「秘書力」=「ビジネス力」という話―秘書未経験から“学長秘書”になった私が見つけた5つの力
「秘書」と聞くと一部の専門職の話に思えるかもしれません。
が、実は、
「秘書力」こそ、
すべてのビジネスパーソンにとって必要不可欠な “スキルの集合体”
だと、私は思うのです。
この記事では、秘書なんて自分には縁のない仕事だと思っていた私が、突然「学長秘書」となり、その経験を通して実感した上記のことについて、自分の体験をもとに、あらためて整理してみたいと思います。
そして、「秘書力」について知っていただくことで、秘書に興味のある方はもちろん、それ以外の多くのビジネスパーソンの方にも、日々の仕事に活かすヒントを得てもらえたらうれしいです。
秘書未経験からいきなり「学長秘書」!?
私は今、企業研修や個人向けのオンライン講座の講師をやりつつ、ビジネス書の執筆をしていますが、講師として起業する前は、国立大学に勤めていました。
(私の詳しいプロフィールはこちら↓です。)
国立大学では3年程度ごとに部署異動があり、私も、本部の総務部総務課、秘書室、学部、附属図書館、病院での勤務を経験しました。
その中で、私がはじめて “秘書らしき業務” を経験したのは、附属図書館の庶務係に在籍していたときです。
少し補足すると、大学は、学長・理事などの役員や事務局を含む「本部」と、学部・図書館・病院などの「部局」に分かれています。
そして本部には秘書室があり、役員には専任の秘書がつきますが、それぞれの部局では庶務係や総務係が、部局長の秘書的な役割も兼務することが多いんです。
私は、図書館の庶務係員として図書館長のサポートをするようになりました。館長へのお茶出しや来客応対、館長に関する問い合わせへの対応、書類の整理、原稿チェック、海外を含む出張先の機関との連絡調整など、本来の庶務係の業務に加えて対応しなければなりません。
初めてのことも多くて試行錯誤の連続。
しかも育児をしながらの勤務で、大変なこともたくさんありましたが、数年間、同じ館長に誠心誠意お仕えしました。
あくまで「庶務係員」としての限定的なサポートであって、ちゃんとした「秘書」ではなかったのですが、その数年間の姿勢を館長は見ていてくださったのだと思います。
その図書館長が大学の学長に就任されたのと同時に、なんと私は、本部の秘書室へ異動となったのです。図書館の庶務係員が、いきなり「学長秘書」になったわけです。
庶務係で秘書的な業務を多少やったとはいえ、本格的な「秘書」の経験なんてゼロ。
秘書室の前任者から引継ぎを受けても、会議のことや直近の個別のスケジュールの話ばかりで、「秘書とはこう動くべし」といった基本的な内容はまったくありませんでした。
右も左もわからず、ひっきりなしに電話が鳴る秘書室の中で「大学を代表する人の秘書として働く」という重圧に押しつぶされそうになっていました。
そのとき助けになったのが、少しでも参考になればという思いで購入した「秘書検定準1級のテキスト」。
(なぜ準1級を選んだかというと、準1級は「上級秘書」と書いてあったからです。「学長秘書」になるからには、2級では物足りないのではないか?せめて準1級くらいのレベルは必要だろうと思いました。)
そこには、秘書としての基本的な立ち居振る舞いから、応対マナー、実務のポイントまで……当たり前のようで誰も教えてくれない “支える仕事の基本” が、書かれていたのです。
私は、この一冊に本当に救われました。
この本を参考にしつつ、「秘書とは何か」「どう動くべきか」を考えるようになり、実務をこなす中で少しずつ身につけていった「力」があります。
それが、「秘書力」です。
そして、秘書業務に向き合いながら身につけたこの「秘書力」は、実はどんな職種・どんな立場の人にも必要な汎用スキルだと感じるようになりました。
ここでは、私が考える「秘書力」を、5つの力として整理してご紹介しようと思います。
🔹秘書力①:先読み・段取り・判断力
流れを先読みし、必要な準備や優先順位をつけて動く力
秘書の仕事では、「言われてから動く」では間に合わないことが多いです。
仕事を指示されたときは、その内容だけでなく、そこから派生する事柄を察知して準備する姿勢が求められます。
つまり、「何が起こり得るか」「何が求められるか」を予測し、一歩先を読んで動くのです。
来客の際に応接室の温度や座席の配置に気を配る、上司が説明しやすいように資料を用意しておく──
こういった準備は、基本的な当たり前のこと、ですよね。
秘書としては、さらにこう考えます。
「先方は最近〇〇された会社だから、こんな話題が出るかもしれない」
「その話が発展して、△△の資料が必要になるかもしれない」
→ だから、あらかじめ△△関連の資料も手元に準備しておこう。
このような “かもしれない運転” を日常的にしておくことが、上司や来客からの信頼につながっていくのです。
もちろん、先読みというのはどの部署でも必要なことではあります。が、秘書の場合、主役は上司です。上司に恥をかかせられない・困らせてはいけない、ということで、この部分を一層強化させなければなりません。
秘書仲間とはよく、「秘書室にいると、過剰な “かもしれない運転 症候群” になるよね」と冗談まじりに話していました。
もちろん、こうした準備を支えるのが、「何を・いつ・どうやるか」「どこまで備えるか」を見極める段取り力・判断力です。
上司の予定、関係者の意向、緊急度や全体の流れを読み取って、優先順位を整理し、段取りを整える力。
これは秘書に限らず、あらゆる仕事に通じる基本のビジネススキルだと感じています。
