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ホルムズ海峡封鎖:イギリスのMaritime 2050戦略をする好機ととらえているイギリス

こんにちは。時事問題研究中のKinnyです。

やっとイギリスが高みの見物をしているわけが分かった。

最新の海事インテリジェンス(Lloyd's List, Windward等)および報道に基づく、被害・足止め船舶の状況を整理しました。


攻撃・拿捕が確認された主な船舶(2026年3月)

3月1日から17日までに、国連は17件の商船被害を確認しています。以下は具体名が報じられた主なリストです。

Mayuree Naree
バラ積み船3月11日タイ船籍。ミサイル/ドローン攻撃により炎上。
Safesea Vishnu
不明3月11日イラン当局が攻撃を主張。
One Majesty
コンテナ船3月11日日本(ONE)運航船
。攻撃を受けるも航行継続か。
Star Gwyneth
バラ積み船3月11日マーシャル諸島船籍。攻撃の報告あり。
Skylight
化学品タンカー3月7日オマーン沖でドローン攻撃。乗組員4名負傷。
MKD Vyom
不明3月11日喫水線上に着弾、火災発生(後に鎮火)。
Safeen Prestige
不明3月11日前後被害写真がネット上に流出、攻撃が裏付けられる。
Prima
(旧 Stephanie)化学品タンカー3月7日イランのドローン攻撃を受けたとの報告。


海域内での足止め・待機状況

3月3日時点のデータでは、約200隻の非制裁対象タンカーがペルシャ湾内に閉じ込められていると報告されています。

船種別の内訳

  • VLCC(大型原油タンカー): 約60隻(世界全体の約8%に相当)。うち13隻が積み込みターミナルに接岸中、33隻が錨泊(アンカー)待機。

  • スエズマックス: 23隻。

  • 中型タンカー (MR/LR1): 約86隻(最大勢力)。

影響を受けている主な船主

  • Sinokor(韓国): VLCCの露出が最も多いと指摘。

  • 商船三井(日本): 海域内に5隻のVLCCを保有(3月上旬時点)。

  • BAHRI(サウジアラビア): 5隻が待機。


通航の例外(イランによる「選別」)

封鎖下でも、イランの承認(または通行料の支払い)を得て航行した例が報告されています。

  • パキスタン・トルコ関連船: 3月13日に特殊な状況下で通航が確認。

  • 中国関連船: 一部のLPG船やコンテナ船(Newvoyager等)が通行料を支払い通過。

  • マレーシア船: イランとの協議により、3月下旬に航行許可が出されたとの報道(3月27日)。

  • インド船: 特定の医薬品供給等との引き換えに、拿捕されていた3隻の開放と安全航行をイランが要求中。

現地の状況

GPSスプーフィング(位置情報の偽装)やジャミングが頻発しており、レーダーや目視に頼る危険な航行を強いられています。また、海域内には「Maham 3」および「Maham 7」といった吸着水雷が敷設されているとの情報もあり、極めて緊迫した状態が続いています。

今後の各国の護衛艦派遣状況や、トランプ米大統領による最後通告(発電所攻撃の示唆)の行方により、リストはさらに変動する可能性があります。

足止め・待機中の船舶(約59隻)

日本船主協会などの報告によると、現在ペルシャ湾内で待機を余儀なくされている日本関係の船舶は、約59隻にのぼります。これらの内訳は以下の通りです。

日本船籍:
日本の海運大手(日本郵船、商船三井、川崎汽船)が保有する一部のVLCC(大型原油タンカー)やコンテナ船が含まれます。

外国船籍(便宜置籍船):
パナマ、リベリア、マーシャル諸島などの船籍。
日本の船会社が実質的に所有・運航していても、コストや税制上の理由で海外に籍を置いている船が多数派です。

テヘラン・ルート(Tehran Toll Booth)の実態

イラン当局(主に革命防衛隊:IRGC)が管理するこのルートは、イラン領海内のララク島付近を通過する特定の「安全廊下」を指します。

1. 「通行料」の相場と支払い方法

  • 金額: 1航海あたり最大200万ドル(約3億円)

  • 通貨: 制裁回避のため、米ドルではなく**人民元(CNY)**での支払いが要求されているケースが報告されています。

  • 仕組み: 事前に船舶の詳細書類を提出し、IRGCから「クリアランスコード」と「航路指示」を受け取る必要があります。

2. 利用している国々

現在、イラン側から「非敵対的」とみなされ、このルートでの通航を個別に交渉・許可されているのは以下の国々に関連する船が中心です。

  • 中国、インド、パキスタン、トルコ、マレーシア、イラク

  • また、実利を優先したギリシャ籍の船主なども利用が確認されています。

3億円が「安い」と言える3つの裏付け

1. 異常高騰している「待機コスト(日極傭船料)」

現在(2026年3月)、VLCC(大型原油タンカー)の日建て傭船料(チャーター料)は、スポット市況で1日あたり40万ドル〜50万ドル(約6,000万〜7,500万円)にまで跳ね上がっています。

