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顧客と話せるSEが強い、では足りない──上流で評価が分かれる整理力の差

顧客と普通に話せるようになってきた。
会議でも黙らなくなった。
要望を聞いて、その場で確認質問もできる。
それなのに、なぜか上流での評価が伸びない。

この感覚を持ったことがあるなら、たぶん問題は話す力そのものではありません。
足りないのは、話しながら情報を整理し、決めるべき形に変える力です。

実際、上流で信頼される人は、単に会話が上手いわけではありません。
相手の話を受け取ったあとに、論点を分け、曖昧さを見つけ、何を先に決めるべきかを並べ替えています。

ここに差が出ます。

顧客と話せるSEは多いです。
でも、顧客の言葉をそのまま持ち帰るだけの人と、判断可能な材料に変えて持ち帰る人では、その後の仕事の進み方がまるで違います。

前者は、会議のあとにチームが苦しみます。
何が決まっていて、何が未決で、どこにリスクがあるのかが曖昧だからです。
結果として、設計で詰まり、開発でズレが増え、レビューで揉めます。

一方、後者は、会議が終わった時点で整理が始まっています。
たとえば、相手の発言をそのままメモするのではなく、頭の中でこう分けています。

これは要望なのか、制約なのか。
これは事実なのか、期待なのか。
これは今決める話なのか、あとで詰める話なのか。
これは誰が決める話なのか。
このまま進めると、どこで手戻りになるのか。

この整理があるだけで、同じ一時間の会議でも価値が変わります。

上流で評価が分かれるのは、知識量より先に、この整理の差です。

僕は、上流に進みたい人ほど、整理力を三つに分けて考えたほうがいいと思っています。

一つ目は、論点の整理です。

顧客の話は、たいていそのままでは使えません。
業務の困りごと、理想、過去の失敗、不満、社内政治、予算感、希望的観測が全部混ざって出てきます。
その混線した話を、論点ごとに切り分ける必要があります。

たとえば、画面を増やしたいという要望があったとしても、本当に必要なのは画面追加ではなく、入力ミスを減らしたいのかもしれない。
あるいは、承認の抜け漏れを防ぎたいのかもしれない。
つまり、言われた要望を受け取るだけではなく、その奥にある目的まで整理しないと、正しい設計にはつながりません。

二つ目は、関係者の整理です。

上流が難しくなるのは、正解が一つではないからです。
現場担当者、管理職、情シス、運用部門、ベンダー、それぞれ見ている景色が違います。
全員の話を聞いたのに前に進まない案件は、だいたいここが整理できていません。

誰の意見が事実で、誰の意見が希望か。
誰が承認者で、誰が影響を受ける人か。
誰が最後に止める可能性があるのか。

これを整理せずに進めると、途中で必ずひっくり返ります。
逆に、関係者の地図が描けている人は、会議での発言の重みづけができます。
だから無駄に振り回されません。

三つ目は、決める順番の整理です。

ここが弱いと、会議をしても疲れるだけになります。
非機能が未定なのに画面の細部に入る。
運用条件が曖昧なのに入力項目を固めようとする。
現場フローが揃っていないのに例外処理を詰めようとする。

こういう順番ミスは、現場で本当によく起きます。
そして、順番ミスが起きるたびに、関係者は不安になります。
不安になると、細かい論点に逃げます。
細かい論点に逃げると、さらに全体が決まらなくなります。

だから、上流で価値がある人は、答えを出す人ではなく、決める順番を守る人です。

では、整理力はどう鍛えればいいのか。

僕なら、まず会議メモの取り方を変えます。

ただ時系列で記録するのではなく、最低でも次の四つに分けます。

決まったこと
決まっていないこと
前提として確認が必要なこと
リスクになりそうなこと

この四つに分けるだけで、会議後の景色がかなり変わります。
大事なのは、きれいにまとめることではありません。
次に何を確認し、誰に返し、どこを止めるべきかが見えることです。

次に、顧客との会話で、要望をそのまま受け取らない癖をつけます。

それはなぜ必要なのか。
それがないと何が困るのか。
誰が困るのか。
いつ困るのか。
運用ではどう回すのか。

この質問を入れるだけで、話はかなり整理されます。
ここで大事なのは、賢そうに聞くことではありません。
曖昧なまま持ち帰らないことです。

さらに、持ち帰ったあとに、一枚で整理する習慣を持つことです。

論点
関係者
未決事項
次回までの宿題

この四つを一枚に置ける人は強いです。
なぜなら、自分の頭の中だけで分かった気にならず、チームで共有できる形に変えているからです。
上流の仕事は、理解したことそのものより、理解を共有可能な形に変えることで価値になります。

逆に、上流で伸び悩む人は、頭の中では分かっていることが多いです。
でも、それが他人に渡せる整理になっていません。
だから、説明のたびにゼロから話すことになる。
会議のたびに言うことが微妙に変わる。
チームから見ると、分かっているのか分かっていないのか判断しづらい。

これは能力不足というより、整理の技術不足です。

顧客と話せることは、たしかに大事です。
でも、それだけでは上流では足りません。
上流で評価されるのは、会話を情報にし、情報を論点にし、論点を判断材料に変えられる人です。

言い換えると、話せる人ではなく、散らかった情報を前に進む形へ整えられる人が強い。

もし今、顧客対応は任されるのに、なぜか評価や信頼が頭打ちだと感じているなら、伸ばすべきは会話量ではないかもしれません。
論点を分ける力かもしれない。
決める順番を守る力かもしれない。
あるいは、分かったことを一枚に落とす力かもしれません。

あなたの仕事が最近止まりやすいのは、話す力の不足でしょうか。
それとも、整理する力の不足でしょうか。

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