🔹秘書力②:観察・配慮力
相手の様子や場の空気を察知し、自然に配慮できる力
「秘書さんって、よく気が利くよね」
と言われることがあります。
でもそれは、たまたまそう見えるのではなく、意識して相手の表情や動きを観察し、相手が望むことなどを推測して対応している結果なのです。
たとえば……
上司の表情がいつもより硬いときに、あえて会話を控える
上司の視線や手の動きから、追加のお茶を出す
参加者の少し寒そうな様子から、エアコンの温度を上げる
メモをしようと何か探している方に、そっとボールペンやメモ用紙を差し出す
例を挙げればキリがありませんし、一つひとつは小さなことに見えますが、こうした気づきと配慮が、その場の雰囲気をやわらげたり、スムーズな進行を助けたりします。
そして、この積み重ねが、
「この人と仕事したい」
「何かあってもこの人が気づいてくれる」
と、相手からの信頼を得る要素にもなっていくのです。
この力は、接客、会議運営、営業、社内調整など──
人と関わるすべてのビジネス場面で生きる力だと私は実感しています。
🔹秘書力③:情報収集・整理・資料作成力
上司が必要とする情報を収集・整理し、わかりやすい形に整えて伝える力
業務に関連する情報の収集、受け取った文書の要点整理、議事メモ、資料のとりまとめ ──
日々入手する情報を「誰が読んでもわかる形に整える」力は、秘書にとって欠かせないスキルです。
たとえば……
膨大な資料の中から、上司に必要な情報をピックアップして整理し、インデックスやマーカーをつけて渡す
上司宛に届いたイベント案内に、対応案を添えたメモをつける(例:この日は〇〇の予定があるので、〇〇先生に代理出席をお願いしてはいかがでしょうか?」など)
複雑な資料内容を読み解き、1枚モノの概要資料を作成する
上司の意向に沿った挨拶文やプレゼン資料を作成する
必要な情報を伝えるために、わかりやすくて読みやすいビジネスメールを書く
こうした整理や工夫を加えることで、上司の判断や行動が格段にスムーズになります。
まさに “支える力” の真骨頂ではないでしょうか。
そのためには、効率的な情報収集力だけでなく、文章読解力、要約力、適切な文書表現力、資料構成力などの複合的なスキルが必要になります。
そして、普段から上司の考えや思い、重視する軸などの理解に努め、それらを表現内容に反映させることも大切です。
もちろんこれらの力も、秘書だけでなく、営業・企画・人事・管理部門など、あらゆるビジネス職種で不可欠なスキルであることは説明の必要はないでしょう。
🔹秘書力④:伝達・調整・コミュニケーション力
情報を適切に伝え、人や予定をうまくつなぐ力
秘書の仕事では、情報を正確に伝えたり、人や予定をつなげたりする役割が欠かせません。
たとえば、
・上司の言葉を関係部署へ正しく伝える
・来客や関係者の希望や要望を調整する
・複数の役員や部署とのスケジュールを調整する
といった場面では、単なる“伝言役”ではなく、全体の状況や意図をくみ取って調整する“通訳者”のような役割が求められます。
こうした対応をうまくこなすには、上司や関係者の要望をきちんと聞き取り、状況を把握したうえで、最適な調整を行う力が求められます。
様々な事情や情報、関係者の思惑などを入手したうえで、状況によっては「あえて、伝えない」ということが信頼につながる場面もあります。
情報の選別・整理・タイミング・伝え方を見極める力は、まさに高度なコミュニケーションスキルです。
「調整役」はどんな職場でも必要な存在ですよね。
このスキルは、社内外の連携、プロジェクトの進行、顧客対応まで、幅広いビジネスシーンで活かせる“人と人をつなぐ力”なのです。
🔹秘書力⑤:印象・信頼形成力
丁寧なふるまいや言葉遣いで信頼感を与える力
秘書は、組織の “顔” になる場面が多くあります。
そのため、姿勢、話し方、表情、立ち居振る舞い、身だしなみのすべてが、上司や組織の印象に直結します。
たとえば、話しかけられた時の表情、話を聞くときの姿勢、適切な言葉遣い・敬語、名刺を頂くときの所作、電話応対の仕方、お辞儀の角度、お茶の出し方 など。
どれも細かいことではありますが、それらが無意識のうちに“この人は信頼できる”という印象をつくる要素なのです。
表情や所作に表れる “感じのよさ” や “誠実さ” こそ、信頼の源です。
これは職種を問わず、すべての人が備えておくのが望ましいビジネスマナーの根幹だと思います。
「見た目に気を遣う」と言うと、表面的な話のように思われがちですが、清潔感のある身だしなみや感じのよいふるまいは、相手に安心してもらうための配慮でもあるのです。
まとめ:秘書力は、どんな仕事にも活きる力
ここまでご紹介してきた5つの「秘書力」は、決して特別なスキルではありません。
どれも、日々の仕事の中で少しずつ身につけ、磨かれていくものばかりです。
私自身、秘書経験ゼロの状態から学長秘書に就き、それまでに培ったスキルや経験も振り返りつつ、戸惑いながらも秘書実務と向き合いました。
そうする中で、「こういう力が求められるのか」「ここを支えれば仕事がうまく回るんだ」という気付きを得ていったのです。
振り返ってみれば、秘書として学んだ力は、そのまま講師としての仕事にも、執筆にも、そして日常のコミュニケーションにも活かされています。
「秘書力」は、すべてのビジネスパーソンにとっての“土台力”でもある
と、私は思っています。
この記事が、みなさんの日々の仕事を振り返るきっかけになればうれしいです。
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