コンサルに行くとラクになる人、苦しくなる人──IT職の経験が活きる仕事、ズレる仕事
今の仕事が嫌いなわけじゃない。
でも、ずっとこのままでいいのかは分からない。
実装はできる。設計もある程度は分かる。現場の苦しさも知っている。
ただ、年齢が上がるにつれて、少しずつ仕事の重心が変わってきた。
自分で作るだけでは前に進まない場面が増えた。
関係者の認識を揃えないと何も決まらない。
仕様の前に、何を決めるべきかを整理する時間のほうが長くなった。
そうなると、ふと考える。
もしかして、自分はエンジニアよりコンサルのほうが向いているのではないか。
あるいは、コンサルに行ったほうがラクになるのではないか、と。
この感覚自体は、そんなに不自然ではない。
IT職として経験を積んだ人ほど、作ることだけでは解けない問題に触れるからだ。
だから、キャリアの途中でコンサルに関心が向くのは、むしろ自然な流れでもある。
ただ、ここで一つだけ冷静に見ておいたほうがいいことがある。
それは、コンサルに行けばラクになる、とは限らないということだ。
正確に言うと、苦しさの種類が変わるだけのことが多い。
エンジニアの仕事には、実装の苦しさがある。
仕様が曖昧なまま進む苦しさ。
手戻りの苦しさ。
技術的な制約と納期の板挟み。
現場では、動くものを出す責任がいつも重い。
一方で、コンサルの仕事には、決めきれないものを前に進める苦しさがある。
問いが曖昧なまま議論が始まる。
関係者は多いのに、責任の所在は薄い。
正解がないまま、方向だけは決めなければならない。
現場のように、コードが動けば答えになるわけでもない。
だから、コンサルに向いているかどうかは、能力の高さだけでは決まらない。
何に疲れやすいか。
何の曖昧さなら耐えられるか。
どんな苦しさなら、自分の中で意味を持てるか。
その違いのほうが、ずっと大きい。
僕は、キャリアを考えるとき、向いているかより先に、どの仕事なら消耗しにくいかを見るほうが現実的だと思っている。
華やかに見えるかどうかではない。
年収が上がりそうかどうかだけでもない。
毎日その仕事を続けたとき、自分の強みが出やすいか、摩耗しやすいか。
そこを見誤ると、肩書きだけ変わって中身はもっと苦しくなる。
では、コンサルに行くとラクになりやすい人は、どんな人だろうか。
まず一つ目は、問いを立てることが苦ではない人だ。
エンジニアの仕事では、与えられた要件をどう形にするかが主戦場になることが多い。
でもコンサルでは、その要件そのものが正しいのか、何を解くべきなのか、そもそも誰が困っているのかを掘り直す場面が増える。
この作業を面倒だと感じる人もいれば、むしろそこに面白さを感じる人もいる。
後者は、コンサルに寄ったときに力が出やすい。
二つ目は、抽象化に耐えられる人だ。
現場では、具体で話せることが強さになる。
どの画面で、どの処理で、どのテーブルで、どこが詰まるのか。
この粒度で話せる人は信頼される。
でもコンサルでは、具体だけでは足りない。
複数の現場で起きていることを束ねて、構造にして、意思決定の材料に変える必要がある。
この抽象化を空虚だと感じる人にはつらい。
逆に、個別の事象からパターンを見つけるのが好きな人には向いている。
三つ目は、他人の論点整理に価値を感じられる人だ。
エンジニアは、自分で作って前に進める感覚がある。
手を動かした分だけ、成果物に近づく。
この手触りが好きな人は多いし、それ自体は強みだ。
ただ、コンサルでは、自分が直接作るより、相手が決められる状態を作ることのほうが価値になる。
資料を作ること自体ではなく、相手の頭の中を整理して、論点を通し、前に進めることが仕事になる。
この役割にやりがいを感じるなら、コンサルの仕事は比較的ラクになりやすい。
反対に、コンサルに行くと苦しくなりやすい人もいる。
一つ目は、実装の手触りがないとしんどい人だ。
これは能力不足ではない。
むしろ、良いエンジニアほどここで苦しむことがある。
自分で作れば進むのに、会議で何時間も方向性だけを議論している。
現場を知っているからこそ、早く具体に落としたくなる。
でもコンサル側では、その早さが逆にズレを生むこともある。
まだ前提が揃っていないのに、解き方だけを急いでしまうからだ。
