見出し画像

家事代行でひと山あてたい

「家事代行でひと山あてたい」
最近仕事を辞めた友人は、前触れもなくそう口にした。

足元が少しペタつく居酒屋でレモンサワーを片手に、大きいのか小さいのか分からない夢を語る友人の目は数ヶ月前に会った時よりもいくらか元気が戻っていた。

思えば「ひと山あてる」なんて言葉を、これまでの人生で誰かの口から聞いたことがあっただろうか。いったい家事代行であたる山とはなんだ。

「共働きの時代やから、一定の需要はあると思うねん。でも既に大手がおるから、やっぱり差別化がいると思う。」

なんか思ったより真面目に考えてるな。

仕事を辞める前の友人は将来の展望を語る余裕など持っていなかった。会社員時代、朝から終電まで、さらには休日も働きに出なければいけないような環境にいた友人は、その当時は待ち合わせ中に私が来るか不安で泣きそうになるほど精神的に参ってしまっていた。

それを考えると、内容はともかくとして新たな夢を持てるようになったというのは喜ばしい限りである。

「ひと山当てるのは良いとして、なんで家事代行なん?」
「だって、誰も狙ってない山やろ?」
あるかどうかも怪しいからな。その山。

「1回きりの人生やし、どうせならひと山あてたいよなぁ」
そう言う友人の目には少なくとも、嘘はないように見えた。
何かを成す人間というのはこういう突拍子もない人間なのかもしれない。

帰路の途中、友人とのLINEに「ひと山当てるぞー!👊」という共有アルバムが追加されたという通知が来ていた。

いいなと思ったら応援しよう!