  • 5日間待機するだけで3億円が吹き飛びます。

  • 封鎖宣言からすでに20日以上足止めされている船の場合、待機費用だけで12億円以上の損失。

  • これに比べれば、一括200万ドル(3億円)で即座に脱出できるのは、経営判断としては「即決」レベルの安さです。

ロイズの「戦争保険料」との比較

先ほど触れたロイズ等の保険料は、船体価格の3〜5%に達しています。

  • 100億円の船なら1航海で3〜5億円

  • しかも、この保険料を払っても「攻撃されない保証」はありません。

  • 一方、テヘラン・ルートの3億円は「イラン軍から攻撃されない(むしろエスコートされる)通行許可証」代わりです。保険料より安く、かつ物理的な安全が(イラン側からは)担保されるため、実利は圧倒的です。

3. 「デマレッジ(滞船料)」の地獄

荷主(石油会社など)との契約にもよりますが、荷揚げが遅れることで発生するデマレッジも莫大です。さらに、製油所の稼働停止などの二次被害まで考慮すると、3億円程度の出費は「誤差」の範囲で処理されるような巨額の損失が背後に控えています。


結局、誰が「損」をしているのか?

この「3億円」を安いと踏んで支払えるのは、以下の条件を備えたプレイヤーです。

  • 制裁を恐れない: 米国の金融網を通さず、人民元や物資交換で決済できる。

  • 政治的パイプがある: 中国やインドのように、イランとの外交カードを持っている。

逆に、日本の船主のように「コンプライアンス」や「ロイズの評価」を気にしなければならない立場からすると、目の前に「3億円の脱出口」があっても、法的なリスク(セカンダリーサンクション等)が怖くて手が出せない……という、なんとも歯がゆい状況にあります。

「3億円で解決するなら安いものだ」という現場の悲鳴を無視して、国際政治の理屈が通航を阻んでいるのが、今の海峡の歪な姿ですね。

英国の「Maritime 2050」戦略

英国のこの長期戦略(2019年発表、2026年現在も継続中)の裏には、単なる「産業振興」を超えた、「海事の覇権の再定義」**という意図が透けて見えます。今回のホルムズ海峡での「リベリア船籍やパナマ船籍が狙われ、ロイズがハシゴを外す」というカオスな状況は、英国にとっては自国に有利なルールへ書き換えるための「格好の口実」になり得ます。

ご指摘の「他国籍船の排除(あるいは選別)」という観点から、戦略の意図を読み解くと以下のようになります。


1. 「質の低い船籍(影の艦隊)」の排除

Maritime 2050の大きな柱の一つは、**「海上の安全とセキュリティのグローバルリーダー」**であり続けることです。
現在、ホルムズ海峡を「テヘラン・ルート」や「位置偽装」で強行突破している船の多くは、規制の緩い船籍を利用した、いわゆる「影の艦隊(Shadow Fleet)」です。英国は、これらの船を「環境汚染や安全上のリスク」として国際社会からパージ(排除)しようとしています。

  • 狙い: 「言うことを聞かない便宜置籍船」を市場から追い出し、英国の厳しい基準(ClassNKやロイズが管理する世界)に従う船だけを優遇する構造を作ること。

2. 「ロイズのルール」への回帰

「ロイズが降りている」というのは、短期的には無責任に見えますが、長期的には**「ロイズの認証がない船は、まともな港に入港させない」**という世界標準を強化するための布石とも取れます。

  • Maritime 2050では「デジタル化」や「自律航行」が推進されています。

  • 将来的には、「英国のデジタル認証を受けた船だけが、安全な保険と航行ルートを保証される」という排他的なプラットフォームを作ろうとしている節があります。

3. 日本や同盟国への「踏み絵」

「リベリア籍のようなベテランでも守れないなら、もっと強固な『ホワイトリスト』に入るべきだ」という圧力が強まっています。

  • 日本も「Maritime 2050」に呼応する形で、次世代燃料(アンモニア等)やデジタル認証のルール作りで英国と連携しています。

  • これは、中東の不安定な情勢を利用して、「イランと裏取引する船(中国系など)」と「西側の新ルールに従う船」を明確に色分けし、他国(非同盟国)のタンカーの競争力を削ごうとする動きとも合致します。


結論:戦略としての「放置」

今のホルムズ海峡の混乱を、英国(およびロイズ)が積極的に解決しようとしないのは、**「古い海上のルール(便宜置籍船が幅を利かせる世界)が壊れるのを待っている」**からだという見方もできます。

「3億円払えば通れる」というテヘラン・ルートを「野蛮な取引」としてレッテル貼りし、最終的には英国主導の「クリーンで安全な(しかし高コストな)新秩序」へ世界を引きずり込もうとしている……。

そう考えると、ロイズの「冷淡さ」も戦略的な計算に基づいたものに見えてきます。

https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5e85bb4786650c7443ab61c5/maritime-2050-exec-summary-document.pdf

まさに「海を制する者が世界を制する」という英国の伝統的なDNAが、2050年に向けて形を変えて現れているのかもしれません。


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