作ることで前に進めたい人ほど、決めるまでの長さに消耗しやすい。
二つ目は、政治や曖昧さに強いストレスを感じる人だ。
コンサルの仕事は、論理で全部が動く世界ではない。
立場の違いもある。
言えない事情もある。
表向きの論点と、本当の論点が違うこともある。
現場経験がある人ほど、こうした曖昧さを無駄だと感じやすい。
その感覚自体は正しい。
ただ、現実の仕事はその無駄ごと前に進める必要がある。
ここに強い嫌悪感がある人は、コンサルに移ってもラクにはなりにくい。
三つ目は、結論の速さを求めすぎる人だ。
エンジニアは、制約を整理した上で、比較的速く答えを出す訓練をしている。
だから、曖昧な会議や、何も決まらない議論が続くと、かなり消耗する。
でもコンサルの現場では、速く答えることより、間違った問いで走らないことのほうが重要な場面も多い。
つまり、答えの速さではなく、問いの精度が求められる。
ここに重心を移せないと、優秀なのに苦しい、という状態になりやすい。
では、IT職の経験はコンサルでどこに活きるのか。
一番大きいのは、現場現実の理解だ。
机上ではきれいに見える話でも、現場では回らないことがある。
この感覚を持っている人は強い。
運用がどう崩れるか。
権限設計で何が詰まるか。
ユーザー部門がどこで止まるか。
レビューがどこで形骸化するか。
そういう現実を知っている人は、実行可能性の低い提案を減らせる。
次に大きいのは、言葉の精度だ。
IT職の経験が長い人ほど、曖昧な表現の危うさを知っている。
仕様の曖昧さがどれだけ手戻りを生むかを知っているから、論点の置き方が雑になりにくい。
これはコンサルでかなり効く。
ふわっとした言葉をそのまま流さず、何を意味しているのか、どの粒度で決めるべきかを切り分けられるからだ。
さらに、現場との距離感にも差が出る。
IT経験のないコンサルは、どうしても現場との会話で空中戦になりやすい。
でも現場を通ってきた人は、何が理想論で、何が現実的な打ち手かの境目を読みやすい。
この感覚は、提案の質だけでなく、信頼の取り方にも直結する。
ただし、ここで注意したいのは、IT経験があるだけでは十分ではないということだ。
経験は、翻訳できて初めて価値になる。
現場を知っている。
それだけでは、ただの経験者で終わる。
なぜその現場が詰まるのか。
何を変えると前に進むのか。
どの論点から合意を取るべきか。
それを相手の言葉で説明できるかどうかで、コンサルとしての価値は決まる。
つまり、IT職からコンサルに寄るときに本当に見たほうがいいのは、行けるかどうかではない。
今の自分の強みを、作る力から、定義する力、通す力、翻訳する力へ動かせるかどうかだ。
もし今、コンサルに興味があるなら、転職サイトの求人票を見る前に、自分に三つだけ問いを置いてみるといい。
一つ、僕は、答えを出すことより問いを整えることに面白さを感じるか。
二つ、具体を握れない時間に、意味を感じられるか。
三つ、作る苦しさより、決める苦しさのほうを引き受けられるか。
この三つに全部きれいに答えられなくてもいい。
ただ、ここが曖昧なまま、コンサルは上流だから、年収が上がりそうだから、外から見て強そうだから、で選ぶと危ない。
仕事は肩書きでラクになるのではなく、自分の強みが出やすい場所に近づいたときに少しずつラクになる。
コンサルに行くかどうかは、正解探しではない。
自分が耐えやすい苦しさと、耐えにくい苦しさを見分ける作業に近い。
派手さやイメージよりも、毎日どこで削られるかを見たほうが、キャリアの判断は外しにくい。
あなたは、作る苦しさと決める苦しさ、どちらなら引き受けられそうですか。
次に読む:
はじめての方へ:
マガジンの紹介:
IT業界の「技術×キャリア×整える」を束ねるマガジンを公開中です!
ビジネスや心と体を整える良記事が集まってきていますので、
是非、覗いてみてくださいね。
記事は全て無料記事のみです。
気に入って頂けたらマガジンのフォローもよろしくお願いします!
共同マガジンに参加希望の方も募集中です!
<PR>
次のキャリアを考えたい方へ。
求人サイトGreenを応援しています。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます! 