台湾の味
関帝、観音菩薩への拜拜が終わると、一行は媽祖が安置されている階へ向かった。
線香の香りが漂う中、道士が声をかける。
「拜」
一礼。
「再拜」
もう一度。
「三拜」
三度目の礼を終えると、団拝は次の時間へ移った。
講話である。
百合子は椅子に座りながら耳を傾ける。
(今日は人生の話かな?)
中国語はすべて理解できるわけではないが、単語を拾いながら内容を追う。
「人生……」「修行……」「感謝……」
そんな言葉が聞こえてくる。
ふと隣を見る。
(あれ? 黄ちゃんは?)
黄さんの方を見ると――
眠っている。
(黄ちゃん💦💦)
百合子は少し焦った。
早朝からの参加だったし、慣れない環境で疲れたのかもしれない。
やがて講話が終わり、読経が始まる。
参加者が移動した結果、百合子と黄さんは別々の席になってしまった。
(大丈夫かな?)
少し心配になる。
しかし黄さんは近くの台湾人信徒と、
黄「何ページですか?」
信徒「ここですよ」
とやり取りしている。
(良かった)
百合子は安心して経典を開いた。
⸻
長い読経が終わる。
参加者全員で経典や台を片付ける。
ようやく黄さんと再び合流できた。
百合子「お経難しい💦」
百合子が言うと、
黄さんも笑う。
黄「お経は難しいですよね😓」
百合子「中国語でも難しいの?」
黄「難しいです」
2人で顔を見合わせて笑った。
⸻
1階へ降りると食事の時間だ。
配膳の前に全員で唱和する。
「阿弥陀仏」
「天上聖母」
声を揃えてから食事を受け取る。
黄さんの目が輝く。
黄「わぁ! 台湾のご飯だ!」
百合子「でしょう?」
百合子も嬉しそうだ。
百合子「この前は茶葉蛋が出たのよ!」
黄「本当に台湾と同じですね」
今日は百合子が好きな麻婆豆腐もある。
麻婆豆腐を食べた黄さん
黄「麻婆豆腐辛い🥵」
黄「台湾人てあまり辛いものは食べないんです」
百合子も食べ
百合子「あ…辛いね…」
早速鼻水が出てきた。
黄さんは異国で故郷の空気を感じられることが嬉しいらしい。
⸻
食事を終えると、黄さんが尋ねる。
「この後どうしますか?」
百合子は少し考えてから答えた。
百合子「新宿でカフェ入る?」
黄「いいですね!」
2人は山手線に乗り、新大久保方面へ向かった。
⸻
駅を出て歩いていると、百合子が立ち止まる。
百合子「あ、この神社⛩️」
黄「?」
百合子「宝くじが当たりますように🎯の神社なの」
咄嗟にティーチャートークになる百合子。
黄さんが興味を示す。
黄「行ってみたいです!」
2人は 皆中稲荷神社 に立ち寄った。
境内にはたくさんの絵馬が掛かっている。
よく見ると、
「コンサートチケットが当たりますように」
「良い席が当たりますように」
そんな願い事が並んでいた。
黄「本当に“当たる”神社なんですね」
黄さんが笑う。
2人は静かに手を合わせた。
黄さんも何かを願っている。
百合子も目を閉じる。
(裕一さんと平和な生活が続きますように)
賑やかな台湾の団拝から始まった一日。
最後は静かな神社で、自分の大切な願いを心の中でそっと唱えていた。
