「調べないほうがいいよ」【せりふ三題噺】
はらとけいさんの企画に参加します。
■セリフ
「調べないほうがいいよ」
■三題
・合皮
・シーグラス
・将棋
深い森に入ると、拳くらいの大きさのシーグラスを見つけた。
…
15歳のカクカが、海の見える喫茶店で住み込みのバイトを始めて一ヶ月が経っていた。誕生日を迎えた日に家を飛び出し、できるだけ遠くへ行く深夜バスに乗ったのだった。
手入れの行き届いた年季の入った合皮のソファーに座っているタナカさんは、今日も将棋盤に向き合っていた。対戦相手がいるわけでもなく、詰将棋に思案しているようだった。いつものホットココアを運ぶとき、前からずっと気になっていたことを思い切って聞いてみた。
「その透明な綺麗なモノはなんですか?」
「シーグラスだよ」
「シーグラス……ですか?」
「海に捨てられたガラスが、波に揉まれて角が取れたモノだよ」
それは将棋盤の上に置かれていた。
「王将なんですか?」
「入り口の蓋だよ」
「フタ……ですか?」
「攻めるんじゃない。守ることを考えているんだ」
「何を守るんですか?」
「調べないほうがいいよ」
…
調べるなと言われると調べたくなるのが人情だ。カクカは深い森に入ると、拳くらいのシーグラスを見つけた。
鉛のようにとても重たかったが、なんとか動かすことができた。しばらく様子を窺っていたが何も起こらなかった。諦めて踵を返すと、目の前に馬に跨って長い槍を構えている騎兵がいた。
(おわり)
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