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ストーンサークルの殺人 感想/考察


(ここから『ストーンサークルの殺人』を読んだことない方向けのコメント)

「王が死んだ。次いで王妃が死んだ」はストーリーだが、
「王が死んだ。そしてその悲しみのあまり王妃も死んだ」はプロットなのだ。

E・M・フォースター「小説の諸相」

 上記は創作論などにおいて、ストーリーとプロットの違いを説明する際によく引かれる文章です。
 昨今の新しめの脚本術の本なんかだと、必ずしもこれが正解とされている訳ではないみたいなんですけどね。でもわかりやすいし、私なんかからするとこの例文自体にミステリが隠されているような気がして、ちょっとワクワクしちゃったり。 

「王が死んだ。次いで王妃が死んだ。夫を失った悲しみのあまりの死だと周囲は尊んだが、残された王女は二人の死因に疑いを抱いた」 

 …まあ私の下手なプロットもどきはともかくとして(笑)

 今回取り上げる『ストーンサークルの殺人』は、フォースター流?にいうとこんな感じ↓のプロットになるかと思います。

 男(金持ち)が殺された。英国カンブリア州のストーンサークルで。
 また男(金持ち)が殺された。同じくストーンサークルで。
 またもや男(金持ち)が殺された。やっぱりストーンサークルで。

 三人の男たちには全くつながりが見つけられなかったが、マチルダ・ブラッドショーはこう言った。
「3.6%」
 これは彼女が計算した、カンブリア州において同じ社会グループに属する三人の男性が互いに面識がない確率だった。

 これってつまり、96.4%の確率で、この三人が知り合い同士だったということだよね?

 というわけで、この無関係に見えた被害者三人の結び付きをたどり、ストーンサークルでの処刑に異常に執着する連続殺人鬼「イモレーション・マン」の正体を探っていくのが、本作品の主人公、ワシントン・ポーなのでした。
 先ほど出てきたマチルダ(愛称ティリー)は彼の有能かつユニークな相棒です。いつもはひっつめの一つ結びにハリー・ポッター風の丸眼鏡をかけていて、Nerd(=オタク)power と書かれたTシャツをポーからもらって大喜びしちゃったりもする、まあ正真正銘のオタクなのですが、
パーティでは眼鏡取って派手なアメコミ柄のドレスを着こなし、すれちがう男性陣から「ヒュ〜」的な目線を送られたりもしてるから、実は結構可愛いんじゃんという、いかにもファンアートがはかどりそうな設定(誰か描いて欲しい)の女子なんですよね。
 変わり者のため同僚からいじめられたりもしてますが、ポーはそれを許さず相手を撃退。彼はティリーの初めての“友達”となりますが、この関係性が後々いい感じで効いてくるんだなー。
 読んでるこちら側としてもこの二人のバディっぷりが微笑ましく、今流行りの「(恋愛抜きの)男女の友情」が嫌味なく描かれています。このへん非常に今時のミステリと感じる。(イギリスでの刊行は2018年なんだけどさ)


 あとね、私この作品をまずは投資として読んだと白状しちゃいます。
 往年、近年共にミステリ小説って、一作目の人気が出ると二作、三作とシリーズ化されるのが常ですが、クリスティなんかの例外を除けば、最初のテンションをキープするのって結構難しいのね〜、という感想を抱いてしまう続作がやはり多い印象があります。
 しかしこのワシントン・ポーのシリーズは、どうやらその点で例外らしいのです。二作目の「ブラックサマーの殺人」、三作目の「キュレーターの殺人」の面白さが、一作目よりもずっとパワーアップしているらしい(ネットあちこち調べ)。
 まあそうはいっても、当然一作目があってこその次作ですので、ちゃんと一作目読んでキャラクターにも親しんだ上で、やおら二作目を読んだ方がいいに決まってる。
 という訳で二作目以降の下準備のつもりで読んでみたのですが。
 …うーん、そうか、これより次はもっと面白いのか〜、と生きる楽しみがひとつ(いやふたつか)増えました
 うん、未来への投資としてだけでなく、今を生きる自分へのご褒美にもちゃんとなりうる作品ですね。ストーリーとプロット、そしてキャラクターの三大要所が綺麗に決まっているのに加え、読後感がなかなか良いのです。
 この「読後感の良さ」も、ある意味かなりの訳ありだったりする。ぜひお読みになって確かめてみてください。


(ここからは『ストーンサークルの殺人』を読んだ方向けの好き勝手感想文)

 読んだ?
 犯人が判明してからも、いやはや読みどころ満載だったよね。
(それにしても、イギリスのストーンサークルがそんなにたくさんあるものだとは。これ読むまで全然知りませんでしたよ私。巻末の作者の謝辞によると、カンブリア州だけでもほんとに六十三箇所もあるんだそうな)

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