静かな橋を渡る
― 朝を集めるヤマネ シリーズ⑤ ―
朝の川は静かでした。
水面には空の色が映り、
ゆっくりと流れています。
ヤマネは川辺まで歩いてきました。
目の前には、
大きな橋がかかっています。
向こう岸へ行く用事はありません。
けれど今日は、
なぜか渡ってみたくなりました。

橋の手前で立ち止まります。
長い橋は、
向こう岸までまっすぐ続いていました。
ヤマネは深呼吸をします。
そして、
そっと歩き始めました。

コツ、コツ。
小さな足音が響きます。
川の上を吹く風は、
少しだけひんやりしていました。
橋の上には、
ヤマネしかいません。
静かな朝でした。

橋の真ん中まで来ると、
ヤマネは立ち止まりました。
後ろを見ると、
今まで歩いてきた道があります。
前を見ると、
まだ知らない景色が広がっています。

川は変わらず流れていました。
急ぐこともなく。
止まることもなく。
ただ静かに、
前へ進んでいます。
ヤマネはしばらく、
その流れを見つめました。

気がつくと、
向こう岸が近づいていました。
大きな決心をしたわけではありません。
ただ、
一歩ずつ歩いてきただけです。

やがて、
ヤマネは橋を渡り終えました。
特別な景色があるわけではありません。
珍しいものもありません。
けれど、
なんだか少しだけ嬉しくなりました。

ヤマネはベンチに座り、
手帳を開きました。
そして今日見つけたことを書きます。
「渡ってみないと、
見えない景色もある。」
書き終えると、
少しだけ笑顔になりました。

帰るころには、
朝日が高くなっていました。
川は今日も流れています。
橋も変わらずそこにあります。
家へ帰ったヤマネは、
手帳をそっと閉じました。
渡ってみないと、
見えない景色もある。
大きな一歩じゃなくてもいい。
小さな一歩の先にも、
きっと新しい朝が待っている。
そう思いながら、
ヤマネは朝の光を見つめていました。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
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【朝を集めるヤマネシリーズ】
①【朝を集めるヤマネ】
②【雨の日の喫茶店】
③【山の向こうの小さな駅】
④夜明け前の展望台
【「朝を集めるヤマネ」を作るきっかけになった話】
【「朝を集めるヤマネ」を曲にしてみました】
【sunoで作曲してみた】
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