見出し画像

ハンカチを_12🥁(最終話)_【でこぼこ】【シロクマ文芸部】

( 前 話 / 登場人物と目次 )


ハンカチを取り出して、大量の手汗を拭った。

地震が苦手な凌太は、それにも増して緊急地震速報が苦手だった。あの不快な音を聞きながら、大地震が到達するのを待つ地獄のような時間に耐えなければならないからだ。

しかし、緊急地震速報は誤報だったようだ。地震が来なかったことに安堵すると、凌太は立ち上がり、異変に気づいた。佳雄がいない。佳雄はどこへ行ってしまったのか?

目の前で柵の扉が開いていることに気づいた。

(そんな、まさか?)

凌太は恐る恐る柵に掴まり、校庭を覗き込んでみた。そこには佳雄が倒れていた。

(えっえっえっ、嘘だろ…)
(ないないない、そんなはずはない…)

一旦深呼吸をして状況を確認してみることにした。佳雄は柵の扉に向かって歩いていた。扉が壊れているから気をつけて、と伝えた。突然、緊急地震速報が鳴った。それに驚いて足をすべらせて転落したのだろうか。足元には今朝まで降っていた雨の跡が残っていた。

(やばいやばいやばい、どうしよう…)

扉が壊れているなんて言わなければ、佳雄は確認しに行かなかったはずだ。

(僕のせいで佳雄が転落しちゃったのか?)
(僕は殺人犯として捕まってしまうのか?)
(いや、これは事故だ。僕は何もしてない。何も、していない)

『コツ、コツ、コツ』

(だ、誰か、来る。そうだ、健人だ)

凌太はとっさに階段の建屋の陰に隠れた。

「なんか、ドスンって音がしたな。あれ、扉が開いてる」

健人は独り言をつぶやきながら、柵の扉の方へ歩いていった。

そのとき、凌太に魔が差したのだ。

(健人が佳雄を殺したことにしてしまおう)

凌太はとっさにスマホを取り出して、校庭を覗き込んでいる健人の後姿を撮影した。

【おわり】


(あとがきへ)



(ひとつ前の話はこちらをクリック)

ショートストーリー?をつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。

(【登場人物と目次】はこちらをクリック)

小牧幸助さんの企画に参加しています。
毎週ありがとうございます。

#シロクマ文芸部
#ショートショート
#連載
#でこぼこ

いいなと思ったら応援しよう!

ひろいてん サポートして頂いたら有料記事を購入します!