フォロワーさんの作品を読んで感想を1万文字書いてみた。(ほりぃさん)
どうも澤檸檬です。
先日、Xのスペースにてペン先の欠片企画会議をしているとこんな案がございました。
『澤檸檬が100万文字の小説を読んで1万文字の感想文を書く』
それに対して、私はこう答えました。
1万文字書いてお金くれるのなら、書きますけど!?
あと、いっぱい宣伝してくれて、多くの方が読んでくれるなら!
そこに返ってきた言葉は『1万文字の感想文があれば、私が1万円で書いますよ』です。
なるほど、だったらやりましょう。
せっかくなら、その案を出してくれて、買うとおっしゃってくださった方の小説に1万文字の感想を書きましょう、と。
あ、他の方も例えば5000円払うから5000文字の感想書いてみろや、みたいな発注がございましたら、いつでも受け付けますよ。
その案をくださったのはこの方!
そして今回読ませていただくのはこちらの作品。
ほりぃさんの短編集でございます。
全てを読んで、1万文字感想を書きますので、おそらく1万円で買ってくれることでしょう。
そしてめちゃくちゃ宣伝してくれることでしょう。
それでは参ります。
まずこの作品のあらすじと言いますか、短編集ですので概要から。
現代もの、歴史、ファンタジー、ホラー……もしよかったらてきとうに開いて暇つぶしに見てくださるとうれしいです
目次からてきとうおよみください
こちらの短編集、現在39話ありまして。
文字数は127662文字。
ここに1万文字の感想を返すということは、およそ10%分の感想を返すことになります。
まぁ、だからなんだって話ですけど、感想の分量としてはかなり多いですよね。
じゃあ、最初の短編の感想から。
1話になっておりますのは、『グラスベースボール!』という作品。
まずは感想文といえば、あらすじで文字数を増やすのが定石ですよね。
これを夏休みの宿題ですると怒られますが。
今回は何でもあり、とにかく1万文字を目指す企画ですので!
それでは、澤檸檬が考えたざっくりのあらすじです。
あらすじ
町はずれの球場で活動する草野球チーム『春日丘ファイターズ』。
小学校六年生の向日葵は、明るく前向きなピッチャー。
仲間の燐や光、そして高校生の悠らとともに、年齢も立場もばらばらなチームで野球を楽しんでいる。
向日葵にとって悠は特別な存在だった。
かつて怪我で肩を痛め、高校野球を断念した彼は、それでも野球を愛し、向日葵たちに基礎から丁寧に教えてくれた。
向日葵は悠に憧れ、彼の背中を追いかけながら成長していく。
ある日、駅前のモニターに映る甲子園の試合を見つめる悠の姿に、向日葵は気づく。
そこにあったのは、隠しきれない悲しみと未練だった。
思わず「高校野球に入らないの?」と問いかけてしまった向日葵に、悠は怒りをあらわにし、「チームをやめる」と言い放つ。
後悔しながらも、向日葵は彼に一打席勝負を挑む。
「私が勝ったら、悠君は一番やりたいことをやってほしい」
三日間の特訓を経て迎えた勝負の日。
向日葵は全力で投げ、悠は全力で打つ。
打球は高く上がるが、必死に追いかけた光が奇跡のキャッチを見せ、向日葵たちの勝利となる。
その後、悠は姿を消すが、数日後、向日葵の前に現れる。
そして「野球部に入った」と告げる。
最初はマネージャーとして。
再び野球の世界に戻る決意をしたのだった。
逆の手でボールを投げ、「投げられるように練習する」と言い残す悠。
その背中を、向日葵は胸にボールを抱きしめながら見送る。
それは、再出発の物語。
いやぁ、強い。
物語として完成されていますね。
これが短編集の1つ目にきているのも、素晴らしい。
作品の構成力と筆力を示すのにはぴったりの作品でした。
本当に名刺代わりになる作品だと思います。
それでは感想を書いていきますね。
感想
この作品は単なる青春野球物語ではなく、『好き』という感情の純度を描いた物語じゃないかなと思います。
そこに痛みや喪失感、絆や感情を混ぜて、とてつもない熱を持たせた作品でした。
向日葵の悠への想いは、恋愛という言葉では足りません。
ただ純粋に『彼が笑って野球をしていてほしい』という願い。
そんな無垢さが物語の中心にありました。
だからこそ、彼女の言葉は時に残酷で、時にまっすぐに心を刺す印象です。
