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30代SEが設計だけで伸びなくなる理由──業務価値に翻訳できる人の条件

設計書は書ける。

仕様も整理できる。

開発チームとの会話もできるし、レビューで大きく詰まることも少ない。

それなのに、なぜか評価が伸びない。上流工程に関わっているはずなのに、周囲からは便利な設計担当として見られている気がする。技術的には前より分かることが増えているのに、仕事の重さや責任だけが増えて、キャリアが前に進んでいる実感が薄い。

30代のSEには、こういう停滞感が起きやすい。

若手の頃は、実装できること、仕様を理解できること、設計書に落とせることがそのまま評価につながりやすい。任された範囲を正確にこなし、手戻りを減らし、納期に合わせて成果物を出す。それだけでも十分に価値がある。
ただ、30代に入ると評価される軸が少し変わってくる。

設計できるかどうかだけではなく、その設計が何の業務課題を解いているのかを説明できるか。仕様の妥当性だけではなく、その機能が現場のどの負荷を減らし、どの判断を速くし、どのリスクを下げるのかまで言語化できるか。

ここに差が出る。

設計力だけでは、評価が頭打ちになる

誤解しないでほしいのは、設計力が不要になるわけではないということだ。

むしろ、設計力はSEにとって重要な土台であり、ここが弱いまま上流に進むと、顧客の言葉をきれいに並べただけの危うい成果物になりやすい。

ただし、設計力だけで評価され続けるのは難しい。

理由はシンプルで、設計は多くの場合、成果が内側に閉じやすいからだ。項目が整理されている。画面遷移が矛盾していない。例外処理が考慮されている。データの持ち方が破綻していない。これらは大事だが、評価者や顧客から見ると、できていて当然に見えやすい。

問題が起きなければ目立たない。

問題が起きたときだけ、責任として見える。

ここに、設計担当のしんどさがある。

きちんと考えている人ほど、事故を未然に防いでいる。けれど、未然に防いだものは数字にも会議にも残りにくい。結果として、頑張っているのに評価されない感覚が生まれる。

30代SEが次の段階に進むためには、設計そのものを頑張るだけでは足りない。必要なのは、設計を業務価値に翻訳することだ。

仕様を作る人と、業務価値を説明できる人の差

同じ機能を設計していても、評価が伸びる人と伸びにくい人では、見ているものが違う。

伸びにくい人は、仕様の完成度を中心に見る。入力項目は足りているか、分岐は網羅されているか、画面と帳票は整合しているか、データは正しく保持できるか。もちろん、これは必要な視点だ。

一方で、伸びる人は、その仕様が業務のどこに効くのかを見ている。
たとえば、承認機能を作るとする。仕様だけを見れば、申請、承認、差戻し、再申請、承認履歴、通知といった要素を整理する仕事になる。けれど、業務価値まで見る人は、もう一段深く考える。

この承認は、誰の判断を減らすためのものなのか。
差戻しが多い原因は、入力ミスなのか、判断基準の曖昧さなのか。
承認履歴は監査のためなのか、現場の確認負荷を下げるためなのか。
通知は本当に必要なのか、それとも通知が増えて現場を疲れさせるのか。

ここまで考えると、設計の意味が変わる。
単に機能を作るのではなく、業務の詰まりをほどくために設計することになる。これができるSEは、顧客からも上司からも見え方が変わる。設計担当ではなく、業務を前に進める人として認識される。

30代SEが伸びなくなる原因は、作業の精度不足ではない

30代で伸び悩むSEの多くは、作業が雑なわけではない。むしろ、真面目で、責任感があり、担当範囲の品質を守ろうとしている人が多い。

それでも止まるのは、仕事の説明単位が作業のままだからだ。

基本設計を担当しました。詳細設計を担当しました。顧客と仕様調整をしました。開発チームへの説明を行いました。テスト観点を整理しました。

これらは事実として間違っていない。けれど、この言い方だけでは、読む側には価値が伝わりにくい。なぜなら、何を改善したのかが見えないからだ。
評価される人は、同じ経験を別の言葉で説明する。

