「別冊宝島」の編集者のころ 5 日本のバックパッカーのための「宝島スーパーガイド」創刊!!
こんな感じで元気でやっていて4、5年たったころ、もう1つの大きな企画を動かすことになるんです。「宝島スーパーガイド・アジア・シリーズ」。
ここでまた、旅の企画が復活します。最初の別冊で作ったアジアの旅のガイドブックの、今度はシリーズものです。1カ国1冊の。
今から考えると、あんな大きな企画、よくも出させてくれたものだと。製作原価だって別冊に比べたら何倍もで、シリーズ10冊くらいを予定していたから、大冒険だったはずですが、石井さんはやらせてくれた。でもこのガイドブックのシリーズは旅人の僕としては、20代から持ち続けていた悲願でしたから、まあ、その実現に夢中になった。
まず書き手探しで、これは前の別冊で得た人脈があった。久しぶりにみんなに会って、新しい旅人のために、みんなの旅人の知恵と、知識と情報を一冊にまとめようと言うと、みんなすぐに賛同してくれて、プロジェクトはすぐに動きだした。
例によって香港の文憲さんは、ああだ、こうだとうるさかったけれど、結局一緒に香港に行った。
宝島に入ってから、とにかく忙しくて旅がまったくできなかった。その欲求不満も、原動力になったと思う。ものすごい馬力で企画を立ち上げた。普通の出版社なら数人でやる、新しいシリーズの立ち上げを1人でやりきった。
個人旅行の時代に、ちょうどはまった
ちょうどその時期って、旅行のあり方も、いわゆる団体旅行みたいなものから個人旅行へと移行してきた時期だった。
それにぴったり合った、というよりも、むしろそういう流れをみんなで起こした、ということだったと思う。その流れの1つが、安チケ屋の出現。
安チケット屋なんて、今はもう若い人たちは全然知らないかもしれないけど、当時は飛行機のチケットって、航空会社で正規に買ったらべらぼうに高いわけですよ。いわゆる正規料金。ところが、飛行機の席というのは、繁忙期とか休みの時期とか土日以外は、かなり空いているわけです。航空会社は空席、つまり空気を運んでもしょうがないから、その空席をいろんなルートを通じて格安で売っていた。
その出口の1つが団体旅行用の格安チケットで、これをツアー会社、つまりJTBとか日本旅行とかの大手旅行会社に降ろしていた。そこでその団体チケットを、個人客用にバラ売りする旅行代店があらわれた。
これにバックパッカーたちが飛びつく。飛びつくだけではなくて、商才のあるやつ、コネのあるやっは、そのバラチケットを仕入れて、自分で仲間に売り出した。これが80年代の日本の個人旅行の状況を変えた、安チケ屋の始まりです。つまりバックパッカーたちが、自分たちが売る側に回ったんですよ。そういう連中がたくさんいたわけです。
そういう連中の中で一番大手になったのがHISとか、そういった会社なんだよね。当時はもっと小さいところは山ほどあった。
それから、もう1つバックパッカーの時代を作ったのは、オープンチケットの存在。今はもうないけど、そのチケットは1年間オープンで、帰りは帰る時に予約入れてね、というやつです。今はそんなの売ってないじゃないですか。
だけど当時は、本当に1年間オープンなんて普通にあったからね。だから長旅ができたんですよ。パスポートとチケットだけあれば、あとは何とか帰ってこれる、という時代だった。
ガイドブックの前提は「自分の力で行く」こと
僕が作ったガイドブックも、基本的には、そういう「自分1人の力で旅しよう」ということを前提にしていました。
1人でチケットを探し、情報を探し、当然ですけれども、飛行場からどこへ行くかも自分で決めて、安宿を決めていく。
それと宝島のスーパーガイドが目指したのは、旅の文化ガイド。行こうとする国について、その歴史とか、民族・文化、芸術、有名人、文学とか、流行っている音楽とかも、最低限このくらいは知っておこうという事を、コラム記事で読めるようにした。これが後から出てくるけれど、「地球の歩き方」とは大きく違った点でした。当然どこの国にもある戦勝記念塔、これは日本に連合軍が勝利した太平洋戦争の記念だ、くらいは、知って、敬意を持って接しろとかね。それをきっかけに、自分なりに考えるとこのきっかけにしょうとか。
だから、スーパーガイドには、本当に多様なアジア好きの才能が結集してくれた。
だからみんな喜んで、どんどん書いてくれたね。面白い時代でしたよ。
売れた結果、自分が旅に出られなくなった
だから僕は、一生懸命、上がってくる原稿を編集するわけですよ。
ただ不満はね、忙しくなっちゃって自分が旅に出られないことだった。本人が行きたくて作ったんだから。そのために旅ができることも込みで作った企画なんだけど、これが結構売れるわけですよ。書店では、後半には「地球の歩き方」と並んだコーナーができた。
当時の宝島の出版物の中で、一番売れたんじゃないかな。出せばベストセラーになって。そうすると「じゃあ次々」とやらなきゃいけない。5、6本も同時に抱えなきゃいけない。まあ、めちゃくちゃ忙しい事になってしまった
