「羊羹越しのマーケティング―思い込みを超える物語」
こんにちは!
今回は、コグニティブ・バイアス低減について、うさぎ先生とユキちゃんと考えていきましょう!
●今回のテーマ
コグニティブ・バイアス低減 (Cognitive Bias Reduction)
自分の思い込みや偏見に気づき、より客観的な思考を心がけます。
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コグニティブ・バイアスの扉を開く
その日の夕方、いつもより少し残業をしてからマンションへ帰り着いたユキは、玄関ドアを開けた途端、妙な光景を目にした。
薄暗い部屋の片隅、リビングテーブルの上には一本の羊羹。そして、それをじっと見つめている小さなうさぎが一匹……いや、このうさぎは「先生」なのだ。柔らかい白い毛並みの、その姿をした存在は、元々は有名大学でマーケティングと心理学を教えていた伝説の教授であり、闇の組織によりウサギ姿に変えられた存在。今はユキが面倒を見る形で、ワンルームマンションで奇妙な同居生活を送っている。

「先生、ただいま戻りました」ユキはカバンを置きながら声を掛ける。
「おかえり、ユキちゃん」うさぎ先生は、長い耳をぴくりと動かしながら振り向く。その視線は相変わらず羊羹に向いたままだ。「実は、この羊羹を見ていて考えていたんだよ。人は同じ物を見ても、先入観によって感じ方が変わってしまう。ユキちゃんは、なぜ同じものを見ても人それぞれ感じ方が違うと思う?」
「え、感じ方ですか?」ユキは疲れた身体をソファに沈める。まだ社会人2年目で、仕事の流れがようやく見え始めたくらい。販促担当として、中小企業の商品を世に広める役割を期待されているが、なかなか上手くいかない。上司やクライアントは、伝統を重視して新しい提案を受け入れようとせず、ユキ自身も「相手が正しいのかも」と思い込んでしまい、新しい施策を信じられなくなっている。
「なんだか先生、難しいこと考えてますね。みんなが同じ価値観なら簡単なんでしょうけど、違うからこそ悩みがあるんですよね」
「ふむ。世の中には『コグニティブ・バイアス』という現象があってね。人は誰でも、自分でも気づかない先入観や思い込みに囚われてしまうんだ」
「コグニティブ…バイアス?」ユキは首をかしげる。
「例えば、今の職場での状況を考えてみなさい。クライアントや上司が『伝統を守るべき』という固定観念に囚われ、変化を拒む。ユキちゃん自身も、『彼らの考えが正しいかもしれない』と無意識に思い込んで提案を引っ込めていないかい?」
「うっ…言われてみれば、そうかもしれないです…確かに私、反論する前に相手を正しいと信じて、挑戦する勇気を失ってました」
ユキは肩を落とす。いつも社内会議では、「この販促案は今までやったことがないからリスクがある」「伝統顧客は新しい提案を嫌う」と言われれば、ユキはすぐに引き下がってしまう。
「君が行き詰まっているのは、発想が悪いわけではなく、思い込みやバイアスに阻まれているからなんだ。マーケティングと心理学を研究していた私としては、これは絶好の研究素材と言えるけれど、君にとっては辛い状況だろう」
「はい、正直辛いです…。もう少し自分の提案を信じたいんですけど、実績も浅いし、『伝統』に説得力を感じてしまって…。どうしたら変えられるんでしょう?」
ユキが弱音を吐くと、うさぎ先生は胡座をかくように毛を整え、フワフワとした白い体で彼女を見上げる。その表情は優しい。
「まずはバイアスの存在に気づくことからだよ。気づけば、対策が立てられる。そして実際に、自分の思い込みを揺さぶる実験をしてみようじゃないか」
「実験、ですか?」
「そう、まずは甘いと思い込んでいるものが、実はそうでないとしたらどう感じるか。君が大好きな甘い和菓子の羊羹で一度試してみよう」
「え、先生、まさかその羊羹…?」
「そうだよ、この羊羹で試そう。ユキちゃんは疲れているだろうから、今日のところはゆっくり休んで。明日の朝、早めに起きてちょっとした実験をしてみよう」
ユキは少し不安ながらも、「はい」と頷く。自分の思い込みを崩す――想像するだけで落ち着かないが、先生が提案する以上、きっと意味があるはずだ。

夜、ユキは布団に潜り込みながら、窓の外の微かな街灯を眺める。暖かい灯りが滲むように浮かび上がるマンションの一室。ウサギ姿の恩師と過ごす不思議な日常。緊張しつつも、どこか懐かしいような、不思議な安心感が胸に広がっていた。
(明日はうまくできるかな……コグニティブ・バイアスなんて、今まで考えたことなかったけど、先生がいるから大丈夫だよね)
そう思いながら、ユキは静かに目を閉じた。
コグニティブ・バイアスの体験
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