合戦バー【毎週ショートショートnote】
経理一筋で20年が経っていた。
経費に厳しく営業から嫌われることもあるが、会社のために心を鬼にして対応している。その実績を認められ、40代では異例の部長に昇格した。
ただ会社でも家でもストレスを感じ、唯一落ち着けるのが、行きつけのバー『関ヶ原』だった。会社帰りに濃い酒をじっくりと嗜むのだ。
「こんばんは」
「いらっしゃいませ」
いつものカウンター席に座る前に一番奥のテーブルに座っている女性を一瞥した。先月から見かけるようになった女性だ。正直に言って一目惚れした。別に浮気をしたいわけではない。この非日常的な空間でひとときの会話ができればいいのだ。
決戦は金曜日。
マスターの大谷さんに、私からの奢りで女性に『柿のサイドカー』を提供するようにお願いした。そして、従業員の小早川くんが運ぶときに、さりげなく私からの奢りであることを伝えてもらうのだ。
「さあ、よろしく頼むよ」
「やっぱりプライベートですから、ちょっと…」
「小早川卑怯っ!」
(410文字)
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