【Fitbit Airレビュー】筋肉の研究者・トレーニー視点で語る
ここ数年、ウォッチ型・リング型など様々なウェアラブルデバイスが登場して群雄割拠状態です。
僕も過去にはウォッチ型やリング型のデバイスを購入し使用していましたが、どちらも僕の用途的には不便で(理由は後述)使わなくなっていまいました。
そんな中、近年アメリカを中心に話題だったのがWHOOPというスクリーンレスタイプ・バンド型のトラッカー。クリスティアーノ・ロナウドが広告塔になっていたり、査読論文もまあまあ出てたり、ずっと気になっていました。ただWHOOPは完全なサブスクモデルで月額約3,000円~と高額でそこまでのメリットを感じられずに二の足を踏んでいました。
トレーニーにとってバンド型が至高な理由
消去法的な考えになってしまうのですが、トレーニーにとってトレーニング中もつけっぱなしにしたいのであればウォッチ型やリング型はおすすめしません。
ウォッチ型のデメリット
・ベンチプレスなど手首を背屈(反らせる)種目で干渉する。
・グローブ類と併用ができない
・睡眠時につけ心地が気になる
・バッテリー持ちが短い
・私生活では普通の時計をつけたい
リング型のデメリット
・バーベルやバーを握るときに干渉するので、トレーニング中はそもそもつけられない
・装着時のガジェット感が個人的に好みじゃない
リング型は一番筐体が小さいのですが、握ることに対して干渉するというトレーニーにとっては一番痛い存在。
ちなみに血中酸素測定などは毛細血管が多い指での測定が精度が高いので、測定値自体はリング型が安定すると思います。
コロナの時によく測定したパルスオキシメーターもその理由で指先で図りますね。
リング型ではOura Ringが有名ですが、先日従来品よりも小型化した新製品が発表されていました。トレーニーではない人にはおすすめです。
Fitbit Airが最強
ここまでをまとめるとトレーニーにとってはバンド型しか事実上選択肢はないのですが、現状で信頼性が高そうな製品(WHOOP)は高額なサブスクモデルで導入ハードルが高い、というのがつい先日までの状況。
そこで登場したのが、Google傘下のFitbitのバンド型モデル。
Googleがヘルスケアに本腰入れてきましたね。
— 伊田暁人 IDA Akito, PhD (@akito_ida) May 7, 2026
ハードでFitbitがありソフトではGeminiがある GoogleがAppleのヘルスケア牙城を崩していけるか注目です https://t.co/r5xVpy9I58
Fitbit Airのスペック
価格・サブスクリプション
価格 16,800円(税込)
データ管理 無料
→月額を払い続けないとデータが見られないWHOOPやOura Ringとの決定的な違い
※AIコーチング機能として任意のサブスク(Google Health Premium/月1,580円)があります。なくても問題なく使えますし、価格的にもWHOOPの約半額。
本体
重量 5.2g
厚さ 8.3mm
電池 最大7日。5分の充電で約1日分持つとのこと。
測定項目
・心拍/心拍変動/血中酸素/皮膚温
・心拍リズムの異常(心房細動)の通知
・歩数/活動量
→運動は基本的なものだと自動検出で記録してくれます。
・睡眠(深さと時間)
価格も比較的に抑えられていて、ハード面で測定できるものも現状ウェアラブルで測定できるものとしてはほぼすべて入っているという印象です。
なによりもfitbitは精度・信頼性を示す査読論文も多数あるということが購入・使用において個人的に重要視したポイントです。
AI時代のウェアラブルは信頼性が命である理由
なぜ僕が査読論文を重視するか。それはウェアラブルが出す数値は、心拍を脈拍から、歩数を加速度の変化から"推定"したものに過ぎず、真の心拍・歩数・消費カロリーを直接測ってはいないからです。
推定である以上、必ず誤差があります。問題は、その誤差がどのくらいの大きさで、自分の用途で許容できるのか。それを示す検証データ(真の値と比較した論文)がないと、ウェアラブルの数字をどう扱えばいいか判断できません。妥当性が示されていない数値は、額面どおりには受け取れないということです。
特に昨今はAIの進化でデータっぽいものがあれば、かなりの精度でデータの解釈やアドバイスをしてくれるようになりました。 逆に言えばどんなに賢いAIでもいい加減なデータからは誤った傾向やアドバイスが導かれることになります。データはAIが解釈してくれるからこそ、そのデータの質が重要になるという時代になっていると思います。
使用感レビュー
装着感について
まず、軽い。バンドを除けば5gちょっとで、つけていることを忘れます。 睡眠中もトレーニング中も違和感がないです。
それを想定して購入したのですが、購入後にイメージと変わることもなかったです。

睡眠データについて
睡眠の測定値は、体感とはかなり近いです。

Fitbitを扱った論文の結果では、ポリグラフ(PSG)での測定との比較(
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29235907/
)で、総睡眠時間をやや過大評価(平均で9分)したり、寝付き(入眠潜時)をやや過小評価するようです。
特に起床時間については測定的に苦手な領域なようですが、この日は6時にアラームをかけて起床したのでここは間違いなさそうです。
布団の中でだらだらしてしまう日などは、それを起床と感知しない可能性があるのでそのあたりは頭に入れておいたほうが良さそうです。
アクティビティログについて
職場(代々木上原のジムおよび東京大学)への移動は自転車なのですが、自動で検出・記録されます。
一方で筋トレは自動では検出されません。トレーニー向けなのでここはどうにかしてほしいところですが、筋トレは動作的にゆっくりで心拍数も対して上がらないので、加速度や心拍数から検出するアルゴリズム的に難しそうです。
筋トレログは音声入力が最強
筋トレのログをどうしようかと考えていた時に役に立つのがAIアシスタント。
AIアシスタントにトレーニング内容を伝えるとそれらをまとめくれて記録までしてくれます。
僕は試行錯誤の結果、セットが終わるたびに種目・重量・回数・RPE(どれくらいキツかったかを10段階で)を音声でAIに伝える形にしました。

