初めての蛍光灯交換作業
みなさん、おはようございます。
kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡
14時を過ぎた。僕は歯を食いしばってキーボードを叩く。パチパチパチ。だけど眠気が襲って来る。嗚呼…早退しようかな。早退してクリーンなマッサージに行こうかな………。
すると僕の目の間が急に暗くなったのです。僕は頭上を見ます。なんと、長細い蛍光灯が明滅しています。これは交換するサインです。
一番最初に声を出したのが本部長でした。
「若人くん、悪いけど蛍光灯をかえてくれるかな。新しいのは備品室に置いてあるからサ」
若人くんというのは、僕の記事で何回も登場している、あの『歯を食いしばって自転車通勤』をしている若人です。
「で、でも蛍光灯なんて変えたことないですョ」
事務所内に爆笑が起こった。ガチで言ってるの?
「その時はTAKAYUKIさんが助けてくれるサ」
どういうわけか僕まで巻き込まれてしまったのです。まあ僕の頭上の蛍光灯が交換対象なので致し方ないですネ。
若人が備品室から真っ新な蛍光灯を持ってきた。そして僕は言った。
「見上げてごらん。夜の星………ぢゃなくて、蛍光灯を。何本ある?」
「あッ…。すぐ持ってきます」
若人はもう一度備品室に向かった。そうです、蛍光灯は2本で1セットなのですワ。
備品室から戻ってきた若人。じっと僕を見つめてくる。これがいわゆる『指示待ち人間』なのかと思う。自ら行動してみようという意思が皆無で、指示が出るまで待ち続ける。それも無言で…。
僕は笑いそうになった。
「まずは、靴を脱いでデスクに上がろう」
「わ、わかりました」
若人は室内用のサンダルを脱ぎ、ゆっくりと僕のデスクの上に立った。ふらついている。デスクの高さは床からおよそ1m。たった1m景色が変わっただけでふらついてしまう若人。
君はいま波乗り中なのか? それともサップに挑戦中なのか?
「電気消しますョ」
僕は対象箇所の電気を切った。
「まずは古い蛍光灯を外そう」
「はいッ」
若人が蛍光灯に向かって両手を伸ばした。が、届かなかった。あと10センチ届かない。伸ばした両手の指先がぷるぷると震えている。事務所内に失笑が起こった。
僕は失念していた。そう、若人の身長は160センチにも満たないのだ。そら手だって足だって短いに決まっているし、何なら女子社員たちの方が遥かに大きいのだから。
若人は深呼吸をすると、再度トライした。が、あと10センチ届かない。両手の指先がぷるぷると震え続けている。事務所内の失笑が大きくなった。みんな自分の仕事を中断し、若人の展開を見守っている。平和な会社だ。
さすがに限界だと思った僕は、若人と交代しようと声をかけようとした、まさにその時だった。
「ああああッ………つった。攣った。ふくらはぎがつりましたぁ」
若人が僕のデスクに腰をおろした。若人の尻が僕のデスク型パソコンにぶつかった。事務所内に今日一番の大爆笑が起こった。苦しむ若人。ってか、19歳がちょっと背伸びをしただけでふくらはぎが攣るかネ? こむら返りが起こるかネ?
ヘタレ過ぎる若人を見た僕は、ちょっとだけイラっとした。
「足を伸ばしなさい!」
僕の声かけに対し、若人が両足を伸ばした。若人の顔が真っ赤だ。ここでも若人は歯を食いしばって攣ったふくらはぎと戦っている。そして僕は基本的なことを若人に聞いた。
「どっちの足が攣ったんだョ?」
「み、右ですぅ………うううぅっ………」
悶絶している若人。本部長から命令され初めての蛍光灯の交換に挑戦した若人。その結果、蛍光灯に触ることすらできず、ふくらはぎが攣って悶絶。茹で蛸のように顔を真っ赤にし、歯を食いしばって痛みに耐える若人。
彼の生きてきた過程が分かるような気がした。
僕は若人の右足を伸ばそうとした。が、なんと僕のスマートフォンが鳴ったのです。取引先からの電話です。若人を助けるのが先か、それとも取引先の電話が優先なのか。
もちろん、答えは後者です。
「烏賊村くん、若人を頼んだ」
僕はスマートフォンを持って廊下に出た。
10分後、事務所内に戻ると、僕の頭上の蛍光灯が眩しかった。胸をなでおろした僕は若人を見た。
若人は仏頂面でデスク型パソコンを睨んでいた。
若人ョ、何事も全て経験だ。今のうちに恥をかいておけば人生の後半、きっと神様が君に微笑んでくれるだろう。
【了】
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