「みぃ物語」#10(入院室 #02)
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私たちがここへ来た日は日曜日。
着いたのは午後3時頃。
日曜日は病院の診察は午前中だけで、夕方からの診察は無いんだって。でも、午後からは入院している子の治療や、手術があるんだって。だから獣医さんたちは午後からも忙しく動きまわっていた。
夕方5時頃かしら、カチャカチャと食器の音がしてきた。缶詰の匂いもしてきた。お家では、ご飯はドライフードがメインだったので、缶詰はたまにもらえるごちそうだった。いつも嗅ぎなれている缶詰の匂いとは少し違ったけれど、何だかおいしそうなにおいだった。
そう、入院している子達の晩ご飯の準備が始まったみたい。
比較的元気で食欲のある子はドライフードをもらっていたんだけど、食欲がない子や病気で一般の食事が食べられない子達は、缶詰や治療用のご飯をもらっていた。茹でたささみをもらっている子や、流動食をもらっている子もいたわ。
看護師さんたちがご飯を持ってくるたびにステンレスの扉を開け閉めするので、ガチャガチャと扉の音がしていた。まだこの音には慣れないから、ついびくっとちしゃうわ。
そんな時間が二十分くらい続いたかしら、看護師さんが私たちの所にもご飯を持ってきてくれた。
「はい、ご飯よ。」
と言って扉をガチャっと開けた。ご飯の入れ物はプラスチック製で、二つの器がくっついているような形をしていた。雪見だいふくの入れ物みたいな形。
それぞれのくぼみにケンタと私の二人分のドライフードが入っていた。

そうよね、私たちは病人ではないから缶詰はもらえないわね。
なぁんて、少し拗ねてみたりする余裕も出てきたんだけど、ケージの外に出てご飯を食べる勇気はまだなかった。
ケンタも同じみたいね。物音も立てずにまだケージの中でじっとしているわ。
入院している子達は、ご飯の時間はおトイレの時間でもあるみたい。外でしかおトイレをしない子は入院室から外に連れて行かれていた。病院には中庭があって、そこでおトイレができるんだって。
病気で動けない子たちは、ペットシーツやおむつでおトイレをするんだけど、その子たちは看護師さんたちが気づいたらすぐに新しいシーツやおむつに替えてくれていた。
だからあまり匂いがしなかったのね。

しばらくすると、食べ終わった子達の食器を看護師さんたちが片付け始めた。まだ食べていない子の食器はそのまま置かれていた。私たちはまだ一口も食べられない状態だったんだけど、
「今は食べられないかもしれないけど、夜中になったら食べられるかもね。」
と言って、看護師さんがフードの入った食器をそのままにしておいてくれた。
そうしてご飯の時間が終わり、扉をガチャガチャする音はしなくなった。これで静かになるかなと思ったけど、少し遠くで鳴いている子の声がした。
それはそうよね、突然こんなところに入れられて一人にされたら悲しくなるわよね。お家に帰りたいわよね。
なんて思ったら私まで泣きたくなってきたわ・・・。
つづく
