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【荒川】オフィスサンサーラとの25年 19 ARAが生み出した名作「お月見横丁のトラ」 ARA3


 ARAの創刊号からお付き合いいただいた人に、作家の高橋克典さんがいる。俳優と同じ名前で、時々間違えられると本人は言うが、それは多分ネタでしかないと思う。ズングリ胴体に、四角の大きな頭がのっかっている、普通のおじさんだったから間違えようがない。この高橋さんは雑誌にコラムを連載していて、あるきっかけでARAに参加してくれた。
 ARAの表紙はその時期ごとに企画が代わり、最初は荒川領域の動植物、それから、前回書いた荒川土手散歩で出会った人などの写真。そして毎回そのビジュアルにまつわる短い文章を載せていた。この短い文章を書いてくれたのが高橋さん。
 高橋さんは当時、今でもだが日暮里に住んでいて、東京の下町暮らしのベテランで喋り口調も下町っぽい。そのキレのいい文章が、ARAの毎号の雰囲気を作ってくれていた。
 そんな高橋さんが、もっと長いのを書かせてくれ、新しい「荒川ストーリー」を書きたいと言って、荒川流域の、あるかもしれない商店街に暮らす、野良猫トラの物語を書き始めた。これが、ARAの名物連載「お月見横丁のトラ」。
 挿絵は当時、様々な媒体で活躍していた佐々木悟朗さんにお願いした。するととても美しいページができあがった。野良猫トラの目を通して描かれる、あるかもしれない荒川流域の商店街で展開する、さりげなく、ちょっと愛おしい人情話。それに悟朗さんの淡い水彩画がぴったりだった。
 私たちは一人の作家が自在に紡ぎだす、架空の商店街の話を、まるで実在の出来事のように楽しんだ。当然読者にも好評で、情報ページの多い紙面の中で、貴重なホットして読めるページを作ることができた。
 高橋さんは、この「お月見横丁のトラ」に始まり、タイトルを変えていくつかの物語を連載してくれた。
 私たちは、この物語を単行本に、そしてこの物語を原作としての、流域のCATV放送局の独自制作のドラマにしようと動きまわった。この試みは、のちに述べる出来事でのARAの廃刊で頓挫してしまったが。
 高橋さんがARAに連載してくれた「お月見横丁のトラ」は、のちに立派な単行本となった。作家高橋克典氏は、その後も書き続けていて、現在8作目の小説を世に出している。私たちは、その作家の第1作の誕生に立ち会ったことを、今でも幸せに思っている。それでも、「お月見横丁のトラ」のドラマ化は、まだ実現していない。どこかのTV局のかた、どうですか。

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