申請業務の差戻しが多かったため、入力時点で判断基準が分かる画面設計に変更した。

部署ごとに処理手順が分かれていたため、例外パターンを整理し、共通化できる部分と個別対応すべき部分を切り分けた。

問い合わせが集中していたため、承認状況と対応履歴を見える化し、確認作業の手戻りを減らした。

この違いは大きい。

前者は作業の説明であり、後者は価値の説明だ。30代SEが評価を伸ばすには、自分が何を作ったかだけでなく、何を軽くしたのか、何を防いだのか、何を判断しやすくしたのかまで言葉にする必要がある。

業務価値に翻訳する3つの観点

設計経験を業務価値に変えるとき、僕は大きく3つの観点で見ると整理しやすいと考えている。

1つ目は、誰の負荷を下げたのか。
システムは、誰かの作業、確認、判断、転記、問い合わせ、調整を減らすために存在している。設計した機能が、現場担当者の入力負荷を下げたのか、承認者の判断を速くしたのか、管理部門の確認作業を減らしたのかを考える。

2つ目は、どのリスクを下げたのか。
入力ミス、承認漏れ、二重処理、属人判断、監査不備、障害時の確認遅延など、業務には多くのリスクがある。設計でそのリスクをどう減らしたのかを説明できると、単なる仕様整理ではなく、業務を守る仕事として伝わる。

3つ目は、どの判断をしやすくしたのか。
上流に行くほど、判断の質が重要になる。顧客が迷っているとき、選択肢を並べるだけでは足りない。業務影響、運用負荷、保守性、コスト、将来変更のしやすさを踏まえて、どちらを選ぶべきかを考えられる人が信頼される。
この3つを意識すると、設計経験の見え方が変わる。

画面を作った、帳票を作った、APIを設計した、バッチを整理したという作業の記録が、負荷を下げた、リスクを下げた、判断をしやすくしたという価値の記録に変わる。

職務経歴書にも、評価面談にも残すべきもの

業務価値への翻訳は、転職活動のためだけにやるものではない。現職の評価面談でも、日々の1on1でも、プロジェクトの振り返りでも効いてくる。

30代になると、上司や顧客は細かい作業量よりも、どれだけ仕事の意味を理解して動けているかを見るようになる。特に上流SEやリードSEに近づくほど、設計書そのものより、その設計で何を解いたのかを説明できることが重要になる。

そのためには、普段から記録の残し方を変える必要がある。

作業ログではなく、価値ログを残す。

どの業務で、どんな詰まりがあり、自分は何を整理し、結果として何が減ったのか。定量化できるものがあれば数字で残す。数字が難しい場合でも、関係者の確認回数が減った、判断の手戻りが減った、問い合わせ先が明確になった、運用時の迷いが減ったといった変化を言葉で残す。

評価されない人は、やったことを記録する。
評価される人は、変わったことを記録する。

この差は、時間が経つほど大きくなる。

設計の先に、業務を見る

30代SEが設計だけで伸びなくなるのは、設計力が足りないからではない。設計を価値として伝える言葉が足りなくなるからだ。

仕様を正しく作ることは大切だ。
でも、それだけでは上流の入口で止まる。

これから求められるのは、仕様の後ろにある業務を読み、業務の後ろにある判断を整理し、判断の後ろにある責任やリスクまで見に行くことだと思う。

設計書の完成度を上げるだけでなく、その設計によって誰の仕事が軽くなったのかを考える。機能を増やすだけでなく、その機能によって何の迷いが減るのかを考える。顧客の要望を受け取るだけでなく、その要望が本当に解くべき問題につながっているのかを問い直す。

そこまでできるようになると、SEの仕事は単なる設計担当ではなくなる。

作る人から、業務を前に進める人へ。
仕様を整える人から、価値を翻訳できる人へ。

30代からのSEの伸び方は、ここで大きく変わる。
あなたが最近作った設計は、誰の負荷を下げ、どのリスクを減らし、どの判断をしやすくしたでしょうか。

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