悠の怒りも非常にリアルでした。
怪我で夢を絶たれた人間の痛みは、他人が簡単に触れていいものではない。
これは大前提です。人の痛みはその人にしかわからないものですから。
それでも、向日葵は踏み込んでしまう。
無知だからではなく、彼の悲しみを見てしまったから。
見過ごせないその心には、多くの読者が共感してくれるんじゃないかなと思います。
そこにこの物語の強さがありました。
一打席勝負の場面は特に秀逸でした。
向日葵の全力投球、悠の迷いと怒り、燐の支え、そして光の必死のキャッチ。
これまでの積み重ねが一球に凝縮されており、読者も思わず息を止めてしまうような緊張感があります。
また、光が最後にボールを捕る構図がとても美しかったです。
物語の中心は向日葵と悠ですが、勝負を決めるのは光です。
これは『一人ではなく、チームで戦う』という野球そのもののを象徴しているように感じました。
ちなみに澤檸檬は野球がそこそこ好きです。
日本戦は見ますし、山口に住んでいるので一番近い『広島カープ』の試合を観にいくこともあります。
球場飯最高ですよね。
あの臨場感も好きです。
また暇な時に散歩して、草野球を眺めながらコーヒーを飲んでいることもあります。
だからこそ、このチームでという作品の構成が非常に好きです。
ラストのシーン。逆の手で投げられたボール。
あの一球には未来が詰まっていました。
完全な復活ではなく、『これから練習する』という未完成の宣言。
その余白が、この物語をより瑞々しいものにしていますねぇ。
熱さと痛みと、眩しさ。
何だか夏の匂いがする、まっすぐな青春の物語でした。
どうですか、1話というか1短編作品でここまでおよそ2300文字。
残り、7700文字ですよ。
割といけそうな気がしてきましたね。
まだまだいきますよ。
続いての作品は同じ短編集の2話に収録されている『桃太郎の後ろ姿』という作品。
この作品もまずはあらすじから。
文字数を増やさなければなりませんからね!
大丈夫ですか?
ちゃんとここまで読んでくれていますか?
絶対に読んでくれているはずですよね。
というか、1万文字の感想をWEB小説に書くというのは割と人類未到の試みじゃないですか。
興味を持って読んでくれていると信じていますよ。
じゃあ、あらすじです。
あらすじ
川から流れてきた大きな桃の中から生まれた赤ん坊を、おじいさんとおばあさんは桃太郎と名づけ、大切に育てる。
子のいなかった二人にとって、桃太郎は実の子以上に愛しい存在だった。
まぁこの辺は昔話『桃太郎』と同じですよね。
やがて凛々しい少年へと成長した桃太郎は、ある日突然「鬼ヶ島へ鬼退治に行く」と告げる。
老夫婦は必死に引き留めるが、桃太郎の決意は固い。
二人は月明かりの下で語り合い、彼の宿命を受け入れることにする。
ドラマチック『桃太郎』ですね。
それから老夫婦は、桃太郎のためにできる限りの支度を整える。
鎧や刀、羽織や旗指物を用意するために、大切な反物や家財、畑までも売り払う。
桃太郎には毎日白いご飯を山盛りに食べさせ、自分たちはわずかな稗で飢えをしのいだ。
旅立ちの日、立派な若武者姿となった桃太郎を、二人は笑顔で送り出す。
だがその裏で、家を手放し、粗末な小屋に移り住むことになっていた。
貧しい暮らしの中で、老夫婦はただひたすら桃太郎の無事を祈り続ける。
季節が巡った秋の日、鐘の音とともに宝を満載した車列が村へ戻る。猿・犬・雉を従えた桃太郎が、ぼろぼろの羽織姿で帰還する。宝などどうでもよい。老夫婦にとっては、桃太郎が生きて笑っていることこそがすべてだった。
こうして三人は再び共に暮らし、幸せに生きた。
桃太郎を支える側だったお爺さんお婆さんの視点で、進む新解釈『桃太郎』という感じです。
目の付け所が非常にいいですね。
どんな英雄譚にも、それを支えていた人がいる。
例えば勇者が出てくるゲームでもNPCがいて、魔王を倒してくれるかもしれない勇者に全てを託すような行動をとりますよね。
その人々はどんな気持ちで生きているのか。どのようにして勇者に全てを託したのか。
そんなことを考えさせられる作品でした。
何より、誰しもが知っている桃太郎を題材に選んでいるのも、素晴らしいですね。
誰でも想像できるし、物語の全てを説明されなくても理解できるのがいいですねぇ。
