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オフィスサンサーラとの25年 6 KDD「月刊ON THE LINE」的特集記事の作りかた 3 素直に会いたい人に会いにいく


自由に会いたい人に会える幸運
「月刊ON THE LINE」のもう一つの目玉記事は、今見ると大層なタイトルだけれど、あの時代の勢いは感じる「時代のニューロンとの出会い」。
 様々なジャンルから、毎月1人お客様をお迎えして、じっくりお話を伺う、インタビュー企画。これはどんな雑誌にもありがちな企画で、その人選に、その媒体の特徴が現れる。 
 ではわが「月刊ON THE LINE」はどうかといえば、極めて単純、私が会いたい人に会いにいった。

 自分の媒体を持つことの特権は、普通に暮らしていては会えないし、ましてやじっくり話すこともできない人とでも、媒体があれば、その媒体のステータスに応じてお会いできること。その意味で「月刊ON THE LINE」は、ありがたいことに、KDDという企業のステータスをバックにして、そのとき私が会いたい人たちと、自由にお会いでる幸運に恵まれた。
 ざっと、当時の記事から拾い上げると、ソニー会長の盛田昭夫さん、『風の谷のナウシカ』が大ヒットの宮崎駿さんとか、当時ユング心理学のスターだった秋山さと子さん、ネットワーク論で売り出し中の金子郁容さん、画期的な地球生成論で注目された松井孝典さん、人気のゲーム「ドラゴンクエスト」の製作者千田幸伸さんとか、あまりメディアには登場しなかった、日本最初のエンタメ情報誌『ぴあ』を創刊した矢内廣さんとか、硬軟織り交ぜて、当時の私の関心のバラバラさがよく出ている人選ですね。

 このインタビューのなかで、私は多くのことを学ばせていただいて、その後まで、私の思考の枠組みを影響を与えてくださった方がいらっしゃる。
 その代表は秋山さと子さんですね。
 秋山さんのご自宅で、当時勢いがあったジェンダー論についてうかがうつもりだった。ところが秋山さんは、太古から、女性が体現する増やす性としてエロスを、男たちがいかに恐れ、押しつぶし、従わせようとしてきたかの歴史として、ヨーロッパ史を語りはじめて、キリスト教の根源にある女性恐怖が、いかに近代を閉塞させてきたかを語ってくださった。
 ものすごく面白く、イデオロギーとしてのジェンダーを叫ぶ女性たちに足りない、大切な視点がこれではないかとも思った。

 ちょうど西日が窓からさして、秋山さんの豊かな髪を照らして、おばあさんなのに一気に妖艶な魔女にも見える姿を、巨匠高梨豊はフィルムに収めた。
「女のエロスはね、放っておくと、自然を埋め尽くしてしまうの、それが恐ろしい男たちが、女たちを支配しょうと苦闘する。それが政治の最初なのよ」
 そう語る秋山さんの深い目を、いまでもゾクゾクと思いだします。

 この女性のエロスへの恐怖というテーマの連続で、残念だったのが、宮崎駿さんとの話。実はこの時、私は宮崎作品の一つのアイコンである「少女」について聞きたかった。ナウシカの冒頭、メーベで飛ぶナウシカが発していたエロス、オームの触手に抱かれるナウシカとエロス。でもこの時はそこに突っ込めなかった。媒体のステータスを考えると、近代と反近代としての物語的な、お上品な文明論に終始してしまった。まだ巨匠ではない、若い宮崎さんの描く世界が、「生きるに値する美しいもの」としてあるときに、少女がもつ力とは、みたいな話がしたかった。この願いはまだ果たされていない。

 でも、やはり、いつの時代にも「人」が面白い。
 この対談から、新しい関係も生まれた。ぴあの矢内さんとは、この後も関係が続いて、次に展開する「東京レディコング」の創刊に関わっていただき、ぴあ総研から優秀な女性スタッフを派遣していただいた。彼女は創刊準備の長い道をいっしょに歩き、あの破綻のときにも、最後の力を尽くしてくださった。あっ、倒産のドタバタで、そのお礼をきちんとしていないことに、今頃気づいた。俺って、この辺がだめだなあ。

 とはいえ、まだ日本人が、そこいらじゅうで声高にワイワイやっている時代の、面白い人たちと話せたことは、本当に幸せなことだった。


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