天孫降臨──天照大神はなぜ地上統治を託したのか
天照大神を背景にいる最高神として見るだけでは、天孫降臨の重さは見えにくい。彼女の視点から読むと、天孫降臨は誰に秩序と正統性を託すかを決める判断の物語として見えてくる。
天孫降臨は、天上から神が地上へ降りる場面として語られる。そのため、どうしても降りる側の瓊瓊杵尊に目が向きやすい。
けれども、この出来事を支えている中心には、降りる神を送り出す存在がいる。それが天照大神だ。
天照大神は、戦って地上を奪う神ではない。高天原の秩序を守りながら、地上統治の担い手を定め、正統性を渡す判断者として置かれている。
天照大神はどの立場から地上を見ていたのか
天照大神を考えるとき、まず大事なのは、彼女が地上へ直接出ていく存在ではないという点だ。高天原の中心に立ち、天つ神の秩序を保つ側から地上を見ている。
ここでの役割は、先頭に立って動くことではない。誰に地上統治を任せるかを定めることにある。
地上である葦原中国は、天上から見れば秩序を及ぼすべき場所になる。だが、そこにはもともと地上の支配や論理があり、天上の意志だけですぐに治まるわけではない。だから天照大神には、天つ神の正統性をどう地上へ届かせるかという判断が求められる。
この立場から見ると、天照大神は背景にいるだけの神ではない。地上へ降る者を決め、その者に使命を託すことで、天上と地上をつなぐ判断者になる。天孫降臨の骨組みは、この位置から見ないと分かりにくい。
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