ワンアイデアが貫かれているのに、ドラマ性もあり、読みやすい良作です。
それじゃあ、しっかりと感想を書いていきましょうか。
感想
鬼退治の英雄譚というよりも、『親の祈り』を描いた物語でした。
しかも実の子じゃなく、桃から生まれた子を愛おしみ、祈る。愛情とはどういうものなのか、考えさせてくれる作品です。
従来の桃太郎は武勇や勧善懲悪が中心ですが、本作では視点が徹底して老夫婦側に置かれていました。ここがまず斬新で、作家としての柔軟性を見せつけてくれます。
鬼との戦いは描かれず、代わりに描かれるのは、送り出す側の痛みと覚悟でした。
そこにこの物語の新しさと深みがありますね。
特に胸を打つのは、鎧や刀を揃えるために家や畑を売り払う場面です。
表向きはにこにこと笑い、白いご飯を山盛りに食べさせながら、自分たちは稗を分け合う。
その無言の愛情は、どんな宝よりも尊い。
それに気付けるのは、大人になった今なんじゃないかなと思います。
特に澤檸檬は虐待サバイバーですので、親の愛情に対して理解が及ばない部分があるのですが、そこをしっかりと可視化してくれていて、納得できる作品は稀有だと思っています。
この作品で、少し『愛情』について理解できたんじゃないのかな、と。
こんな親が欲しかった、と。
また、桃太郎が『神仏の遣わした子』だと理解しながらも、『それでも自分たちの子だ』と思う心情がとても人間的で美しかったです。
宿命よりも血縁よりも強いものとしての愛が、静かに描かれていました。
帰還の場面で宝がどうでもよいとされる構図も見事です。
物語の焦点は一貫して『無事でいてくれること』にありました。
だからこそ、ぼろぼろの羽織姿の桃太郎がいっそう尊く見えます。
ここの描き方が、本当にいいんですよね。
華やかな冒険を裏側から照らし出すことで、英雄譚が家族の物語へと昇華している。温かさと切なさが同居した名作でした。
この『桃太郎の後ろ姿』はほりぃさんの作品の中でも、かなり好きな作品です。
ぜひ作品自体を読んでいただきたいですね。
というか大丈夫ですか?
ここまで読んでくれている人、いますか?
誰も読んでいないと、結構ショックですよ。
少なくとも、本人は読んでくれていますよね。
点呼しますよ?
はい、読んでくれている人は手をあげてください。
さて、ここまででおよそ4300文字。
まだ半分もいっていませんが、澤檸檬の情熱は枯れていません。
むしろ熱が上がっております。
だって1万円が飛んでくるわけですからね!
もちろん、ほりぃさんだけじゃなく、他の方からのチップも期待していますよ!
ああ、楽しみですねぇ。
それじゃあ次の作品に行きましょうか。
続いて読む作品はこちら。
『公園でのんびりしてたらトラックが突っ込んできてぽんこつ女神の世界にデバッカーとして転生しました』です。
いきなり作品のテイストが変わってきましたね。
これこそまさに『ごった煮』です。
いろんな作品を自分のペースで読めるのが、この作品集というか短編集のいいところですね。
ほりぃさんという作家が、さまざまな引き出しを持っていて、その一部を覗き見できるような感じです。
この作品集を読むことで、作家としていろんな部分が刺激されて、創作意欲が湧いてくるような気がしています。
ですので、アイデアが枯渇し始めた気がする作家さんにもおすすめですね。
さて今回も例に漏れず、あらすじからいきましょう。
あらすじ
ライトノベル好きの高校生・片桐刃(ジン)は、公園で読書中に突如トラックに轢かれ、白い空間で目を覚ます。
まぁ、異世界もののテンプレですー、って感じですね。短編だとこういうテンポ感も大事です。
そこに現れたのは、自称女神ファルリム。
彼女はジンを、自らが初めて創造した異世界『ライトラム』の『デバッカー』として転生させると言い出す。
半ば強引に送り込まれた異世界は、いきなりステータスが文字化けし、村人は『(テキストがありません)』しか話さず、スライムを倒せば五千兆ゴールドが降ってくるなど、深刻なバグだらけの未完成世界だった。
原因は創造主であるファルリムの調整不足。
しかも彼女はどこかぽんこつ気味で、聖剣を呼べば自分に刺さり、盗賊のはずの敵が突然ラスボス級の魔王に変貌するなど、イベントフラグも崩壊している。
それでもジンは、理不尽な展開と戦いながら魔王(盗賊)を撃破する。
