビューでは赤が大量につく。
でも、どう直せば次に再現できるかまでは言語化されない。
少し背伸びした仕事を任されても、途中の確認地点がない。
困ってから相談すると、もっと早く言ってと言われる。

これが続くと、若手は二つに割れます。

一つは、聞くこと自体を諦める人。
もう一つは、過剰に確認しないと動けなくなる人です。

前者は静かに離れ、後者は自走できない人に見える。
でも、どちらも個人の資質だけではありません。
現場の設計がそうさせています。

逆に、若手が育つ現場は、ものすごく丁寧で優しい現場とは限りません。
むしろ、やっていることはシンプルです。

どこまで考えればよいかを明確にする。
何が良かったかを具体的に返す。
次に何を深めるかを狭く示す。

この三つです。

たとえば、仕事を渡すときに、結論だけでなく思考の範囲を示す。
ここは自分で案を三つ考えてきてほしい。
ここは判断材料だけ集めてほしい。
ここは顧客へ出す前に一回僕に見せてほしい。

これだけでも、若手は何をもって考えたと言えるのかが分かります。

レビューのときも同じです。
修正点だけで終わらせず、最初の切り口はよかった、この観点を入れたのはよかった、ここまで自分で整理したのは前進だ、と返す。
褒めるための褒めではなく、再現可能な良さを言葉にすることが大事です。

さらに次の課題も、一気に増やしすぎない。
次は論点を一段深くする。
次は相手目線を一つ足す。
次は結論を先に出す。
このくらいでいい。

若手は、全部できるようになってから成長するのではなく、前より一段進んだと実感できたときに伸び始めます。

ここで30代リーダーがやりがちな誤解があります。

一つ目は、自分も見て覚えたから大丈夫、という誤解です。

たしかにそういう時代もありました。
でも、今の現場は、情報量も関係者も変化の速度も違います。
見て覚えろで吸収できるほど、構造が単純ではありません。
過去の自分の育ち方を、そのまま若手に当てはめるのは危険です。

二つ目は、任せた方が育つ、という誤解です。

これは半分正しい。
でも半分間違っています。
任せる前に、判断の基準と確認の節目がなければ、それは育成ではなく丸投げです。
任せることと、放置することは違います。

三つ目は、忙しいから後でまとめて見よう、という誤解です。

育成でいちばん効くのは、三週間後の面談より、仕事のすぐ後の短い一言です。
あの切り返しはよかった。
その整理は顧客に伝わりやすい。
そこは論点が一段浅い。
この即時性があるかないかで、若手の学習速度は大きく変わります。

若手育成は、特別な教育プログラムの話ではありません。
日々の仕事の中に、学びが残る形を埋め込めているかどうかです。

僕は、若手が育つかどうかは、本人のやる気を測る前に、リーダーが何を見えるようにしているかで決まると思っています。

どこまで考えればいいのか。
何が良かったのか。
次に何を伸ばせばいいのか。

この三つが見えない現場で、若手だけに自走を求めるのは厳しいです。
逆に言えば、ここが見えるだけで、若手はかなり変わります。

若手が潰れる現場は、厳しい現場というより、手応えが残らない現場です。
頑張っても、何が積み上がったのか分からない。
注意されても、次にどう生かせばいいか分からない。
任されても、どこまでが自分の責任か分からない。

この状態が続けば、人は自信を失います。

だから30代リーダーに必要なのは、全部を教えることではない。
若手の成長を、根性や空気ではなく、見える形に変えることです。

任せるなら、判断の線を引く。
直すなら、良かった点も残す。
育てるなら、次の一段だけを示す。

その積み重ねが、若手が育つ現場をつくります。

あなたの現場では、若手の成長を何で判断していますか。
できるようになった仕事の数でしょうか。
それとも、前より深く考えられるようになったことを、ちゃんと見つけられているでしょうか。

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