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看護の手【せりふ三題噺】

はらとけいさんの企画に参加します。

今週のお題は下記の通りです。
■セリフ
「すきま風かな?」
■三題
・胃カメラ
・かに
・レース



「すきま風かな?」

冷たい風が、どこからともなく首筋を撫でた。僕を囲うカーテンの上部がレースになっていて、エアコンの風がそこから入り込んでいたようだ。

「次の方、どうぞ」

左の鼻に短いプラスチックの管を刺したまま、検査室に入った。

「こちら側を向いて、横になってください」

医者の言われがままにスリッパを脱いでベットに横たわった。最近、みぞおちのあたりに違和感があり、ネットで検索すると胃がんやら悪性腫瘍といった恐ろしい病名ばかりが目について、すっかり生きた心地がしなくなっていた。今日はいよいよ人生初の胃カメラ検査だ。

「鼻からだから、比較的楽ですよ」

比較的と言われても初めてだから比較のしようがない。どっちにしろ、苦痛は感じるってことだろう、と思うと逃げ出したくなった。

「症状によっては、組織を採取してもいいですか?」

もう嫌だっ!今日の胃カメラは中止してもらおう、と険しい顔になっていた。

「大丈夫ですよ。かにさんのハサミでちょこっと切り取るだけですから」

医者は片手でチョキチョキしている。僕は観念して無言で頷いた。

「それじゃあ、始めますね」

医者が手にした黒い蛇のようなコードが鼻から体内に入り込んできた。喉を通過するときに嗚咽した。

「楽にしてくださ~い」

楽になんかできるもんかっ!さっさと終わらせてくれっ!心の中で毒ついたとき、急に楽になった。看護師さんが背中をさすってくれていた。手の温もりが背中越しに優しく伝わってくる。

そういえば、看護の看の字には手が使われているな、とぼんやり思っていた。

(おわり)


#せりふ三題噺
#胃カメラかにレース


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