筋トレのログでは重量と回数だけではなく、どれくらい追い込めたかを記録することが大事なので音声で記録する際は同じ用に記録することをおすすめします(研究者視点)。
この3つの指標があれば、その時の自分の最大筋力が予測できます。例えばスクワットを同じ回数(100kgで5回など)やっていたとしても、RPEが低ければ筋力が高くなっている可能性があります。
これらの情報からAIに適切な負荷を調整してもらうように設計も可能です。
反対に同じことをしていてもRPEが高いと、疲労が高くなっていてトレーニングボリュームを減らす必要があるかもしれません。RPEを記録するだけで10段階くらい解像度が高いデータになります。
また、RPEの情報があることである程度トレーニング効果の予測もできます。
添付のデータからはこの日のスクワットの最大重量が125kgくらいと予測できますし、限界を10とした時に8くらいの追い込みだと筋肉を増やす強度としても十分であることがわかります(
https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-024-02069-2)。
もちろん時計と併用できる
僕は右腕にFitbit Air、左腕に時計をつけています。
同じ腕に2本つけることも可能だと思います。
時計と併用できるのは地味やけど嬉しいね https://t.co/b27HUChZLM pic.twitter.com/kaHWOyjGdJ
— 伊田暁人 IDA Akito, PhD (@akito_ida) May 31, 2026
時計とFitbit Airを悪魔合体させる猛者もいる模様。
Go ahead, turn your Fitbit Air into a watch.https://t.co/fEzioBLuVd pic.twitter.com/MIu0OCqnKW
— Droid Life (@droid_life) June 4, 2026
不満点
総じて不満はほぼなく自分の理想にかなり近いデバイスです。強いて挙げるなら、標準バンドがファブリック素材なこと。汗をかいたらすぐ臭くなるのが目に見えてます。追記:シリコンバンドを購入しましたが装着感が悪く、Fitbit Airの良さが半減しました。個人的には標準バンドがおすすめです。定期的に買い替えて使おうと思います。
数日間シリコンバンド試したけどfitbit airの良さが半減。
— 伊田暁人 IDA Akito, PhD (@akito_ida) June 1, 2026
重量はそこまで重くないはずですが、装着感はAppleWatchを付けている感じと大差ない感じ。
皮膚に張り付くので手首背屈する際に動きに干渉する。
airの体験としてはファブリックが圧倒的に良いので、よく考えられてるなと思った https://t.co/wLsYx28WPt pic.twitter.com/NIKMkupg0k
足首でも測定できる?
足首につけてたデータが取れたという声もSNSなどでちらほら見ますが、結論おすすめしません。理由は、数値の妥当性がないことです。
先に書いた通り、ウェアラブルが出す数値は、本当に知りたい"真の値"そのものではありません。そのため、数値の妥当性がなければそのデータは意味のないものになります。
例えば脈波からは心拍数や心拍変動が分かりますが、これは皮膚の下を流れる血液の拍動に光を当てて、その変化を読み取っているだけです。拍動の信号は、心臓から末梢に伝わるほど弱くなり、体の動きによるノイズも乗りやすいです。つまり心臓から遠い部位ほど、真の値とのズレは大きくなるので、足首での測定は難しくなります。
特に心拍変動は誤差に敏感です。
心拍変動…心拍の 1 拍ごとの拍動の長さの変化のこと。

安静時は副交感神経(の一種である心臓迷走神経)が心臓のリズムを細かく調整していて、副交感神経がしっかり働くほど変動は大きくなります。
そのため、心拍変動が大きい=副交感神経がよく働いている=ストレス耐性が高い、と考えられています。
心拍変動は心電図から導出するのがゴールドスタンダードです。ウェアラブルにより脈波から算出する心拍変動は誤差が大きなります。
姿勢が安定している睡眠時などは比較的にノイズも少なくなり、手首で測定した場合誤差も許容できそうというレベルにはなっているので、睡眠時のデータがFitbitでも利用できるようになっています。
足首での測定をおすすめしない理由まとめ
①測定値に対する妥当性がない
②測定の原理的に足首の数値は精度が低くなる
③心拍変動は特に誤差が大きくなる
僕は研究者ということもあって、こういうイレギュラーな使い方はしません。とはいえ「ほどほどのデータで十分」という使い方を否定するつもりもないです。
ただその場合は、(そもそも信頼できるデータではないので精度の高いものでなくても)もっと安いものでいいんじゃない?と思うのです。
ちなみに…
心電図から心拍変動や心拍を測定したい場合、現在一般に利用可能なのは
PolarのH10くらいしかないと思います。
まとめ
・トレーニーにはバンド型がおすすめ
・Fitbit Airは買い切りで導入できる
・精度・妥当性が報告されている(Fitbit全般)
・測定項目がかなり充実している
・足首につけるのはおすすめしない
もちろん万能ではないです。睡眠や心拍変動のように、原理的に精度が出にくい指標もあります。でも"どの数字がどれくらい正確か"さえ押さえておけば、弱点を込みで十分に使い倒せます。
むしろデータをAIに解釈させる時代だからこそ、誤差まで分かっているならそれは大した問題にはならないとも言えます。
最終的には、こうしたログをまとめてAIに一括管理させる未来を想定しているのですが、その入り口としても今いちばん現実的な一台だと思います。