しかし世界の混乱と危険に嫌気がさし、元の世界へ帰りたいと強く訴える。
だがファルリムは彼を手放そうとしない。
異世界は未完成。
女神はぽんこつ。
そしてジンの冒険は、まだ終わらない――。
いいですね。
ネタに振り切った作品は結構好きです。
合間の時間でサクッと読むなら、こういう作品ですよね。
どのタイミングで読んでもいいし、重い設定で疲れることもない。
ほりぃさんの短編集をブックマークしておくと、仕事の合間だとか、作業の途中だとか、移動の時間に非常に役立ちます。
まぁ、中にはすごく考えさせられる作品も、澤檸檬を驚かせるためのホラー作品もございますが。
それでもブックマークしておくと、結構いいです。
推奨します。
さて、感想を書いていきましょうか。
感想
とても勢いがあり、読者を一気に物語世界へと引きずり込む、メタ構造全開の異世界コメディ作品でした。
まず特筆すべきは、『異世界転生あるある』を徹底的に理解したうえで、それを正面からなぞるのではなく、あえて逆手に取り、解体し、再構築している点にあるんじゃないですかね。
トラックに轢かれて転生、女神による説明パート、ステータス表示、スライムとの初戦闘、聖剣召喚。
いわば読者が安心して期待できる王道の導入装置をすべて丁寧に用意しておきながら、それらを次の瞬間にはバグらせてしまう。
その大胆さと構造的な遊び心が、本作の最大の魅力だと思います。
特に印象的なのは、「(テキストがありません)」という表示や、五千兆ゴールドの突然の降臨など、本来であれば制作側のミスや未調整として処理されるはずの『ゲーム的欠陥』を、そのまま物語上のギャグとして昇華している点。
通常の異世界ファンタジーであれば隠蔽されるべき不具合を、あえて露出させ、物語世界の一部として組み込んでしまう。
この発想は単なるパロディに留まらず、『物語とは何か』『ゲーム的世界観とは何か』というメタ的問いにまで踏み込んでいます。
世界そのものが未完成であることを前提に進行するため、読者は常に『物語の舞台裏』を覗きながら笑うことになる。その構造が非常に巧妙です。
小説というかライトノベルを理解し、その王道をしっかりと踏襲していないとこの作品は書けませんね。
ここまで振り切った作品を書く勇気と熱量に、感動すら覚えます。
あと普通にマジで面白かったです。
作品全体の話をするとテンポの良さも際立っていました。
ボケ役である世界自体と女神ファルリムが次々と予測不能な事態を引き起こし、それに対して主人公ジンが現代的かつ冷静なツッコミを入れる。
この役割分担が明確で、しかも的確に機能しているため、読者は安心して笑いの流れに身を委ねることができると思います。
ジンのリアクションは決して過剰ではなく、あくまで常識的な視点を保ち続けるんですけど。
その『普通さ』が、崩壊しかけた世界観の中で唯一の錨のように機能しており、物語全体のバランスを整えています。
ボケが暴走すればするほど、ジンのツッコミが冴え渡る構図は、漫才的構造を物語形式へ落とし込んだ成功例と言えるんじゃないでしょうか。
本当にコントのように読めますし、読み口もスッキリしているので、いつでも読んで笑える作品でした。
ここにほりぃさんの作家としての能力が垣間見えます。
ファルリムというキャラクターも非常に魅力的でした。
高慢に『創造主』を名乗り、全知全能を気取って登場しながら、実態は調整不足のぽんこつ女神。
この落差がまず印象的で、クスッとしてしまいます。
しかし彼女は単なるギャグ要員ではありません。
時折見せる必死さや焦燥、涙を浮かべる姿には、未熟ながらも世界をなんとか成立させようとする責任感のようなものが滲んでいます。
だからこそ読者は、彼女を一方的に嘲笑するのではなく、どこか憎めない存在として受け止めることができるのだと思います。
人間臭さがあって、本当にいいキャラクターです。
興味深いと思ったのは、ファルリムの未熟さと世界の未完成さが直結している点です。
彼女が創造主である以上、世界のバグや矛盾は彼女自身の未熟さの反映でもある。
つまりこの物語は、『制作途中のRPG』を舞台にしているのではなく、『制作途中の創造主』を描いているとも言えます。
世界が揺らぎ、ルールが破綻し、ステータスが暴走するのは、創造主が未熟だから。
