「百合子さん、王母娘娘に助けられたの⁉️」2025年2月の台中新光三越ガス爆発事故
夕食を食べ終えた百合子と福原は、テレビでニュースを見ていた。
画面には、イオンモール熊本で起きた爆発事故の映像が映し出されている。
煙が立ち上り、ガラスが割れた建物の様子に、百合子は思わず息をのんだ。
百合子「うわぁ……、これは大変ね。」
福原も真剣な表情で画面を見つめる。
福原「被害が広がらないといいね。」
ニュースを見ながら、百合子はふと思い出したように口を開いた。
百合子「そう言えばね、数年前に台中の新光三越でガス爆発事故があったのよ。」
福原「台中の三越で?」
百合子「そう。確かフードコートが改装中で、七階でガス爆発があったの。」
百合子は静かに続けた。
百合子「そのガス爆発のちょうど二週間後に、新光三越の隣の大葉デパートで食事する予定だったの。」
福原は驚いた表情になる。
福原「……運が良かったというか……。タイミングが悪かったら、巻き込まれてたかもしれないのか。」
百合子はゆっくりとうなずいた。
百合子「私もこの爆発事故を聞いた時には寒気がしたわ。確かにタイミングが悪かったら、私も巻き込まれていたかもしれない。」
少し間を置いて続ける。
百合子「大葉デパートも少し爆発事故の影響を受けたみたいで、食事する予定だったニコさん達が、食事会場を他の場所にしてくれたの。」
福原は黙って聞いていた。
そして静かに尋ねる。
福原「その頃から百合子さんは媽祖を信じていたの?」
百合子は少し考えて答えた。
百合子「今ほどガッツリではないけど、媽祖は信じてた。」
福原も少し考え込む。
福原「じゃあ、これも媽祖に助けられたかな?」
百合子はしばらく黙り、当時を思い返した。
百合子「……うん……。媽祖が助けてくれたかな……。」
そして少し微笑んだ。
百合子「ちょうど私の誕生日に、ニコさんや謝さん達に会う予定で、本当は大葉デパートで誕生会をしてもらう予定だったの。」
福原は目を丸くした。
福原「それじゃあ、本当に助けられたんだな。」
少し笑ってから尋ねる。
福原「その後、ちゃんと媽祖にお礼を言った?」
百合子は少し照れたように笑う。
百合子「う、うん……。王母娘娘にお礼した💦」
福原「ワンムーニャンニャン⁈なんか前に聞いた事ある!、確か花蓮の?」
福原は思わず聞き返す。
福原「台中の後が花蓮行きだったのか?」
百合子「う……うん。」
百合子はうなずいた。
百合子「その時はとりあえず王母娘娘にお礼して、東京に帰ってから媽祖廟に行った。」
福原は「そうか」と小さくうなずいた。
テレビでは熊本の地震とイオンモール熊本の被害が繰り返し報じられていた。
福原はニュース画面から目を離し、苦笑しながら百合子を見た。
福原「百合子さんの生活は、もうほぼ台湾人と同じだな」
少しからかうような口調だった。
百合子も思わず笑う。
百合子「本当にその通りよね……。媽祖にお願いして、何かあったら媽祖にお礼して。」
福原は腕を組み、ふと思い出したように尋ねた。
福原「その時は鹿港の媽祖廟には行かなかったの?」
百合子はスマートフォンを取り出し、写真をスクロールし始めた。
百合子「えっと……その頃の写真は……」
何枚も旅行中の写真をめくっていく。
台中、花蓮、街角の風景、廟の写真――。
百合子「あ!」
百合子の指が止まった。
百合子「鹿港、行ってた!」
画面には鹿港の古い町並みと、媽祖廟で撮った写真が映っていた。
福原「だったら鹿港の媽祖廟でお礼してるはず。」
福原は画面をのぞき込み、安心したようにうなずいた。
福原「ちゃんと媽祖にお礼はしてたんだな。」
少し笑って続ける。
福原「やっぱり媽祖に守られたか。」
百合子はスマートフォンの画面を見つめながら、小さくうなずいた。
百合子「……そうかもしれない。」
爆発事故からわずか二週間後に予定していた台中での食事会。
もし日程が少し違っていたら、自分もあの事故に巻き込まれていたかもしれない。
そう考えると、今でも背筋が寒くなる。
それでも、自分は無事に旅を続け、花蓮へ向かい、東京へ帰ってくることができた。
その後も何度も台湾を訪れ、北港や鹿港、台中で多くの人と出会い、東京媽祖廟でもご縁を重ねてきた。
偶然なのか、それとも導かれていたのか――。
百合子には、その答えは分からない。
けれど一つだけ確かなことがある。
何かあるたびに媽祖へ感謝を伝えたいと思う気持ちは、もう自分の生活の一部になっていた。
福原は湯飲みを持ち上げながら微笑んだ。
福原「まあ、それだけ感謝する相手がいるっていうのも、いいことなんじゃないか。」
百合子も笑って湯飲みを手に取る。
百合子「うん。」
二人は静かにお茶を飲みながら、テレビに映るニュースを見つめていた。
