春休み企画! 全員掌編掲載祭り! その①
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『恋愛しないの卒業式』uzki/柚木まお:その①
春が冬を追い越した頃。
私は君を見つけてしまった。入学式の始まる前、桜並木の真ん中で。まだあの頃は桜もつぼみだったね。
ピンクがよく似合っている彼。鷹木志恩くん
私よりもサラサラの髪で、あの時顔はよく見えなかったけど。
あれから気づけば大人になってしまった。
もっと貴方のこと知りたかったな。
私はそんなことを思い出しながら母校に続く通学路を歩いている。なんだか懐かしい。
私はとある用事をしに母校に行く最中だった。
ふと思い出したこの後悔はきっと、大きな落とし物かもね。
また恋をやり直せたらこの未練も卒業できるのかな。
さ、気づけば最後の横断歩道だ。時刻は8時9分
青に変わりポッポ、ポッポと音を立てている。なんで信号の進めって青って言うんだろうか。
そんなことを思いながら、私は歩みを進め……
"ガシャン"
…あれ?私が空飛んでる?夢?
"バタン!!"
「気を確かに!誰か救急車を!!」
そんな声が遠くで聞こえるな。空を飛んだ先にも救急車あるんだ。
あれ、痛いなぁ。夢でも痛みを感じるんだ。すごいや。――
「咲紀起きなさーい入学式遅刻するわよー」
「はーい」
入学式?私はもう大人になったはずじゃ?
眠気覚ましにスマホを見たら4月1日。
なんだ嘘じゃん。エイプリル・フールなんかに騙されないもんね。
「だーかーらー!入学式遅刻するって言ってますよー!」
「お母様、良い朝ですね。入学式は嘘ですよね?」
「咲紀まだ夢の中なの?」
「いつまでも夢の中だよ」
「早く朝ごはん食べて制服着ちゃいなさい」
お母さんは私が起きたのを見てそそくさと階段を降りていった。
仕方ないなぁ、今日だけ夢をみますか。
なんだかんだでまた通学路を歩いてしまっている。
昨日最後だと思った通学路。校舎、桜並木も当然あるだろうな。四月だもんね。きれいに咲いているかな。
あの日のリベンジ。私の、私のための恋愛をするんだ。落とし物拾うんだ。
昨日入れなかった校舎には入学式と書いてある幕がかかっている。
「本当に入学式なんだ、嘘じゃないんだ」
そうだ、こうしちゃいられない!
志恩くんを探さなきゃ!
思った通り桜並木の真ん中に志恩くんはいた。
あの頃と同じだ。
「しお…、あ!」
おっと、私がもし志恩くんの名前を呼んだら怪しまれちゃう。
「あのぉ~すみません、入学式に来たんですけど緊張で一人じゃ行けそうにないので」
「ん?じゃあ行こうか。」
「え!いいんですか」
「なんで断らなきゃならないの」
「え、いやなんとなく?」
「なんで君は疑問形で聞いてくるんだい?」
「ううん、いいの。ありがとうね」
「ここで会えたのは何かの縁が必然か…」
「え?」
「え?」
「だってなにか言ったでしょ」
「聞かれちゃったね」
「いいや、あれは私のこと忘れてた感じだったもん!」
「そんなことはないよ、きっとね。さあ行こうか、遅れたらヤバい」
「誤魔化したね?」
この会話で幕開けた私の落とし物探し。恋探し。
入学式が終わって教室に来た。昨日行きそびれた教室に。
一年生は一階だったね。あの頃は新しい環境でドキドキだったからほとんど何も覚えていないや。
ああ、懐かしい。このワックスの匂い。
「担任の二ノ宮です、自己紹介は明日お願いしますので考えておいてくださいね。それでは今日は解散」
二ノ宮先生、何故か初々しいな。また仲良くなれるかな。
昨日までの後悔は二ノ宮先生にありがとうを言いそびれたことかも。
そう思うとたくさん落とし物してきたみたいね。
それでも、あの日の好きはあの日のものだったのかもしれない。
「ああ、本当に戻ってきたんだなぁ」
なんだ、こんなに輝いて見えてたんだ。高校生ブランド。この日々は毎日がキラキラして見える。
この春は、もう私の知ってるあの頃とは少しずつだけど変わっているのかもしれない。
『門出の音楽隊』笑来(シキ):その①
薄い桃色が優しく頬を撫でる
真新しく歩きずらい革靴
着慣れないパキパキした制服
全てが祝福する音を立てる
ふとタンポポが目に入る
小さなモンシロチョウが止まる
スマホの待ち受けにしてみると
人に褒められる、えくぼが顔を出す
『おはよう!』タンポポに背中を押され
耳を赤くして前の席の子に言ってみる
『おはよう』頬を染めて返ってくる
外の風や木々が見守っていた
校舎を出れば雨も降らないのに
7色が空を染めている
全ての存在が彼等を祝っていた
届け、もっと届けと風が吹く
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