ミンナのウタ・あのコはだぁれ?感想|清水崇ホラー2作を観た
五月終わりごろから、空気の匂いが変わり、空の青さが薄くなった。
すぐに台風がやってきて梅雨入りしてしまったが、道路に植えられた紫陽花が咲き始めてうれしくなる。
私は夏が好きだ。
服が軽いし、洗濯物は乾きやすくなる。
あと、暑いと怪談やホラー映画を見る怖さが軽減される気がする。
多分気のせいだと思うけど、冬の怖い話より夏のホラーが好きだ。
最近、プライムビデオやネットフリックスでホラー映画を漁っている。
見始めたばかりだが、清水崇監督の『ミンナのウタ』『あのコはだぁれ?』は面白かった。
呪怨は見たことがなかったが、清水崇がホラー監督として支持されてきた理由がよくわかった。
怪異の怖さや不気味さが本当にちょうどいいのだ。
音で怖がらせるジャンプスケアもなしで、安心して観られた。
海外ホラーはあれを多用しすぎだと思う。
死霊館シリーズとか。
以下、ネタバレありで感想を書くので、まだ見てない人はご注意ください。
『ミンナのウタ』
【ざっくりあらすじ】
GENERATIONSのメンバーが、ある呪いのカセットテープをきっかけに次々と怪異に巻き込まれていく。
題名を見て教育番組で流れた呪いの歌の話かと思っていたが、画面にGENERATIONSが出てきてびっくりした。
しかも本人役。
女性アイドルグループがメンバー全員で出演しているホラー映画はあるが、男性でやるのは珍しいなと思った。
見覚えがあるのは、関口メンディーと白濱亜嵐しかいなかった。
見ていくうちに思ったのだが、本人役で出演すると演技力の差が割と顕わになる。
私は、演技できないメンバーからキルされていくホラー映画の皮を被った演技力デスゲームだと思って観ていた。
最初に出てきた小森隼は自然な演技で映画に溶け込んでいた。
ははぁ、これが基準で、満たないメンバーから死んでいくのか。
しかし、本人役が死ぬ訳がなかった。
メンバーが行方不明になってライブができなくて、さあ大変とばかりに探し出す話だった。
前半はメンバーの練習風景などが均等に映されていたが、後半に行くにつれて画面に映るメンバーが偏っていく。
白濱亜嵐以外は、次々と消えていった。
ダンサーであり俳優でもあるリーダーしか画面に残れないとは無情だ。
最後はさなちゃん宅で白濱亜嵐の必死の呼びかけにより、メンバー全員無事帰還していた。
たぶん、さなちゃんはGENERATIONSを消したかったというより、自分の歌をもっと広く届けるために利用したのだろう。
ただ、怪異のルールが曖昧なので、観ている側としては「呪いパワーがガス欠したのか?」にも見えてしまった。
劇中歌やライブシーンの曲がよくてライブに行ってみたくなってしまった。GENERATIONSをよく知らなかった私にそう思わせたのだから、アイドルを使ったホラー映画として大正解な出来だったと思う。
「高谷さな」の異常性や鼻歌の不気味さもワクワクした。
出てくる時は、頭を自販機やベッドなどに突っ込んでいて恥ずかしがり屋なのも可愛い。
白濱亜嵐は顔よし、ダンスよし、演技よしで天はこいつに何物与えるんだと思うくらいの活躍っぷりだった。
文句なしのリーダーだ。
あと、探偵のおっさんを昭和世代と馬鹿にする割にはカップリング曲をB面と言うことを知っているのは小生意気で可愛かった。
観終わった後、残らない怖さで夏休みに映画館で観るなら、これくらいでいいよねという満足感のある作品だった。
残穢みたいに異様に後ろや誰もいない部屋が怖くなることはない。
だが、それがいい。
『あのコはだぁれ?』
【ざっくりあらすじ】
夏休みの補習クラスに、「いるはずのない生徒」が紛れ込む。もちろん高谷さなである。
冒頭で、補習を受け持つ君島ほのか先生の恋人である染谷将太がすごい勢いで車に跳ねられて、自販機の下に頭から突っ込むのは笑ってしまった。
最初のシーンがコメディの間合いだったから警戒したが、それ以降は「高谷さな」の怖さが炸裂していた。
前作より人が死ぬし、ちゃんと怖い!
GENERATIONSに取り上げてもらったうれしさでパワーアップした「高谷さな」は、自分に因縁つけてきた女子生徒をまず血祭りにあげる。
今作は「高谷さな」の死亡前後の出来事がより解像度高く語られていく。
彼女は理解されない独特の世界観を持ち、作曲家を夢見た少女ではなく、自分含めて生き物の断末魔を集めたい子だった。
前作で、自分の首にロープをかけ、父親に引っ張らせて殺させた場面は今でも覚えている。
ロープが引っかかると、今度は母親まで呼んできて夫婦で引っ張り始める。あの場面は恐ろしいはずなのに、なぜか絵本の『大きなかぶ』を思い出してしまった。
よいしょ、こらしょじゃねぇんだわ。
お父さん、そんなに頑張って引く前に、まずドアにロープが引っかかってないか確認して。
介護が必要な祖母も隙あらば、顔に濡れふきんをかぶせて苦しめていた。
「高谷さな」の作った曲を聴くと、まず行方不明になる。
そして、テープに日付と名前で録音されると死ぬ。
この辺りの怪異のルールが曖昧なのが少しモヤモヤする。
取り込まれた順ではなく、「高谷さな」が気に入っている順で処理されるのだろうか?
前作に登場した探偵のように生き残っている人もいるし、どうやって回避できるのかがわからない。
曖昧さが怖いというより、「え?どういうルール?また呪いパワーガス欠?」と思ってしまった。
ゲーセンでプリクラに吸い込まれた男子生徒の後に「高谷さな」の家族が入っていって、プリクラに一緒に写っているのはすごく微笑ましい家族写真みたいでよかった。
今作で一番怖かったのは、家庭訪問した君島ほのか先生が食べたカビだらけのお菓子だと思う。
昔、個人商店で買ったどら焼きを食べたら、カビだらけだったのを思い出した。
清水監督は怖がらせようとしているのか、笑わせようとしているのか分からない描写を挟んでくるので侮れない。
このバランス感覚が後味が悪くならないホラー映画のコツなんだろうか。
令和に誕生した新たなホラーアイコンである「高谷さな」の活躍をもっと見たい。
次回作があるなら、映画館に行ってみよう。