その構造が物語の根幹に据えられているため、ギャグの一つ一つが単発のネタではなく、テーマ性と結びついているのです。
笑わせるためだけの色物、ではなく。
しっかりとした物語になっているんですよね。
だからこそ、しっかりと読めるんです。
また、終盤でジンが思わず「帰りたい」と叫ぶ場面は、本作が単なるギャグコメディに終わらないことを示しています。
異世界という舞台は、多くの作品において『現実からの救済』として描かれがちです。
簡単にいうと、現代人の理想を作品にしているというものが多いですよね。
異世界で無双したい、とか。
こんなことがしたい、とか。
しかしこの作品では、憧れのはずの異世界が未完成で不安定であり、必ずしも理想郷ではない。
その中でジンが見せる葛藤、異世界へのワクワクと、現実への未練や帰属意識は、笑いの裏側に確かな『芯』を与えています。
メタギャグで読者を笑わせながら、『現実とは何か』『逃避とは何か』という問いをほのかに忍ばせている点は、作品に奥行きを与える重要な要素じゃないでしょうか。
総括をしますと、本作はテンポ、発想力、そしてメタ視点という三つの強力な武器を備えた作品です。
王道を理解しているからこそできる裏切り、崩壊させながらも破綻しきらない構造、そしてぽんこつ創造主と冷静なツッコミ高校生という絶妙な関係性。
そのすべてが噛み合い、独自の世界観を形作っています。
これまでのインプットとアウトプットをしっかりと活かした『ほりぃさんじゃなければ書けない作品』だと思います。
物語がこのまま暴走し続けるのか、それとも未完成の世界が少しずつ“完成”へ向かっていくのか。
ファルリムは本当に創造主として成長するのか。
ジンは帰るのか、それとも残るのか。
笑いの中に確かな物語的推進力が宿っているからこそ、続きが気になって仕方のない傑作だと強く感じました。
いやぁ、普通に面白かったですね。
一見するとどうしても色物ギャグに見えがちですけど、しっかりとした土台があって、非常に読み応えのある短編作品でした。
えっと、大丈夫ですか?
まだ読んでくれている人はいますか?
ここまででおよそ7800文字。
あと2200文字ですけど、最後までついてこれますか?
しっかりと最後まで走り切りますので、澤檸檬の勇姿とほりぃさんの短編作品を見届けてください。
1万文字感想文の後に澤檸檬は何を思うのか。
そして1万円のチップは届くのか!(ここ重要)
次の作品に行きましょう。
続いての作品は『機械人形は幸せな過去に手を伸ばす』です。
まずはあらすじから。
あらすじ
未来の社会。
メイドロボが一般化した時代に製造された旧式機『MD-2256』通称レイアは、ある屋敷で少年ヴァンに仕えている。
彼女は常に敬語で、正確な時間管理と膨大なデータ処理能力をもって日々の業務をこなす存在だ。
幼いヴァンは彼女の膝で眠り、『レイア』と名を呼ぶ。
だが成長するにつれ、『坊ちゃま』という呼び方をやめてほしいと頼むなど、レイアとの関係は微妙に変化していく。
レイアはそれを『学習対象』として処理するが、説明不能な『エラー』が徐々に増えていく。
やがてヴァンは縁談によりマリアと結婚する。
式の直前、ヴァンは衝動的にレイアへ口づけをし、『ごめん』とだけ告げて去る。
その出来事はレイアの内部に深刻な不具合を残す。
時は流れ、ヴァンは家庭を持ち、子どもも成人する。
旧式となったレイアは次第に仕事を新型機に譲り、暖炉の前で過去の記録映像を再生する日々を送る。
データの破損、頻発するエラー。
それは単なる経年劣化なのか、それとも。
老い、病に伏したヴァンはレイアに問いかける。
『望みはあるのか』と。
プログラム上『望み』を持たないはずのレイアは答えられない。
しかし彼の死後、彼女は初めて『願う』。
論理も構文も破綻した祈りを神に捧げる。
それは、ロボットが『心』を獲得した瞬間だったのかもしれない。
再起動ののち、レイアはどこへ向かうのか。
物語は余韻を残して幕を閉じる。
ということで。
これまでの作品とジャンルが違いすぎて、びっくりしますよね。
まぁこれが短編集のいいところでもあるのですが。
様々な作品に触れて、いろんな感情を刺激してくれる。
これが『ごった煮』でございます。
さてさて、それでは感想に参りましょう。
感想
この作品の最大の魅力は、『感情を持たないはずの存在』の内面を徹底的に無機質な文体で描き切っている点じゃないでしょうか。
(これが作品に考える楽しみや、感じる喜びを与えてくれると思います)
レイアは終始、敬語と定量的な表現で語るのですが。
その機械的な精密さが、逆説的に感情を強く揺さぶってくれます。
特に秀逸だったは、『エラー』という表現の使い方。
物語が進むにつれて、このエラーは単なる機械的不具合ではなく、抑圧された感情の発露のようにも見えてきます。
ヴァンの成長、結婚、そして死。
それらの局面ごとに発生するエラーは、彼女の中に芽生えた『理解不能な何か』を示しているんですよね。
ヴァンとの関係性も丁寧に書かれていました。
少年期の膝枕、思春期の距離、結婚前の口づけ、そして老境の問いかけ。
人生の節目ごとにレイアは常に傍らにいる。
けれど決して中心にはなれない。
その構図が切ないんですよ。いいですねぇ、本当に。
とりわけ結婚式前のキスは象徴的でした。
ヴァンの「ごめん」は、叶わぬ想いへの謝罪であり、同時に彼自身が越えられなかった境界線の証でもあるんなじゃないでしょうか。
ロボットと人間。所有物と家族。
その曖昧な位置にレイアは置かれ続けます。切ない!
終盤、ヴァンが「君は家族だ」と語る場面は物語の核心だと感じました。
レイアはそれを否定も肯定もできない。
ただ握る手に力を込めてしまう。
その『無意味な動作』こそが、彼女に芽生えた心なのでしょう。
そして最後の祈り。
論理を失い、構文が崩れ、敬語さえ揺らぐ。
ここで初めてレイアは『思う』という行為を自覚します。
『願う』という概念は、プログラムにない。それでも願ってしまう。
ここにこの作品の感情的クライマックスがありました。
構造としては非常に美しく、暖炉・膝枕・再起動といったモチーフが円環を描く形で配置されていました。
時間の経過を数値で示しながら、同時に『取り戻せない時間』を強調している点も巧みです。
一貫して、切なさを書いているのが、感情を揺らしまくってくれます。
なんか、読んでいてしんどいわけでも、重すぎるわけでもないのに、読後が映画を1本観た時のような感覚です。いい物語に触れた証拠かもしれません。
まとめますと、これは単純に『ロボットが心を持つ物語』ではなく、『心とは何かを問い続ける物語』でした。
心はプログラムか。記憶の蓄積か。それとも誰かを想うという不可解な衝動か。
そんなことを考えさせてくれます。
静かな語り口でありながら、読後に深く胸へ残る作品でした。
暖炉の前のソファーに、もう誰もいない光景。
その余白こそが、本当の余韻なのだと思います。
本当に素敵な作品でした。
ちょうどいい重みと言いますか、心にしっかりと残る存在感を放った作品です。
この作品だけでもぜひ読んでいただきたいと思う、澤檸檬おすすめの1作です。
さてさて、ここまで同じ短編集の中からいくつかご紹介し、感想を書いてきました。
その文字数、なんと9500文字を超えています。
ここで最後のまとめに入ると1万文字を超えるでしょう。あ、たった今、超えました!
当初の目的である『1万文字を超えた感想』を若干見失いつつ、普通に読書を楽しんで、その読書の記録を残した感じにはなってしまいました。
この企画というか記事は、そもそも提案してくださったほりぃさんのために始めたものですが、同じことがして欲しいという方はぜひ正式にご依頼ください。
断ることはございませんので。
誰に頼まれても、やります。
というか何文字をいくらで! みたいな提案をしてみてください。
当然ですけど300文字の作品に1万文字書くのは多分、難しいですから。
やってみたいですけどね。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
この感想文も、ほりぃさんの作品も、同時に楽しんでいただけたら幸いです。
戦いを挑まれるとしっかり受ける、澤檸檬がお送りいたしました。
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少しでも応援の気持ちをいただければ幸いです。
もちろん、読んでいただけるだけで嬉しいですし、シェアなんて感涙ものです。